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黒鹿毛と人間ラナの恋物語〜宇宙の星の物語〜

虹の向こうにペガサスで飛んでいくと、牛がたくさんいる草原が見えた。馬もたくさん走っている。ペガサスもたくさんいる。たくさんの群れが、七色の水玉のつゆが光る月草を食べている。

牧草地の動物たちの大きさは様々だ。例えば、5mは超える巨大な牛もいるが、手のひらに載りそうな小型の牛もいる。ここは牧場だが、ここに住む動物たちは、好きな大きさに自分で決めることができるのだ。

馬たちは好きな方向に走っている。2頭でジャレあう馬たちもいれば、果敢にもペガサスと競争して、飛ぼうとして本当に飛んでしまった馬は、羽が生えてペガサスになった。ペガサスの牝馬が馬に恋をした時には、その牝馬は羽をしまって馬になった。そして草地で楽しく2頭ではみ合うのだった。

動物たちは、ただ好きなことをして、好きなだけ月草を食べる。月草がここの牧場の特徴で、ここの草を食べることで、牧場にいる動物たちは、自分の好みの形、種類、そして、仕事という遊びを行うことができるのだ。つまり労働という概念はない。好きなことをして、好きなものになって、それが叶う牧場だ。

時々人間もやってくる。
人間は、月草を食べないから、好きなものになることができない。
だけどここにいる牧場の動物たちと触れ合うだけで、何かとても大事なものを思い出して帰るみたいだった。

ある時、一人の人間が来て、ある馬に恋をした。その馬の毛艶はまるでビロードのような手触りで、駆けると、一際黒いたてがみが風になびいて光を放って小さな星となり、それが牧場中に降り注いだ。そんな様子だったから、牧場中の動物たちもこの馬には一目を置いていた。この馬の心を射止めようとたくさんの動物たちが、オスメス問わず、また種を超えて、親しくなろうと寄ってきていたが、この黒鹿毛は見向きもせずに、軽やかに走っていくのだった。

その人間はラナという。ラナも通常の人間たちがするように、牧場を見物して、虹色の輝く月草の上でピクニックをして、そして帰っていく予定だった。だけど、何かもの足りない感じがしていて、もうしばらくここにいようと思っていた時だった。そこに黒鹿毛が駆けて行ったのだ。ラナの視線は、黒鹿毛に釘付けになった。黒鹿毛の存在が、足りないピースがピタッとそこにはまるようにラナの心を瞬時に満たしたのだ。

黒鹿毛の方はというと、いつもみんながみているふんわりとした視線の交錯とは違う何かを感じた。誰かに呼ばれたから思わず立ち止まったような感じだったが、そこで自分の好きな匂いがしたのだ。うーん、これはなんだったっけ。この知っているような、引き付けられる匂いは!

黒鹿毛は、口をめくり上げて歯ぐきを見せた。いつもは滅多にしないが、もっとこの匂いを嗅ごうと、その匂いの元をたどろうと、嗅覚を働かせたのだ。そして、その匂いの先にいる、小さな人間のラナを見つけたのだった。

馬が近づいてきたので、ラナは立ち上がった。自分の手を馬の鼻にやると、黒鹿毛は、フヒンと鼻を鳴らして、そして擦り寄ってきたのだ。そして、前足をかがめ、低くして、ラナに背中に乗るように促した。ラナも急展開に驚いてはいたが、一方で、この馬の背に乗るのは当たり前だという感じもしていて、その背に乗ると、まるで最初から一体だったかのように、馬に乗ることができるのであった。

そしてラナは黒鹿毛と虹色に輝く草原を駆け抜けた。自分の黄金の髪から星が舞っていくのを感じていた。黒鹿毛のたてがみの星と、ラナの髪からこぼれ落ちる星々が、宇宙の中心を流れていく。


***Inspired by***
Heliocentric the 6th house
月のステーション 6ハウス牡牛座16度〜双子座15度

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