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日本最初の夫婦喧嘩考 2

太古の昔、人は死ぬと黄泉の国にいくと考えられてました。
黄泉の国、よもつくにと言われている場所です。
いさなきはそこへ行き、いさなきは言った。
「愛しき我が妻よ。僕と君で作っていた国はまだ作り終えていないので戻ってきてくれ。」
いさなみは「残念ながら来るのが遅かったわ。わたしは黄泉の国の食べ物を食べてしまったの。」
「愛しきあなたがこんな所にわざわざ来てくれたことは恐縮です。地上に戻れるように交渉してみるわ。」
「その間、決して私の姿を見ないでね。」
いさなきはしばらく待っていたが、いさなみはいつまで経っても帰ってこない。
とうとう待ちきれなくなり、自分の頭につけていた櫛の歯を折って火を灯し、いさなみを探し始めました。


ここは男の悪い所で、我慢や待つことができない生き物でしょうか?妻が待っていてと約束しててですよ。


するとどうでしょう!いさなみの体には身体中に蛆がたかり、雷神が発生していたのだ。
どうして雷神かはわからないのですが、要は想像できない程、醜い変わり果てた姿になっていたのであった。
いさなきはびっくりして、慌てて逃げ出した。いさなみは夫に気づき、「よくも私の醜い姿をみたわね!」
女として絶対見られたくない姿を見られてしまったいさなみは、恥ずかしさに体を震わせていた。「許さない!!」


この話はいさなきが悪いと思います。いさなみが見ないでねと言ったのに見るは、醜い姿を見ると逃げ出すわ、ひどいですね。
現代の夫婦に置き換えるとなるとありえる話なのかもしれないですね。


いさなみは、まずヨモツシコメという黄泉の国の女軍にいさなきを追いかけさせた。
いさなきは必死で逃げながら、いさなきの髪飾りを投げると山葡萄の実になった。シコメ軍はそれに気を取られて食べているうちに、いさなきはその場を逃げ出すのだが、シコメは足が早く、またも追いつかれそうになる。
今度は櫛を投げるとたけのこになった。食い意地を張ったシコメたちはたけのこを食べている間にいさなきはその場を逃げ出した。
これを知るといさなみは千五百人の黄泉の国軍を差し向けた。これに対していさなきは、後ろ手に刀を振り回して逃げ、黄泉の国とこの世の境界まで来るとそこに桃の木があり、実がなっていたので、それを三つとって投げると黄泉の国軍は逃げ去った。

桃には悪魔をはらう力があるのか、桃太郎は鬼ヶ島へ鬼退治に行き、大海人皇子が壬申の乱の時に不破関を通る時に名産の桃を兵士に配り、その地を桃配山と名付けるなど、悪魔や鬼を祓う力があるのかも知れない。

とうとう、いさなみ本人がやって来た。いさなみは黄泉の国と境界に大きな石を塞ぎ、以下の押し問答をした。
「愛おしい私の夫よ、よくもうそをついてくれたわね。だったら私は毎日、あなたの国の人を千人、絞殺するわ」
「愛おしい我が妻よ。お前がそうするなら、こっちは千五百人の子が生まれるようにするよ」
こうしていさなきといさなみは絶縁し、別れることとなった。


一昔前は男は信義に厚く、女はウソをつき信用できないことになっていた風潮があったが、実は太古はそうではないと思わされます。男は外に出れば信義を守るかも知れないが、夫婦間ではウソをついたり、約束を破るようだ。

更にいさなみは意外と暴力的でいさなきは逃げてばかりな所も強い女性が描かれている箇所と思います。
男も逃げてばかりでは無く、山葡萄やたけのこといった食べ物で釣って危機を乗り越えたり、いさなみが千人殺すと言えば、いさなきが千五百人産むぞという知能型である。
喧嘩はいさなきが勝った。知恵は暴力を抑えると言うべきか。

言い合う時も、「愛おしい私の夫」や「愛おしい我が妻」というのも礼儀正しく、愛し合っていた証拠ですね。「お前!」「この馬鹿!」と罵り合わずに相手に敬意と感謝の気持ちで喧嘩すると和解率が高まるかもしれませんね。

神代に自由で逞しく家族を引っ張っていく女性像が現代的で面白いと思いました。

(終わり)

しばらく日本史の夫婦喧嘩考を書いていきます!

これからもよろしくお願い致します❗️

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