世界が終わるとして、貴方は世界を救うだろうか?(#マンガ感想文)
世界が終わるとして、果たしてその要因はなんだろう? ひょっとしたら今流行りの疫病かも知れない。そして貴方にはその疫病に対して絶対的な耐性があり、かつその免疫にこの大流行に終止符を打つ鍵があるかも知れない。
その時、貴方は世界を救う気になるだろうか?
「ロメロは世界を救わない(ZERO-SUMコミックス/一迅社,のがみち」はゾンビによって世界が滅んだ後に遺された人々の物語であり、「ゾンビに噛まれたらゾンビになる」というお約束に対して絶対的な耐性を持つ主人公「ロメロ」の物語だ。
そして一般的な生存者である語り部「青年」の物語でもある。
青年はショッピングモールの従業員であり店内で暮らす生き残りだ。もう一人生き残りがいて、上司でもあるその女性「店長」に好意を抱いている。だがその恋は実らない。何故なら彼女には恋人がいる。青年が「これ以上被害を出すわけにはいかない」と判断し、既に噛まれていた為に見殺しにされた恋人が。
店長は青年を赦した。青年は店長に罪悪感を含む諸々の感情を抱いている。二人だけの生活。そこに「ロメロ」が現れた。「映画が観たい」と宣いて。
あまり話すと購買意欲を削ぐのであらすじについては以上だ。
「SIREN」という名作ゲームをご存知だろうか? 詳しくなければ是非プレイ動画でも観て欲しい。穿ち過ぎた説明をすれば「日本が舞台の土着ゾンビ物」だ。敵はハッピーな気持ちになり「これは是非他の人にも味わって欲しい!」と厄介押し付けオタクと化して襲い掛かってくるのだ。オタクのTwitterタイムライン過激実写版である。ハマりたくないし断りにくい非戦闘気質オタクはそっと逃れるしかないのだ。
「ロメロは世界を救わない」では、「感染した者は幸せか否か」という会話があり、ゾンビになれば幸福なのかも知れないという描写がある。善良で倫理観のある「青年」には耐え難い事実でしかない。だが受け入れるしかない。
青年はロメロに「世界を救うべきだ」と説く。ロメロは答える。「どうして?」と。
ロメロは映画が好きだ。映画を観る為だけにショッピングモールへとやって来た。生き延びること、ゾンビになった者達が治療可能かも知れないという希望を持つ、「結局バカになれない」青年をロメロは眺めて笑い、映画を観る。そして自分が孤独であることを思い知らせる。ゾンビになれないのだから、彼女は死んだ後も独りだ。
世界が終わるとして、果たしてその要因はなんだろう? ひょっとしたら今流行りの疫病かも知れない。そして貴方にはその疫病に対して絶対的な耐性があり、かつその免疫にこの大流行に終止符を打つ鍵があるかも知れない。
その時、貴方は世界を救う気になるだろうか?
この物語は、この問いに「いや、映画でも観るさ!」と答える人に読んで欲しい物語だ。
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