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#17ベトナム賃貸契約|もう行くしか無いと賭けに出た


ベトナムホーチミン市 42Nguyen Hue(グエン・フエ)アパート。
このアパートはサクセスストーリーが生まれる場所と言われている。

私は、ここでネイルサロンを作りたいとアパートすべての階を回り、やっと1部屋のキープまでこぎつけた。

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■このマガジンについて


ベトナムにネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。


全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。



■物件のオーナーとの初対面

「いよいよ初対面の時までこぎつけたか...」
物件を契約した4日後、解約した経験があった。

今日こそ上手く事を運びたい。

キープしている物件のオーナー、Coung(クン)さんとはアパート内のカフェで待ち合わせだ。

私は、ネイルサロンオープンに向けて色々手伝ってくれているTangくん(タン)と共にアパートへ向かった。

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私:xin chao! (こんにちは) クンさん、はじめまして。

クン:xin chao.この前は娘がお世話になりました。

私:早速ですが、私はあの物件が大変気に入りました。ホーチミンの滞在期間も少ないので、すぐにでも契約したいです。

クン:あなたは、毎回日本から来ていると聞いています。それに、これからも日本に住みながら遠隔で経営するんですね。なかなか忙しい人だね。

ベトナム滞在は残りは5日。
私が「すぐにでも契約したい」とクンさんに言ったのは、理由があった。

①契約書はベトナム語のため、日本語に翻訳してもらう。

②日本語に翻訳した契約書を確認し、修正や追加してほしい箇所がないかチェックし、クンさんに相談。返答をもらう。

③契約書を修正、追加作業

④もう一度会って、契約書にサイン

⑤今回のタイミングを逃したら次のベトナム出張は1ヶ月後。

①〜④をすべて私自身の作業で完結するなら余裕の日程だ。
しかし、④の契約書にサインする以外は日本語とベトナム語がわかる人にお願いしなければ出来ない。

当たり前だけど、一つの工程が遅れると全部遅れちゃうんだよね。
(いままでそんなギリギリのことばっかりだった)

できるだけ早い段階で、契約が完了している方が気持ち的にも楽だ。
だから、私は今すぐにでも契約書をもらって翻訳作業をしたかった。

私:早速なのですが、契約書を預かってもいいですか?私は、持ち帰って確認します。

クン:契約書は無いんです。あなたが作ってくれますか。僕はチェックして問題なければサインするよ。


【【【あらま...そう来たか】】】


いままで見てきたベトナムの賃貸物件で、契約書が無いなんて初めて聞いたけれど。

確かに、これまでガチで住んでた家だもんね。テナント貸し用の契約書が無いのも理解できる。

しかし、どうしようか......

賃貸物件の契約の際、契約書は誰が作成するの?
契約書作成は、貸主でも借主でも仲介業者でも良いのですが一般的には仲介業者が作るものです。貸主が自分で用意した書式を使いたい時は仲介業者もそれに合わせます。今回は、仲介業者がいないので一般的に考えると貸主。ただ絶対という訳では無いのと、借主が作成しても問題ありません(稀だけど)
私:ベトナムの賃貸契約書なんて作ったことないよ。どうしよう。

タン:いいじゃん。自分に有利な事が書けるね。あはは。

私:なるほど、そういう考えもアリか。じゃあ、こっちで引き受けよう。


時間が無いのに、完全にタンくんのポジティブ思考が、私にうつっていた。
まぁ、なんとかなるか。(帰って、ゴックさんにも相談しよ...)


■アパートの今後を聞きショックを受ける


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クン:あ。そうそう。契約するのはいいけど、このアパートは政府から取り壊し計画書類が出ているけど、大丈夫?

私・タン:えええ......このタイミングで言う!?

タン:クンさん、でもそれは日程が決まっているんですか?

クン:いや、まだ具体的には決まってないみたい。去年から政府の計画書類が来ているよ。こんな一等地のグエン・フエ通りにこのアパートは不釣り合いだからね。仕方のないことかも知れないね。


絶句して言葉が出ない私の横で、クンさんとタンくんはしばらくベトナム語で話をしていた。

そして、話は一通り終わった頃......

