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【感想】★★★★「海賊とよばれた男」百田尚樹

評価 ★★★★

内容紹介

■敗戦の夏、異端の石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造は、なにもかも失い、残ったのは借金のみ。そのうえ石油会社大手から排斥され売る油もない。しかし国岡商店は社員ひとりたりとも馘首せず、旧海軍の残油集めなどで糊口をしのぎながら、たくましく再生していく。20世紀の産業を興し、人を狂わせ、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。その石油を武器に変えて世界と闘った男とはいったい何者か―実在の人物をモデルにした本格歴史経済小説

感想

日本の石油大手・出光興産をモデルとした一民間企業が日本政府やアメリカと鎬を削りながら、絶望とも思える状況にもめげず、様々な困難を乗り越えながら、成長していく上下2巻からなる痛快な歴史フィクション。
ただ、出光の歴史をトレースしたストーリーになっているので、半ノンフィクションのような内容。
現在、アメリカとの関係が悪いイランに対して、日本は友好的な立場を崩さない背景もここから見て取れる。この頃の日本人は、理想や理念を真っ直ぐに目指して、ただ突き進もうとする純粋な気質が見事に描かれている。
司馬遼太郎著の「坂の上の雲」にも通じる古き良き日本人を描いた力作。
傍から見ると、甘っちょろい理念と思われがちでも、ぶれずに真っ直ぐに突き進む姿に周りが感化されながら付いていくというよくある図式でも、この頃の日本人なら十分にあり得るし、そう思わせてくれるリアリティがある。
司馬遼太郎の徹底したリサーチに基づいた『司馬史観』ほどには及ばないが、十二分に面白い読み物。
企業物としても歴史物としても非常に面白く、テンポも良いので読み易い。

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