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【感想】★★★『三体』劉慈欣

評価 ★★

内容紹介

■文化大革命で父を惨殺され、人類に絶望した科学者・葉文潔。彼女がスカウトされた軍事基地では、人類の運命を左右するプロジェクトが進行していた。数十年後、科学者の連続自殺事件を追って謎の学術団体に潜入したナノテク素材の研究者・汪森を、怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う!そして、汪森が入り込むVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?全世界でシリーズ累計2900万部を売り上げたエンタメ小説の最高峰

感想

文化大革命時代の中国。アインシュタインの相対性理論は悪だとする価値観から科学を否定され殺される父を目の当たりにした葉文潔は、危険分子とされながらも彼女のもつ天体物理の知識から極秘軍事基地に配される。葉文潔は、紅岸基地と呼ばれるその秘密基地で太陽がエネルギーの増幅装置の側面がある事を知り、巨大なアンテナで宇宙に存在するであろう知的生命体との交信を試みる。
そして、現代では数人の科学者が謎の死を遂げる事象がある中、汪森が謎のカウントダウンの目にする事になる。それは他人には見えず、自分にしか見えな光る数字の羅列。そのカウントダウンが迫る中、現在進行中の実験を中止するようにというメッセージを受け取り、成功間近の折に中止を決定し、カウントダウンも止む。
汪森は、軍の秘密会議に招かれ、そこで知り合った学者からVRゲーム「三体」について知る事となる。その「三体」とは、現在の人類と比べ、文明が未開発の世界で太陽が二つあり、生物が生きる事が出来ない「乱紀」と地球環境のような穏やかな「恒紀」が存在する過酷な環境の中、「乱紀」で自分が死んでしまうまでに文明の発展をさせていくというクソゲーである。
このゲーム自体は物語の進行上で特に重要という事はなく、後に分かる異星人の三体人を説明するためのようなものである。
物語は、三体人との交信により、迫りくる人類の危機についての内容解明が主な筋である。

最後半では、三体人目線からの描写もあるのだが、ストーリー全般が天体力学から量子力学などの一般的に超難解な科学的描写が結構な比重で描かれており、途中で何度も挫折をした。
そもそもタイトルにもなっている「三体」というゲーム自体が高度な科学的素養を必要としていて、そのゲームに耐えられる人材を集めるためのツールだったという事なのだが、正直に言って『はあ?』とういう感想だった。
確かにSF小説として、かなりの力作ではあるのは認めるけど、非常に高度の科学的知識に裏付けられた作品ではあるが、その科学の使われ方が結構単純すぎるので、科学に精通している人が読んだら突っ込みどころ満載のような気がする。
ゲーム自体のゲーム性を突き詰めて、そんなゲームやってみたいと思わせて欲しかったし、難解な科学的描写も無知な人物を登場させて、その人に分り易く説明する描写があるべきだと思った。
また、作品の後半で描かれた世界の軍関係者が集まった会議の中で、日本の自衛隊関係者が発言した際に「くだらない」と一蹴する描写があり、少しだけ残念な気分になった。
この作品は3部作の1作目だという事を踏まえ、上記の描写を差し引いても決して面白い作品だと思えないが、科学知識が豊富な人がいれば、勧めるかもしれないと思う程度の作品。

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