背の順で並ぶのは差別かなあ?
今、話題の松尾英明先生がテレビ朝日の番組に出演しました。
今回は背の順について問題提起をされ、ネットでも取り上げられています。
松尾英明先生は『不親切教師のススメ』の中で、当たり前とされている背の順を見直そうという主張をされています。おそらく背の順について疑いもなく続けてきた先生たちにとってはこういう発想はなかったと思います。
上に示したプレジデントオンラインの中で、「背の順に並ばせるのは、身体的特徴による差別の誇示である。背丈という本人にはどうしようもない身体的特徴を並べて比較し、小さい方から大きい方へと序列をつけて並べる。一番小さい人と一番大きい人を確定して、誰の目にも明らかなように序列を公表する。」
要するに背の順で並ばせるのは、背の低い者にとっていじめに値するような行為であるというものです。
そして、「背の順だと前がよく見える」という俗説が学校ではまかり通っているが、全く出鱈目なウソであるとも言っています。自分と近い背丈の者が前方にいる時には、目の前の人の頭部しか見えないのだから、背の順は前がよく見えるということはないとしています。
こうしたことから、松尾英明先生は「名簿順」が望ましいとしています。
しかし、「名簿順」ならば問題はないのでしょうか。
最近では名簿順をあいうえお順ではなく、生年月日順にする学校が多いと感じます。なぜならば、離婚等の理由で姓が変わってしまうことがあるので、絶対に変わらない生年月日で名簿順にしています。生年月日順では4月2日生まれの子は必ず一番先頭です。そして、4月1日生まれの子は必ず一番後ろです。
早生まれの子はいつも後ろの方になってしまうのです。生まれについても本人にとってはどうしようもないことです。4月2日生まれと4月1日生まれではまるまる1年間違うわけですから不利だという見方もされています。
こうして考えると、見方によっては「名簿順」も差別ととられます。「背の順」=いじめというのは言い過ぎのように思います。
私は、子どもの頃、前から3番目でしたが、何か不都合なことがあったわけではありません。「背の順=いじめ」ということになってしまうと、まるで背が低いことが悪いことのようにとらえられてしまいます。
校長としては、「背の順=いじめ」ということがまかり通ってしまうと、背の順での並びができなくなってしまいます。
例えば、全校集会で高い壇上に立つときは「背の順」の方が上にいる人は見やすいです。名簿順で背がとても高い子どもがいたら見えづらくなってしまいます。スポーツ大会の開会式は背の高い順で並ぶことが多いので、よく後ろの子がジャンプしています。
松尾先生は「背の順=いじめ」という極端なところまでは考えていないように思います。どうしても、マスコミはキャッチーな言葉を付けたがります。
校長として、この件を教職員にどう伝えるかというと、「その場面に合った並び方を考えましょう。」と言います。
健康診断の時は名簿順。なぜならば、記載する書類の順番が名簿順だから。
全校集会のように高いところからの話を聞く場合には背の順。
地震などの災害による避難の場合は席順。
疑いも無しに背の順というのではなく、場面に応じることにすれば先生たちも何がふさわしいかを考えながら子どもたちを動かすでしょう。
先生たちが「何のためにこういう並びをするのか。」ということが意識できれば十分だと考えます。
災害による避難を「席順」としましたが、これは、自分の席から教室の真後ろに移動して2列で並ぶという意味です。並び順は関係ありません。とにかく自分の席からまっすぐ後ろに下がって並び順を調整すればいいのです。
このようにすれば、素早く移動ができます。先頭のグループに並ぶ子どもがベランダ側の一番前にいるようでは、クロスする動きが生じて避難が遅れてしまいます。
こういうマスコミでの取り上げ方にすぐに反応するのではなく、冷静に考えていきましょう。
そして、目の前の当たり前をもう一度見直していきましょう。
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