ジェンダーレス
ブルーと透明のフレンチネイル。
その長身を屈めながら、礼儀正しい佇まいのまま
笑顔で当サロンへ入って来られたお客さまは、ジェンダーレスの方だった。
当サロンは、深い意味はないけどなんとなく「女性限定サロン」と言う
緩い暗黙の了解がある。
なぜなら、着地点に「美しく健康な肌を作る」ための基礎化粧品を販売し
デイリーのお手入れ方法・お化粧品の使い方等をレクチャーしているから
対象が「女性」だと言う固定概念があった。
そう。お化粧=女性がするもの と言う概念だ。
私は最初、戸惑った。
電話でご予約を賜った時からすでに、私はご相談者は「女性」だと
思い込んでいた。
なぜなら、お電話口で「仕上げのお化粧は体験してみますか?」の問に
「はい!!してみたいです!!」そう仰ったのだから。
ただ、少し声はハスキーだったので2%ほど「ん?」と思ったけど
会話もとても丁寧で優しい話し方をされていたので、その時点では
疑う事もなく、気付く事もなかった。
ご来店されて、カウンセリングが始まった。
マスクを外されて、ご挨拶した時に喉ぼとけを見て確信した。
あ!! 男性・・・?? よね。と。
私の性格上、【心の中で思う→脳をスルー→お口から言葉が出る】人なので
躊躇なく「男の子・・・やんね?」と聞いた。
「あ、はい!!」・・・そうですが何か? みたいな空気(笑)
「えっと・・・ジェンダーレスってこと??」と遠慮もなくストレートに
確認する私(;・∀・)
「あ、えっと、まあそうですね」・・・そこ聞く??(笑)
だけど、私的にはちゃんとしときたい。←
ちゃんと「今日のご相談の方は、ジェンダーレスちゃんね」と納得したので
オーケーオーケー!! そっちね?? オーケーーー!!となるのだ。
そうと分かれば話は早い。男子だって綺麗になりたいって思っていいじゃん!
韓流アイドルなんてみんな、化粧してるし美容への意識は私なんかより
ずっと高いと思う。
スイッチは、秒で切り変わり
私はいつも以上に張り切った。彼の希望に添いたい一心と少しの好奇心で
普段はどんなメイクをしているのか、インスタまで見せてもらって
なるほど!!ジェンダーちゃんは、こんなメイクがしたいのか!!
そのためには、今の自分の肌トラブルは悩みのたねだわ。分かる!!分かる!!
となるわけで。
自分の経験や持っている知識、技術をかき集め、出来る限りのアドバイスを
しながらメイクを仕上げてみた。
そこには、性別や年齢などが足枷になるはずもなく
ただただ、「綺麗にしてあげたい」その気持ちしかなかった。
施術中、彼は手鏡を一度も離さず食い入るように鏡を見ながら
今のは何ですか? ニキビ肌の人は美容液つけない方がいいですか?
毛穴のケアはどうすればいいですか? 赤みは消えますか?
今のコンシーラー、テクスチャーいいですね♪
と、怒涛の質問はまるで普通に「女子トーク」
そんな会話をしていると、男とか女とか関係なくね?と思えて来た。
そして、お手入れからメイクまで仕上がった時の彼の第一声は
「軽いですね~気持ちいい~」と言って下さいました。
お客さまは神様ではない。
お客さまは、それ以上でもそれ以下でもない。
見た目や常識などに囚われず、目の前のお客さまが肌トラブルで
悩まれているのならば、その人の気持ちに寄り添いながら
最善を尽くせるか。
・・・お前はホンモノなのか??と神様に問われたような
とても貴重な体験をさせて頂いた。
お客さまのニーズに応えることは、決してお客さまの
言いなりになっているのではない。
お客さまのご要望を訊いたえで、何が最善なのかを探し当て
目的地まで誘導するのが私の仕事だから。
主導権は私にあり、決定権はお客さまに委ねれば良い。
そしてこんな想定外の出来事なんて、そうそうないのだから
もっと経験を積みもっと学んで成長したい。そう思える時間だった。
今回の経験に感謝しなくては。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?