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#13ベトナムで物件を借りた4日後に解約した。


■このマガジンについて


ベトナムにネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。
全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。


■やっと出会えた良物件


ベトナムにネイルサロンを作るために日本とベトナム間を行ったり来たり。

当時の私は、日本で広告写真の撮影と、写真講座の講師をしながら
ベトナムホーチミン市でネイルサロンを作る為の資料作成やネイルデザインを考えて過ごしていた。


私の思いは一つ。
「今回こそ、物件をきめたい......!!!」

いままで15物件以上見てきた。
でも未だに、私の「譲れない条件」に当てはまる物件には出会えていない。

私の譲れない条件
・ベトナム1区内の物件
・ホーチミンの観光スポットから1km以内で行ける距離にある
(ベンタン市場・郵便局・ホーチミン像・統一教会・サイゴン大聖堂)
・家賃は日本円で15万円以下
・トイレが狭くなく、洋式で綺麗。または改装してもOKの場所


私がホーチミンに到着した翌日、不動産屋が「いい物件がある」と連絡してきた。

私は、サロンオープンを色々手伝ってくれているNgoc(ゴック)さんと一緒に早速現地へ向かった。

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真ん中に写っているのが今回の物件。
ホーチミン市1区のLe lai通り沿い、一階スペースだ。

スマホサービスのお店がここから移転した直後だったようで、まだ改装工事中。

いいタイミングで来れたかも!

Le lai通りとは
観光客にも人気のベンタン市場とおしゃれなアパレルショップが並ぶグエンチャイ通りを結ぶのがレライ通り。「9月23日公園」という1945年のベトナム独立にちなんで名付けられた、大きな公園がレライ通り沿いにあり、公園の景色を眺められるカフェや洒落た雰囲気のお店が多い。


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広さもちょうどよくて、前は緑豊かな大きな公園。

私の譲れない条件すべてをクリアしていて、なんなら諦めていた大通りに面した店舗だ!

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ゴックさんが大家さんと世間話をしている。
彼女が場を和ませながら、契約について通訳したり段取りしてくれたから話はスムーズに進んだ。

実はゴックさん、女の子を出産して間もない頃だった。
腰がヘルニアになり、大変な時期なのに一緒に来てくれて本当にありがたかった。

【【【 できるだけ早く物件を決めて、良いお店をつくるからね! 】】】

今回の物件、私が今まで見てきた中でダントツ一番。

私は日本からのリモート経営が大前提。
大家さんは上の階に住んでいたので、頼もしく、安心を感じたのも気に入った理由の1つだった。

2〜4階部分は大家さんの住居で、お父さんと娘さん、小型犬1匹が暮らしていた。
お母さんとは別居。彼女はハノイで政府関係の仕事をしていると伺った。

「おお!なんと!ベトナム政府関係者の物件と契約出来るってことか!?」

社会主義のベトナムでは、政府関係者と良好な関係を持てたほうがお店を経営する上で絶対的に良い。

ベトナムの正式国号は「ベトナム社会主義共和国」
日本は民主主義であり、資本主義経済。
ベトナム社会主義国の政治は、共産党の一党独裁。
社会主義の特徴の一つとして、政府の権力が強いことが挙げられます。


私:ゴックさん、この物件どう思う?

ゴック:開放的な雰囲気があるからとてもいいですね!それに、ベトナムで起業するなら、政府関係者に知り合いがいると何かと安心だと思います。

私:そうだよね。この事業は、日本↔ベトナムの遠隔経営が前提。ベトナムで何かトラブルが起きた時、知人に政府関係者がいると助けてくれたりするから、仲良くした方がいい。と聞いたことがある。

ゴック:はい、そのとおりです。


娘さんは物件案内をしてくれて、とても丁寧に説明してくれた。
お父さんも口数すくないけれど、すごく良い人そうだ。

私達は翌日、契約書とお金(家賃2ヶ月分)を用意し、無事に物件契約ができた。

「この物件に決まったよ。」とベトナム人の友人に連絡すると
「成功おめでとう!この場所なら間違いないよ!」と返事が来た。

わぁー。私、やっと契約までできた!

