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9月21日

 最近私は出来て数年しか経たない小さな会計事務所に就職したのであるが、昨日はその二回目の出社であった。横の席の山崎というよく喋る中年過ぎの男は朝から不在だった。教わる人物もなく、また、私のPCのセットアップが未完了であったこともあり、昨日は別の席に座ることとなった。

その席の隣の、感じの良い20代後半の男は私とちょうど入れ替わりで辞めるらしく、そう言われれば確かに今月で辞めるらしい秋晴れのような透き通った笑顔をしていた。

 木下というその男は私の二つか、三つ年上で、スポーツ刈りの髪の下に人懐っこい丸々とした目を備えていた。この会社だからなのか、業界特有なのか、規模のせいか、そんなものなのかは知らないがここには明文化された業務マニュアルがまだ存在せず、そんな中で彼は接待のお茶の淹れ方まで自身でマニュアルを作っていた。一見無駄に思えるようなその行為に、私は彼の誠実さを見出した。同時に私は彼のことが好きになった。

誠実さの本質は恐怖である。社会生活における自信のなさと不安がその愚直な行為には内包されていた。私はそこに安堵した。

「次はどういうとこに就職なさるんですか?」

と聞くと、

「いやあ、それがまだ決まってなくて。ゆっくり友達とYoutubeの動画編集でもやろうかと。30代目前でみっともないですよね。ははは」

と、少し罰が悪そうな返事が返ってきた。しかしそれは使い古したであろう文言だった。

「そんなものですよ。」

と返すと、間髪入れず

「ですよね!」

と返ってきた。

その弛緩した表情に、私は彼の本来の姿を垣間見た気がした。

彼と一緒に食事にでも行きたかったが、就業時間過ぎても一向に帰ろうとしないので、その日は先に帰ることにした。

家についてYoutubeを開けると街録chというドキュメンタリー番組を扱うチャンネルから武道館アーティストMOROHAのアフロ氏の回がおすすめに上がってきた。

MOROHAの存在は少し知っていた。男性二人ユニットのアーティスト、一人はアコギでもう一人がラップという今まで見たことのないジャンルである。彼らのトーク番組か何かを目にしたことがあり、彼らの人間性に興味を惹かれ、試しに曲を聴いてみたが、全く自分の苦手なジャンルで、「ああ無理だ」と思った。

今回番組が取り上げていたのはそのラップを歌っている方、アフロ氏にフォーカスしたものだった。

 少し長くなってまとまりが効かなさそうなので、続きは次回にするとしよう。しばしお待ちいただきたい。

続きがどうしても気になり夜も眠れないというのであれば、
それに関しても、しばしお待ちいただきたい。では。


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