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10 エレクトーンFS-30→HSシリーズ→ELシリーズへ怒涛の進化 買い替え問題で生徒離れ

83万円もするコンピューター式の画期的なエレクトーンFS-30が発売されたのが1983年。音楽をしない親に拝み倒してようやく買ってもらったのが1985年頃と記憶している。

その後1987年に、HSシリーズが発売になった。普及モデルで90万円くらいだったと記憶している。

T先生の音楽教室には、HSシリーズがすぐに導入された。FSシリーズが出た時ほどのインパクトはなかったが、確実に進化し、音も良くなっていた。見た目もスマートになっていた。

特筆するのは、レジストレーションをフロッピーのような外部メモリーに記憶して持ち歩くことができるようになったことだ。FSシリーズでは、本体に記憶する方法だったので、曲が変わることにレジストレーションをし直してボタンを押して記憶させる必要があった。記憶できるのはわずか8種類くらいだったと記憶している。

フロッピーのような外部メモリーに記憶して持ち運びできるとなると、HSシリーズのあるところではどんな曲でもすぐに弾き始めることができるし、レジストレーションをする手間がメモリーするときの1度で済む。

HSシリーズの頃に、ヤマハは曲集とともにレジストレーションも販売し始めたと記憶している。とはいえ、まだその頃発売されていた曲集では、自分でレジストレーションを考えて演奏することもできた。しかし、1991年ELシリーズ販売後は、曲集とEL専用のレジストレーションが一緒に販売され、それがないと演奏ができなかった。機械の性能が向上したので自動演奏が増えたのもあり、買ったレジストレーションを利用しないと物足りない演奏になってしまうようになった。いや、もはや、EL時代に自分のレジストレーションで弾く人などいなくなったのではないだろうか。

ELの話になってしまったが、HSの話を元にもどず。

このHSシリーズ、T先生の教室で発売当初から使っていたので、また自宅にも欲しくなった(機種が変わるたびに導入しなくてはならない音楽教室も大変だったと思う)。家のFS-30で練習していると、物足りなくて仕方なくなった。しかし、83万円もするFS-30を買ってもらって2年くらいしかしていないので、もう私は親に頼み込むということはできなくなっていた。

しかし。こともあろうか、このHSシリーズは1987年から1990年までの命だったのである。1991年には、ELシリーズが発売された。100万円くらいだったと記憶している。EL-90というのが、汎用モデルだった。

このELシリーズになってから、前述の通り、ヤマハは曲集とEL専用レジストレーションを抱き合わせで販売するようになった。曲集を買うと、レジストが入っているフロッピーがついてくるようになった。このレジストを使わないと、曲集に載っている曲がアレンジャーの意図通りに再現できない。つまり、EL以外の機種では練習にならないし、演奏にもならないのである。そして、グレード試験もELでしか受けられなくなった。つまり、エレクトーンの生徒全てにおいて、エレクトーンを続けるためにはELを購入しないとついていけない状況に追いやられたのだ。

ショックだった。

ようやく買ってもらったFS-30。HSシリーズの数年間、物足りなさに我慢しながら続けていたけれど、ELになった時、もうおしまいだと感じた。中学生になっていた私は、親に買って欲しいなんて言えなかった。EL-90は、百万円を超えていたと記憶している。車を買える値段だ。

一番可哀想だったのは、HSを購入してしまった生徒である。結局、発売当初に買ったとしても3年間しか使えなかった。90万円も出して買ったのに、3年で使い物にならなくなってしまったショックは、計り知れない。私のように、おしまいを感じてやめていった生徒は多かったのではないだろうか。買ってあげた親も、こんなに早く使い物にならなくなるだなんて、ショックだったと思う。

これから先に詳しく書く予定のことだが、私は、一度やめたエレクトーンを社会人になってから再開する。その時通った某音楽教室の店長さんとエレクトーン談義をした時のこと。エレクトーン業界にも詳しかったその店長さんは「HS販売から3年足らずでELが販売されて、その時に多くの生徒離れをおこしたのですよ」と言っていて、やっぱりそうだったか、当然だよなと思った。エレクトーンが好きで、続けたくて、上手になりたくて100万円近いお金を出してHSを買ってしまった生徒は裏切られた気分がしたことだろう。続けるためには、また100万円以上のお金を出して買い替えなくてはならなかったのだから。

課金ゲームかよ!?

そもそも、3年や4年で型落ちになって使い物にならなくなる楽器など、エレクトーン以外に聞いたことがない。まして、自動車が買えるような値段。

この辺のことからも、やはりエレクトーンは楽器とは言えない。ただの金儲けの商品だったような気がしている。

FS-30の時代まではとても楽しかった。エレクトーンからたくさんのことを学んだのも事実である。だからエレクトーンに対する感情は、とても複雑である。

ELの時代になると、自動演奏に頼ったレジストレーションが横行し、楽譜がどんどん簡単になり、誰でも簡単にすぐに弾けるような楽譜しか出回らなくなった。どんどんつまらなくなっていって、結局やめてしまった話は、おいおい書いていく。

しかし、このエレクトーンをやっていた経験が、20代から40代の今になっても効いてくるのであるから、人生何がおこるかわからない。

おっと、エレクトーンの変遷と生徒離れへと話が脱線してしまった。

次回からは、エレクトーンの思い出に戻る。

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