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#45 サロンにお客様が来ない...|お金をかけずに仕掛けたあれこれ


■このマガジンについて


ベトナムホーチミン市にネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。

全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。


■ベトナムで没頭しすぎて、帰国後に燃え尽きた


ベトナムホーチミン市 42Nguyen Hue(グエン・フエ)アパート。
このアパートはサクセスストーリーが生まれる場所と言われている。

ベトナム政府によって近々アパートが取り壊しになる計画が出ている。

それをを知りながら、私はここでネイルサロンを作ることに決めた。

ホーチミンの古アパート

私はベトナムホーチミン市にネイルサロン「KawaiiNail&Eyelash」を作った。
最後の追い込みでベトナム滞在した一ヶ月間は、濃い日々だった。

日本に帰国した朝、空港から出るシャトルバスに乗った私は、無気力にぼーっと快晴の空と海を眺めながら...
「これから写真の仕事に加えリモート経営...写真の仕事をしながら...リモート経営」という言葉が頭の中を回り続けていた。


数日経っても、体に力が入らない。
ベトナムでのお店づくりに完全燃焼したからだろう。

お店についているwebカメラの映像をぼーっと見ては、数時間過ぎて慌てるをくり返していた。

平日は、撮影をしながら、合間にリモートで状況確認。
週末の写真講座が終われば、スタッフたちにリモートで指示を送る。
うまく時間配分ができず、徹夜のような日が続いていた。

写真の仕事はまだいい。
だって、日本語で意思の疎通ができるもの。

辛かったのは、日本語スタッフと意思の疎通が取れなくて話が前に進まないこと。

互いにとって、言いたいことが相手に伝わらないのはキツかった。

お店はオープンしたものの、私たちの働き方の準備は全然整っていなかった。



■初月大赤字!失敗理由とそこから学んだこと。


オープンして1週間もすると、お店へ来てくださるお客様は半分以下になっていた。

日本からリモートでベトナムの様子を見ているから、薄々わかっていたのだが......。

結局、オープン初月(2週間)の総売上は15,000,000vnd(約75,000円)しかなかった。

KawaiiNail&Eyelashの売上
ネイルは、一人あたりの600,000vnd(3,000円)程度。

経費事情

家賃、スタッフの給料、水道光熱費、通信費、諸々の消耗品費を合わせると
最低300,000円は必要。

こんな事を書くのは恥ずかしいんだけれど...。

当時の私は「お店さえ出来たらお客様は来る」と思っていた。

だから、お店を作ることに一生懸命になりすぎて、他のことは全く準備していなかったのだ。

スタッフ:優子さん、みんなにお金を払ったら、残りは300,000円くらいになります。

私:うう、つらい...。多くの経営者が資金繰りで頭を悩ませる理由がやっとわかった......。


振り返ると、私は目的が何なのか完全に見失っていた。

お客様が来てくださるからこそ、お店が成り立つ。
そんな当たり前の事が頭の中から抜けていたのだ。

まるでホンジュラスに作ったチョルテカ橋のようだ...。

ホンジュラスチョルテカ橋

チョルテカ橋のお話
1990年代、中南米ホンジュラスのチョルテカ川に、橋を架け新しいバイパスを作る計画がありました。そして、日本の最新技術によって、激しいハリケーンにも耐えうる橋を架けたのです。ですが数カ月後、チョルテカ川は橋の下を流れず、橋の無い場所へ流れを変えました。
最新技術でどんなハリケーンにも耐えれる素晴らしい橋を作っても、橋を使う意味がなければどうしようもない。ということです。

目的が何なのか。見失ってはいけない。(これは今も私の教訓)


壁に絵を描き、集客してみる


資金がたりない。でも、なにか方法はあるはず...。
私達は、オンライン緊急会議をした。

私:お客様少ないね。お店に入りにくいのかな?

スタッフA:そうですね。それにお店の場所はわかりにくいです。

スタッフB:外の壁に絵を書いてにぎやかにしたらどうですか?
ちなみに私は絵が得意です!

私:お!それならお金を掛けずにすぐできそう。それ、やってみよう!

実は当時、42Nguyen Hue(グエンフエ)アパートは壁に絵をいているお店がちょっとした流行になっていた。

アパートの壁画

これらの壁を背景に、写真を撮るベトナム人をよく見かけていたの。

ベトナム人は写真が大好きだ
ベトナム人と仲良くなって知ったことだが、ベトナム人は超超超写真好き。
男の子は写真を撮るのが好きだし、女の子は写真を撮られるが大好き。
Nguyen Hue(グエン・フエ)通りは観光客が多いけれど、現地ベトナム人もここで写真を撮っているのをよく見かける。
ベトナム人の撮影に本気だ。下からのアングルで撮りたい時は、躊躇なく地面に寝転がるし、撮られる側は、角度や表情も色々変えてポーズする。
また、彼らは最新カメラ機種にも興味があるようで、ニコンのD850(フラッグシップ機)の販売直後、グエン・フエ通りで撮影をしていた時、ベトナム人の男の子が「でえぇえええ!!!?D850もってるコイツ!!!」って具合におののいていた。
「こんな感じだよ」って見せてあげたら、めちゃくちゃ感動してたな。

店外の壁もブルーに塗ったことだし、かわいくて、写真を撮りたくなるような絵をスタッフに絵を描こう!