タン:クンさんとちょっと話したけど、僕は3年くらいはこの計画が進まないと思うよ。

私:そうなの?もし取り壊しの計画が進むってのが決まったら、そこから着手までどれくらいかかるんだろう。

タン:うーん。3ヶ月とかじゃない?ベトナム政府の決めることだから、僕はわからない。急ぐ時は早いし、遅い時は遅いよ。

私:ぐぬぬ...。(なんとも判断しにくい答えだ)

ついてないなー。せっかく決まりそうなのに、取り壊しの計画だなんて。

タンくんの言葉を信じて契約するか、止めて別の物件を探すか。

今すぐ決めるなんてできない......


この時の私の葛藤
・ここを諦めて他をもう一度探す?→今までたくさん見た中で、このアパートほど立地が良くてリーズナブルな物件はない。

・物件探しからすでに半年以上経っている→物件が決まらないと店作りが全然進まない。

・融資の支払いは来月から始まる→一刻も早く売上を立てていかないと資金がショートしちゃう!


ここまで来て、振り出しに戻るのはもういやだ。

【【【どうする私?】】】


この決断にはものすごいプレッシャーを感じた。

クンさんには「ちょっと考えさせてください」と伝え、その日の顔合わせは終了した。
なんで、毎回うまく行かないんだ。。


■もう行くしか無い!と決断した


私:頭がクラクラする。まさかアパートの取り壊し計画があるなんて。辛い。辛すぎる(泣)

タン:元気だしてください。僕は、このアパートはすぐに潰れないと思うんだ。だって、壊すにはアパートの住人の同意が必要だからね。

私:でも、政府にはみんな逆らえないんでしょう?社会主義国だしさ。

タン:そうだけど、今は反対してる住人が多いってクンさんは言ってた。
家がなくなったらみんな大変だからね。社会主義だけど、声が大きい方が勝つと僕は思うんだ。

私:そうなの!?もう絶対無理だと思った。

タン:とりあえず取り壊しが決定するまで、やればいいじゃん。だめなら引っ越しだってできるよ。


私は、タンくんの「だめなら引っ越しだってできる」のアドバイスにハッとした。

そうだよなー。
こんなに立地が良くて格安物件は無いんだし、ひとまず2、3年を目処にここで営業して引っ越しすればいいか。

いつ引っ越ししても良いようなお店づくりをすれば、リスクヘッジにもなる。

タンくんの後押しがあるからなのか、いままで色んな衝撃を自分なりに消化してきたからなのか...。
私、前より強くなってきた気がする!

私:タンくん、色々アドバイスありがとう!そうだね。もう後もないし、ここでやってみようと思う。

タン:うん!優ちゃんなら、できると思うよ。頑張って!

こうしてタンくんに背中を押された私は、「もうやるしかない」と、ベトナム政府の取り壊し計画があると知りながら、契約することを決めた。



■見様見真似で契約書を作る


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「契約書作ってよ。確認してOKならサインするから」って私に丸投げししてきた物件オーナーのクンさん。

「マジか...!!!」というのが本音だが、こうなったら仕方が無い。
ベトナムと日本の契約書は多少違うけれど、書くべきことはそんなに変わらないはずだ...。

私は急いでホテルに帰り、私は「賃貸 契約書 作り方」と日本語で早速ググった。


私が行った契約書の内容と作成手順

1.いくつかの無料テンプレートをダウンロードして、集約したものを作る。
(調べたらすぐに答えが見つかるって、ありがたいよねー。)

2.自分が「これはトラブルになるかもしれないな。入れておきたいな」って思う事柄を追加する。家賃についてはトラブルになる可能性大。私は、家賃の値上げについて、3年借りるので2年は上がらない。と書き、値上げも上限%をきちんと明記した。

3.未定だけれど、取り壊しの計画がある。もし契約期間中に取り壊しが決定した場合、契約期間が残っていてもその時点で契約解除になることを書いておこう。

4.日本語で書いた契約書をゴックさんに見せて、アドバイスをもらったり加筆修正。彼女のアドバイスは「取り壊し計画もあるから、解約する時は原状回復しないと書きましょう」だった。(賢い!)

5.ベトナム語に翻訳してもらう。
できたら、オーナーのクンさんにメールして返事を待つだけ!

こうして、私はweb検索という文明の利器とベトナム人パートナー達の力を借り、契約書を作り上げた。

今振り返ると、一番焦った出張だったな。

「ちょいと無謀すぎないか?」とも思う。
この時は、絶対なにかが私に取り憑いてた。うん。絶対そうだ。






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