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『トラウマセンシティブ・マインドフルネス』を読んで

今年のGWは、家の片付けをしたり、葉山にお出かけしたりと、ゆとりある時間を過ごせています。去年のGWは悶々しすぎて本をむさぼるように読んでましたが、今年はまだ1冊も読めていない。そんなときに手に取ったのは、『トラウマセンシティブ・マインドフルネス』です。

この本を読んでの率直な感想は、、「今までこの観点なくして、マインドフルネスをお届けしてきてしまいました、、本当に申し訳ありませんでした。ごめんなさい」に尽きます。

私が研修やワークショップをやっている最中に、目の前でそのような兆候で辛そう、苦しそうで一時中断するような事態はなかったのですが、もしかすると、事後に何かを引き起こしていたかもしれない、、とゾッとするのと同時に、ゴメンナサイでは済まされないレベルだと、ハッとしました。

これまでの私のスタンスでは「現在、メンタル不調気味な方はご遠慮されたほうがいいかもしれないですよ~」程度で、この観点が完全に欠落していました。いまの私には、トラウマセンシティブなマインドフルネスを届けることはできないですが、この観点やリスクを含むことができたのは、一歩の前進です。

これからは、マインドフルネスによる影響を伝える際には、エビデンスや実証データの提示とともに、トラウマセンシティブな観点も含めることをお約束いたします。

この本を読むきっかけ

2022年秋に出版されたことは存じ上げていましたが、買って読もうとも思わず、、そんな矢先に、知人の方よりこんなメッセージをちょうだいしました。

「トラウマを抱えた人がマインドフルネスを実践すると、時に心の中にしまいこんでいたそれを呼び覚ますことがあり、注意が必要という内容です。」故あって2冊手に入っていて、「興味ありましたら、中村さんに送りましょうか?」おっしゃってくださいました。

送っていただきながら、当時は読みたいテンションにならず(申し訳ない)、、そっと本棚で積読状態で、早4か月が経ちました。

そんな時、4/27-29でサンフランシスコで開催されていたWisdom2.0の基調講演で、トラウマワークで世界的に大きな貢献をされているガボール・マテ博士の話を聞いた、MiLI理事の木蔵シャフェ君子さんより、このような一文がfacebeook投稿されておりました。

健全な怒りが抑圧されると、全てを危険なものとみなすようになり、精神的には抑うつ状態や過剰な攻撃性、身体的には免疫疾患(文字通り全てのものを危険とみなしてしまう自己免疫疾患など)となるーー他にもたくさんの学びがありましたが、特に目からウロコはこのことでした。

感情そのものは存在する意義や理由があって、それを否定されたとき、ややこしい問題になっていく。にもかかわらず、教育(特に医療教育)では感情の賢明な向き合い方や健全な怒りについて、ただ我慢すること以外教えられていない、トラウマ増強になっているーーこれも大きくうなずきました。

木蔵シャフェ 君子さんのfacebook投稿より

この気づきのシェアを目にしたとき、積読していたこの本を思い出し、このGW中に読もうとテンションが戻ってきた感じです。


トラウマセンシティブ・マインドフルネスとは

本書は、「どうすればトラウマ・サバイバーに、トラウマを配慮した方法で、マインドフルネスを提供できるのか?」という投げかけと5つの原則の提示で構成されています。

では、トラウマセンシティブって何?、トラウマセンシティブ・マインドフルネスとは?について、本書より引用しますと、このあたり。

・トラウマとは、無力感や恐怖に陥れ、身の危険を感じさせるようなストレス経験、生理機能に与える継続的な影響
・トラウマセンシティブ(トラウマに配慮する)、トラウマインフォームド(トラウマの知識に基づく)実践は、何らかの指導や介入を行う上で、トラウマの基本的な理解を有している
・トラウマ・サバイバーに対するマインドフルネスの隠れた危険性を最小限に抑えること
・マインドフルネス実践とトラウマに関する理解と組み合わせることで、より安全で効果的になること

第二部で各章ごとに展開されている5つの原則は、こちら。

原則1:耐性の窓にとどまる(覚醒の役割)
原則2:安定のために注意をシフトする(恐怖と不動性のサイクルを回避する)
原則3:身体を常に意識する(解離への働きかけ)
原則4:関係性の中で実践する(サバイバーの安全と安定をサポートする)
原則5:社会的文脈を理解する(違いを超えて)

私自身のトラウマ経験を通して、理解や解釈できたこともありましたが、まだまだ理解しきれていない部分は多いです。本を読むだけでは理解と体験が及ばない領域なので、実践していくことで体得していければと。

この本で学んだこと

冒頭の「今までこの観点なくして、マインドフルネスをお届けしてきてしまいました、、本当に申し訳ありませんでした。ごめんなさい」に追加して、現時点では、この3点が得た学びです。

・研修やワークショップで登壇するときには、参加者の中にはトラウマ・サバイバーの方がいらっしゃる前提でいること
・もし何かが起こったときには、適切な専門家の方と連携できるような体制をとること
・ストレスやトラウマとの関係において、自己調節機能がより重要なので、注意調節、身体意識、感情調節を研ぎ澄ませていくこと

このGWのタイミングで手にとれて、本当によかったです。
GW明けは、新生活の環境変化により、五月病(六月病)になりやすい時期であり、「そういうときこそ、マインドフルネスを!」と言いがちです。
「そういうときは、トラウマセンシティブ・マインドフルネスというアプローチもあるみたいですよ」と補足するようにいたします。

詳しくは

『トラウマセンシティブ・マインドフルネス』を日本で展開されているInternational Mindfulness Center Japanさんのnoteやワークショップがあります。



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