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みんな知ってる、みんな知らない【読書感想】

nicoです。
今回は、初めて課題本の読書感想を投稿しようと思います。
お時間少々で読み切りますので、お付き合いください。

みんな知ってる、みんな知らない
チョン・ミジン著


本のあらすじ
9歳の二人の少女が同じ日、
1995年6月4日に事件に巻き込まれる。
軟禁という恐怖を味わい、事件から生還し20年の時を経て複雑に絡み合った運命を綴った作品。

【感想】

物語は、軟禁された少女「ヨヌ」のストーリーから始まる。
目的や状況がわからない少女の目から映る恐怖から始まる文章に、一瞬にして自分も少女の恐怖に包まれていった。
壮絶な体験ののちに、解放されたその身体や心は、世の中の人は自分の出来事を知っているという新たな恐怖が待っていた。
しかし、彼女には49日間の記憶がすっぽりと抜け落ちていた・・

また、一方で「ユシン」は、父の借金のせいで母が自分の目の前で亡くなり、父との逃亡の末に森に一人きりにされる。

二人とも壮絶な体験をし、現在を生きている。

読み進めていくと挿絵があり、脳裏での映像化をさらに鮮明にさせていった。少女の目から見える犯人の顔、森で独りきりになっているシーンなど・・臨場感を増していった。

自身の体験でない場合は、その事件をふと目にし、耳にし、他人事とはいえ恐怖を感じ、いったいどうしてそのようなことが起きたのか、原因が知りたくなってしまうのが人間のサガである。

人間という生き物は、
原因さえわかれば、安心する生き物なのかもしれない。

日々の出来事に事件性がなくとも、自分の理解の範疇を超える出来事や思考に対して、原因を知りたがる傾向があるような気がする。

どうして、なぜ・・と。

私自身、人に考えを聞かれることが多い。
「どうして、○○になったんだろう」
過去の失敗や本人の思惑通りにならなかった出来事に対して、特に共感してほしい気持ちを考えとして聞かれることが多い。

そうやって聞く人のほとんどは、自分の中で解消できない自分の感情を整理したいという気持ちが働いていることが多いため、出来事と感情を切り離して伝えることが多い。

正解を求めているわけではないから・・

しかし、彼女たちのような特異的な体験の場合、
専門家以外に、自分の出来事を整理していくことは難しい。

記憶の断片が一定の時を経て、事件にかかわったことに触れることで彼女たちは出来事を鮮明に思い出していく。
何と辛い作業だろうと悲しくなった。

しかし、特異的な体験でなくとも失恋や死別、いじめなど自分の身近にもそのような出来事はあるのではないかと感じた。

私は「なんで」と考えることをやめた。
それもありかなと思っている。
日々を生きて、生きているだけでいいのではないか・・
なんだかそんな気がしている。

考えても答えに行き着かないこともある。
なぜなら、それは自分一人の出来事ではないから。
何らかの出来事には、必ず相手がいて、その相手は相手の人生があり、同じような感情でページが進んでいるわけではないから・・

最後に「いかなる記憶も私の今、私の未来の足を引っ張ることはできない」という言葉が出てきます。

物語自体は、自身の壮絶な体験と抜け落ちた記憶と向き合い、そして今を生きる彼女たちのストーリーとなっているが、私たち自身に置き換えても、そのようなことはあると感じた。

自分の人生という物語の中に登場した人物の中で、不具合な脇役や出来事にケリがついたら、あとは進むだけ。私も過去に負けたくない。そんな気持ちになりました。







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