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『ライオンのおやつ』を読んで

小川糸さん作、『ライオンのおやつ』
泣きすぎて嗚咽しながら読んだ。
机の上にティッシュの山ができた。

作者は別に涙ほしくて書いているわけではないと思いながらも涙が出て出て止まらなかった。



私はないものを数えるのが得意だ。

あまり気が利かない。
あまり優しくない。
あまり明るくない。
あまり話し上手じゃない。

あまり鼻が高くない。
あまり口が大きくない。
あまり背が高くない。
あまりきれいじゃない。

結婚していない。
彼氏がいない。
子どもがいない。
マイホームがない。

友達もそんなに多くない。
なんでも話せる友達も少ない。


数えだすとキリがない”ない”ものを数えては
不満そうに生きるのが得意だ。

そして残念なことにそれに気づいてもいなかった。


幸せというのは、自分が幸せであると気づくこともなく、ちょっとした不平不満をもらしながらも、平凡な毎日を送れることなのかもしれない。

ライオンのおやつ

主人公が余生を過ごすために入る施設に一人で向かう途中、空に浮かぶ飛行機を見つめながらこぼした心の言葉だ。


…はて、これは今の私は幸せということではないか。

いや、まだそうとは限らない。
だってこんなにも悩みはたくさんあるのだから。

そう思っているとき、前の職場のおばちゃんと
ランチに行くことになった。

思考は言葉に表れるものだから、
言われてしまった。
「ないものより、あるもの数えてみたら?」

またこれだ、と正直思った。
そんなにないよ?て。


家族がいる。
雨風しのげる家がある。
寝れる場所がある。
あったかいご飯が食べられる。
貯金がちょっとはある。
話をしたり聞いてもらったりできる人がいる。
楽しく遊べる友達がいる。
悩みを聞いてくれる人がいる。
たくさん名前を呼んで慕ってくれる姪っ子がいる。
読みたい本がある。
話したい人がいる。
会いたい人がいる。
行きたいライブがある。
楽しみで仕方ない未来の予定がある。
行ってみたい場所がある。
食べてみたいものがある。
やってみたいことがある。


あるあるだらけだった。
まだまだあるもの探したらキリがないほど
たくさんあふれていることに気づいた。


自分の命にいつ終わりが来るかはわからないし、
今隣にいるその人の終わりがいつ来るかも
もちろんわからない。

だけどいつ来るかわからないその日に
後悔や未練ばかりをのこさずに、
ちょっとした満足感ももっていたい。

もう楽しみ尽くしたよ、
大事なことはちゃんと伝えたよ、
たくさん幸せ感じて生きたよ、

そう笑える瞬間を過ごしたい。



ないものを数える癖は
すぐには直せないかもしれないけど、
あるものを数える楽しみにも
気づくことができたから、


ふと立ち止まってはこの本を読み返し、
今あるものに感謝して、
今あるものを大事に抱きしめながら
最期のその日まで
なんとなくあの人いつも幸せそうね、って
ご機嫌に生きていきたいな。

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