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「どう育つか」を決定付けるもの

一人暮らしを始めて約半年。
誕生日前日にパキラが送られてくることが分かった。

『送られてくることが分かった』?
そう、今の時代とは便利なもので、宅配便で何かが届く時、事前に通知がくるのだ。

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この通知を見た時の率直な感想としては

「観葉植物が来るのか・・・う~ん・・・」という気持ちである。

というのも、これまでろくに自分の面倒も見られなかった怠惰人間である。

一念発起をしてようやく一人暮らしを始め、約半年が経とうとしているわけだが、この怠惰人間が他の生き物の面倒など見られるのか。

たかが植物かもしれないが、されど植物だ。動かないとはいえ、ちゃんと生命が宿っている。

まさかプレゼントという形で強制的にその環境を与えられるとは思わなかった。
そんな不安な感情を抱えたまま、無事に荷物を受け取る。

狭い段ボールの中では息苦しいだろうと、届いてすぐに開封した。
そして登場した姿がこちら。

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「小っちゃくてかわいい・・・」

これが第一印象だった。ただ、育てられるのかが心配だ。
それに、家の中で虫なんか湧こうものならとんでもない。洒落にならない。

・・・と思っていたのだが、送られてきたこちらのパキラは土ではなく、「ハイドロボール」と呼ばれる粘土を高温で焼いて発泡させた石のようなものを使用しており、匂いもなく、虫も寄ってこない代物だそう。

なんと、そんなものがあるんですね。本当に便利な世の中である。
今の世の中は人間に都合のいい世界だ。

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送られてきた段ボールには育て方を記した説明書が同封されており、読んだけれども正直言っている意味が分からなかった。
ゆっくり何度も読んだけど、よく意味が分からなかった。読解力不足。

とりあえず、日に当たった方が良いだろうことと、水を与えた方が良いことは分かるけれど、どのくらいのさじ加減で水を与えれば良いのかがよく分からない。

どうやら観葉植物が好きらしい母に、パキラが届いたことを話すと、「水のやりすぎに注意、やらなすぎに注意」とのことだった。

いや、そのさじ加減が分からないのである。

とりあえず、このハイドロボール全体に水を通して、葉を霧吹きで濡らし、日中は私の好きな景色が見られる窓際に置き、外を味わってもらう。
そして、夕刻には写真にあるカウンターへ移動。そんな生活を送ってもらうことにした。

パキラと生活を共にしてから約10日。
育っているのかどうなんだか分からず、写真を撮って見比べたところ、とんでもなく成長していることにここでようやく気付いた。

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長年連れ添う家族と毎日顔を合わせていると、年を重ねてもあまり変化には気付かないけれど、まさか植物でさえもそうだとは。

とんでもない成長にビックリした。

ここに至るまで、私は分からなかった。
パキラは今、そもそも水を欲しているのだろうか。
葉っぱを霧吹きで濡らされて、嫌じゃないだろうか。
昼間は外の景色が見える窓辺に置かれて、夕刻にはお部屋のカウンターに移動されて、どう思うんだろうか。

パキラがどんな気持ちかは分からないけれど。だけど、今のパキラの姿は、私の日々の行動そのものなのだ。
葉っぱも青々としているので、多分悲しい思いはしていないと思うけど、それにしても、ただただ無言で私の行動を表す姿は、とても健気だなと感じた。

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これはきっと、人も動物も同じなんだろうなと思う。
人には言葉や感情があるし、動物にも感情や動きがあるけれど、きっと自分の気持ちを伝えられず、ただ周りの行動を受け入れている人や動物もいるだろうから。

人も動物も植物も、周りの環境、そしてどんな相手と関わるかによって、どう育つかは変わるのだ。
そんなの当たり前のこと。
だけど、植物に自分が対面したことで改めて感じたのだ。

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ということで、私のお家のパキラは喋りも動きもせず、ただそこに存在しているだけ。今日のパキラの姿は私の家の環境と、私の行動の全てだ。

この「環境」と「関わり」である私が、パキラにとって良い存在でありますように。

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