そして私達はすぐに動き出した。

壁画の下書きをする様子

鉛筆で下書きをはじめ、毎日すこしずつ描き進めていくスタッフたち。

スタッフが壁画を描く様子

壁画を描く様子

私達は、150-160cmの女の子がこの壁面に立って写真を撮ってもらう前提でイラストを考えた。

高さを考えて文字を書いた壁画

手書きの壁画

描き始めて約1週間。外壁のイラストはついに完成した。

カワイイネイルの壁画

私:かわえぇー!

スタッフ:さっき、早速女の子が壁の前で写真撮ってたよ。(えっへん!)
私達の目的どおりだね!

絵が完成してしばらく経った頃、この壁が可愛くて写真映えすると、9階まで来てくださるお客様が少しずつ増えた。

スタッフから「今日もここで写真を撮っていたら、ネイルがしたくなってお店に入ってくれたよ」と聞いたり、ここで撮った写真を、SNSのアイコンにしてくれている女の子を見つけたときは嬉しかったな。

インプットしたこと
お店があるだけでは駄目。
だって、タクシーだって手を挙げなきゃ止まらないもの。
「私達はここにいるよ!」って見てもらう工夫をしなければ!



■アパートマップを作り集客してみる



このアパートは、毎日たくさんの観光客や現地のおしゃれベトナム人が来る。

だが当時は、私達のお店がある9階(最上階)はまだまだ人通りが少なかった。

9階に人通りが少ない理由を考えてみた
・エレベーターに乗るのに3,000vnd(15円)かかる。少額だが、お金を払いたくないと思う人がたくさんいる。
エレベータを使いたくない→階段を利用→9階まではキツイというサイクルが完成する。

・当時の9階は住居が多く、店舗は2つしかなかった(カフェとネイルサロンだけ)

9階まで足を運んでもらう為には、もう一つ仕掛けがほしい...。

そして私はひらめいた。

【【【 KawaiiNail&Eyelash発信のグエン・フエアパートマップ 】】】


アパートにある店舗を全部調べ、各店舗のショップカードや私達が各店にリサーチした情報カードを作り、掲示してみてはどうかというものだ。

なぜアパートのフロアマップなのか
このアパートに初めて来た時、私はアパートのフロアマップを探した。
何の店があるか知りたかったからだ。でも、フロアマップはどこにもなかった。それを思い出した時「それなら、私達が作ったらどうか?」とふと思いついた。私のように、このアパート中のお店の詳細を知りたい人は絶対にいると思う。だって、どれもこだわりの感じる店ばかりだもの。
私たちの思惑
・「まずは9階で情報収集してお店を周ろう」というお客様の行動パターンを作れたら、私達のお店の認知度も増えるだろう。
認知度高まったら、ネイルをしたいとき、私達のお店も候補に上がるはず。

・9階に人が来るようになれば、スタッフがお店の紹介をしやすい。
「アパートマップを見たい」「壁画で写真撮影をしたい」どちらが目当てでもいい。私達の店前まで来てくれさえすれば、お店に誘導しやすい。
(ちょっと、よってってー。的な勧誘ができる)

私達は早速、1店舗ずつ聞き込みをした。
そして、集めた情報を元にカードを作っていった。

手づくりしたグエンフエアパートマップ

カードに記載した内容
何のお店か?(同時にカテゴリーで色分けした)
何階か?
使える言語は?(世界中から観光客がここに来るからね)
オープン時間は?
おおよその金額は?
店舗がおすすめするサービスは?

「私がもしこのアパートに遊びに来たなら、こんなところが知りたい」と思う情報を聞き込み、1枚ずつカードで取れるように工夫している。

同時に、各店舗のショップカードも集め、好きなものを持って帰れるようにストックした。

すると、掲示した途端、早速女の子達が集まってきたのだ。

アパートのマップを取りに来たお客様

左端にいる白Tの女の子はスタッフ。
この後、ちゃっかり私達のお店を紹介して中へ誘導していた(やるな!)


■エレベーター広告で集客してみる


オープン前からしばらく掲示していたエレベーター広告

エレベーター広告

最初のは、オープン告知がメインのデザインだったので、デザインを変えてみた。

エレベータ広告を張替え

前回はベトナム語がメインでポスターを作っていたが、メインを英語に変えて、デザインした。
(本当はベトナム語、英語、日本語と3ヶ国語を入れたいが、文字が多すぎて見にくいからあきらめた)

満員のエレベータでも見上げれば見えるように一番上に「まずは9階に行こう!」と、かなり大きいスペースを割いて、入れた。

これだけ大きく表示したら、目についたようだ。

すこーしずつだけど、認知が増えた。

「ポスターを見て来たよ。とおっしゃってくださるお客様が今日も来ました」というスタッフの報告がとても嬉しかったな。


■お金をかけずに仕掛けを作って思ったこと

①店外の壁面アート
②アパートのフロアマップ
③エレベータ広告

これらは、すぐに取り掛かることができて、費用を節約したアクションばかり。

どれかが、効果を生んでいるというより、相乗効果で徐々に効果が現れたという印象だ。

「オープン後、半年は赤字が続くだろう」と覚悟はしていたが、ちょっと期待している自分がいた。
が、赤字という結果を目の当たりにし「私はこんなもんなんだ」と自分の立ち位置がちゃんと見えた時でもあった。

そして私は、深く胸に刻んだ。
これからも試行錯誤を続けて、お店は育てていかなければならないと......。



KawaiiNail&Eyelash sns (@kawaiisaigon)

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▼お金をかけずに試行錯誤したあれこれ▼




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