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銭湯通いの思い出 忘れられないたわしおばさん

昨日観た映画で、銭湯のシーンがあった。
私も毎日銭湯に通っていた時期があった。

学生時代の寮には、お風呂がついていなくて、毎日銭湯通いだった。
平成になったばかりの頃のお話。
寮なのに、銭湯に通うなんて、その当時はうんざりしていたけれど、思い出すのは楽しい思い出ばかりかな、いやどうかな。

寮から歩いて10分くらいのところにあった銭湯。

夕方、学校が終わり、寮に戻って夕食後に、仲間たちと銭湯に向かう。
いつもだいたい同じくらいの時間に行く。
そうすると、いつもとだいたい同じ顔ぶれとなる。
その中でも、すぐに思い出すのは、『たわしおばさん』だ。
いつも、顔くらいの大きなたわしで、全身を洗うおばさんがいた。
少し太っていて、おばさんだけどパンチパーマみたいな髪型。
ゴシゴシとたわしで体を洗っている。
たわしで洗うなんて、痛くないのかなあと思って毎回見ていた。
毎日見ていると、もしかしたら皮膚にいいのかもと思ったりして、試してみたくなったけれど、先輩に「たわしおばさんだからできるんだよ。あんたはやめなさい」と、止められた。

たわしおばさんとは、毎日のように銭湯で顔を合わすけど、話をしたことはなかった。
古い銭湯だったので、お湯の温度が高くて熱い時もあった。
水を足して湯加減の調整をしていると、「勝手に水をいれないで」と、たわしおばさんに注意をされてしまった。
おばさんは、熱いのがお好きだったようだ。
皮膚がとても強いらしい。
熱いし、怖くて、すぐに湯船からでた。
それからは、たわしおばさんとお風呂で一緒の時は、髪の毛をゆっくり洗ったりして時間稼ぎをして、湯船でご一緒にならないように調整していた。

見たいテレビがある時には、急いで寮まで帰った。
携帯電話なんてない時代、銭湯に入っている間に気になる人から電話が来てるかもしれないから、急いで帰る先輩を見送ったり。
テスト前に、勉強の時間をとるか銭湯へ行くか迷ったり。
冬でも、早く帰りたいから、洗って濡れた髪の毛のまま、マイナス気温の外を歩いて帰った。
友達や先輩と「寒い」「凍る」と文句をいいながら。
髪が凍っているのを見て、「こんな風呂もない寮にいるのは、私たちだけじゃないか」と、その時はなんだかみじめなような、腹立たしいような気持ちだった。

でも、一人暮らしをして、風呂付の家に住み、好きなときにお風呂にはいれるようになると、広いお風呂に入りたいと、わざわざお公衆浴場・スーパー銭湯に入りにいく。

自由にならない時間や行動にその当時は不満もあったけど、
限られた時間の中で、どう使うか考えて生活していた。
不自由の中の自由について、すごく考えるし、工夫していた。





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