言の葉の森のウルスラ

19世紀末からモダニズム以降を中心として、英文学を研究しています。 乱読するので、ここ…

言の葉の森のウルスラ

19世紀末からモダニズム以降を中心として、英文学を研究しています。 乱読するので、ここでは印象に残った本を気楽にアウトプットしていこうと思います。

最近の記事

恋する? アダム. 読書ノート#4

やっと木陰で本を読めるくらいの気候になってきた。 学生の頃イギリスに短期滞在した時、公園とあらば、それぞれ思い思いの格好で本を読む人たちの姿を目にし、驚くとともに、ずっと憧れている。 日本ではロンドンみたいに大きな公園もないし、「できない」と勝手に思い込んでいた。だって、日本の夏はそれどころの暑さじゃないし、そんなにゆったりする余裕がないから。公園で本を読んでる人なんて、あんまり見かけないし、ちょっと恥ずかしいかも。 と、勝手に決めつけていた。 しかし、ここ何年か、気候が

    • ストーリーテリングの面白さ 読書ノート#3

      サマセット・モームの『月と六ペンス』。 10代の頃、読んだ記憶はあるけれど、 内容はさっぱり覚えていないし、 当時の自分には響いてこなかった作品。 題名と内容の関連が分からない。 という、初歩的なところで止まっていた様な気がする。 先日ふらっと入った書店で、一際シンプルな表紙で輝いている様に思えたので、手に取ってみた。 「お、金原瑞人先生訳じゃないか」 敬愛する金原先生の新訳(と言っても、平成26年刊行)だし、 読んでみよう。というわけで、読みました。 時代を感じない

      • 物語は「回答」ではない? 読書ノート#2 Companion Piece アリ・スミス著

        最近はまっている、イギリス現代作家のアリ・スミスの最新作 Companion Pieceを読んだ。 難しいけれど、面白いなあ、アリ・スミス。 作品をすべて読んだわけではないけれど、 スミスの小説には、エキセントリックな登場人物(突然、1本の木に熱烈に恋してしまった短編『5月』の「あなた」みたいな感じ)と、その人物のエキセントリックな行動に巻き込まれながら、冷静に受け止める、これまた癖のある主人公らしき人物が出てくる。これらの登場人物たちのやりとり、会話が、スミスの魅力の一

        • 言語とは。 読書ノート#1『地球にちりばめられて』多和田葉子

          初めましての多和田葉子。 多和田葉子さんを知ったのは、『生まれつき翻訳』という本に言及されていたからなのだけれど、この本を選んだのは、タイトルに惹かれて。 まさにこの小説は、『生まれつき翻訳』。 主人公は日本人で日本語話者だが、舞台はスカンジナビアとドイツ。 つまり、登場人物たちは日本語以外で会話しているはずで、読者は彼らの語りを日本語に翻訳されたものを読んでいることになる。 主人公のHirukoは海外に留学中、母国(日本)が消滅してしまい、スカンジナビアの国々を転々

        恋する? アダム. 読書ノート#4

          "Hello, hallo, hullo" 読書ノートこと始め

          こんにちは! 最近読んだイギリス現代作家、アリ・スミスのCompanion Pieceに、 どんなハロー(挨拶)も、声と同じで、その後に物語が待っている、というような以下の文章があって、このnoteを始めるにあたって、物語が始まるように、挨拶したいなと思いました。(ちなみに今回のタイトル"Hello, hallo, hullo" も、スミスの本のある章から。)物語が始まるって、ワクワクします。 さて、このnoteについて。 いつか、読書ノートや書評を書いてみたい、と思い

          "Hello, hallo, hullo" 読書ノートこと始め