みんなに助けてもらって、こんなに良い物件の契約もできて...。

「これから、出張ペースも短くなるし、もっと頑張らなきゃ!」


私は、やりきった気持ちで翌日からベトナム北西部にある少数民族の暮らすSAPA(サパ)へ小トリップにでかけた。


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SAPA(サパ)について
サパは標高1,600mの山間部にあり、夏は涼しく、冬は寒さが厳しい。
米の生産、消費共に世界5位以内のベトナム。サパの棚田は春と秋の二毛作で、今も手作業で田植えをするところもあるそうだ。
サパには、白モン族、黒モン族、赤モン族、花モン族、ザオ族、ミャオ族...。とたくさんの少数民族が暮らしている。
色とりどりの刺繍をほどこし、手のこんだ衣装を着ている民族もいれば、藍染した紺色の生地に腕の部分だけ刺繍をしただけの民族と衣装が様々だ。



■油断大敵!安心してはいけなかった


サパに到着して、民族のツアーに参加したり、写真撮影を楽しんでいた私にゴックさんから1本の電話が。

ゴック:契約した物件ですが、私は契約を取り消ししたいんです。

私:え?どうして?

ゴック:あの娘は信じることができません。

ちょっとちょっと...。どうゆうこと!?!?

「大家さんは信頼できそうだ」と言っていたゴックさんが、急にそんな事を言い出すなんて......。


契約後、大家(娘)からゴックに電話があったそうだ。
彼女の話を詳しく聞くと、驚く内容だった......

娘:契約したけど、家賃をあと5,000,000vnd(約25,000円)上げたい。

ゴック:もう契約して貸主も納得してサインをしました。
お金も受け取ったんだから、今から金額交渉に応じることは出来ません。

娘:知り合いの政府関係者に連絡して、あなたの家の電気や水道代だけ値上げすることもできるのよ!

こんな内容なら、気遣いの達人ゴックさんだって、私が旅行中だろうが関係なく「契約を解約したい」と電話してくるよ。

「娘よ。正気なのか......」

サパの絶景を目の前に私の気分は一気に落ち込んだ。


2日後、気もそぞろでホーチミンに戻った私は、ゴックさんと共に解約に向かった。

この時、考えていた不安な事
・デポジットのお金を一気に払うんじゃなかったなー。
・理由をつけられて、支払ったデポジットが満額返って来ないかも...。
・解約できないとかないよな!?そうなったらやべえ!

2人の足取りは重かった...。


■契約解約!振り出しに戻る


私とゴックさんは内心ドキドキしながら、大家のいる2階へ上がった。

でも、なぜかお父さんは前より雰囲気が優しかった。

私・ゴック:電話をいただき、契約について話し合いをしに伺いました。
私たちは、契約をしてお金を払いましたが、不安要素があるので契約を解約したいと思っています。

お父さん:今回は娘がごめんね。今までは僕が物件契約をやっていたんだけれど、もう歳だし。今回から娘に任せたらこれだよ(ふぅ...)

ゴック:今回は残念ですが仕方有りません。お金を全額返していただいたら、私達は満足ですっ。

娘:無言。そして無表情。

私:ベトナム語が理解できず、超不安な表情。  (何もできずに居るだけ)

大家のお父さんはその昔、日本とも付き合いがある海運関係の仕事をしていたから「私と契約するのは嬉しい」と言ってくれていたのに...。


[ [ [ [    こ  の  娘  め  !!   ] ] ] ]


気持ち的には色々モヤモヤを抱えていたが、互いに納得し解約をした。
そして、デポジットは満額返してもらえた (とりあえずホッとしたワ......)

でも、せっかく手に入れたと思ったものが、数日で振り出しに戻っちゃった。

帰りのタクシーにのる間際
お父さん:実は...娘はメンタルヘルスなんだ。今回は本当にごめんね。
(英語でこそっと)

ゴック・私:!!!!!

お父さん、タクシーに乗る前の私たちにセンシティブな事を...。

「今言うか!?」と私もゴックさんも、無言になってしまった。

他に高値で借りたい人が現れ、契約破棄するために連絡してきたのかもしれないと想像していた私達。

実際はどうなのか、今もわからないけれど...。
この数ヶ月含め「なんだか色々な経験をしているな」と改めて感じた出来事だった。


今回の出来事でインプットしたこと
契約書にサインして、デポジットを払っても安心してはいけない。
・契約後に金額交渉をしてくる事もある。
・政府関係者の知人に頼んで〇〇できる。と脅してくる人もいる。
私のアウトプット
デポジットは一度に満額を払わない。半金だけ先に払うなど対策する。
・脅されても、冷静に対応しよう。
・政府関係者とは交友関係が無くてもとりあえず大丈夫だが逆らわない。
(その国のルールに従うのが大事)


この後、帰国ぎりぎりまで物件を探したけれど、どれもいまいちだった。

ああぁぁぁ〜!また今回も物件契約できなかったー!!
本当にマズイ。

始めたいのに始めることができない。
こっちの準備は整っているのにぃ.......

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