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採用の恋愛学


#創作大賞2024 #ビジネス部門


はじめに 採用と恋愛はおなじ

 映画俳優、ミュージシャン、アスリート、モデル、インフルエンサーetc…
 あなたの憧れる彼ら、彼女らと恋愛、共演、試合など「出来たら!」と誰もが思った事があるだろう。
 それが計画であったり、目的であったり、夢という人もいるだろう。
 チャレンジしていくのか、目指していくのか、諦めるのか、、、
 
 「恋愛と似ていると気付いただろうか」
 
 人気のある企業や業界の求人は憧れる人たち、ライバルが多い。
 既婚者と離婚後、恋人ができたばかりと別れたばかり、では募集状況が異なる。
 人気のある企業(例えば音楽業界、ファッション業界、スポーツ業界)では新たな才能が常に求められている。流行があることと、ショービジネスは飽きられない必要があるので、裏方も含め新卒採用が定期的に行われる。
 既婚者は婚活しない可能性が高いだろうが、離婚後や結婚意欲の高い状態であれば募集している可能性がある。これが退職者補充、つまり中途採用だ。
 例外は勿論あるが、このロジックが就職、転職のベースだ。

 つまり、採用する企業も、応募する求職者も恋愛のようにスペックが求められる。
 採用側と就職、転職活動をする立場の違いを伝え、叶うならば
「ライフワーク」と「ライスワーク」を決める道標の1つになれば光栄だ。

 約束するが、善悪や、べきだという事は言わない。
 将来、当事者だけが決めることが出来る事だからだ。

1章 企業、就職、転職のスペック

 採用側、新卒(就職)、中途(転職)では求められるものが違う。
 ここを理解していない方は意外に多い。
 
 ・新卒=ポテンシャル採用
     Ex:学歴、学部、資格、部活動、趣味など
 ・中途=即戦力、経験者
     Ex:経験・知識、実績(特に再現性があると良い)

 不都合な事実として、日本では「学歴>学部」という公式がある。
 例えば、有名大学英文学部(有名が賢いわけではなくCMが上手も含む)出身が金融機関に入社するようなパターンがあったりする。
 そして職種は「総合職」だ。
 もちろん、英語が重要視されているポジションや、顧客の拡大をはかっていたりするのかもしれない。ただ、数字は苦手な可能性が高いだろう。
 地頭で採用し、教育(基礎知識、専門知識、会社文化など)することを想定する。
 そして学生も同じことを考えて、数字が得意ではないから選んだ学部を忘れて応募したりすることがある。
 よっぽど、企業は教育と軌道修正に自信をもっているか、選んでられないか、OBでもいるのか。
 学生は会社員はプロだということを理解せず、お金をもらうに相応しい知識や資格を身に着けているのかを見直すと良い。

 昔から新卒が3年で30%辞めるというデータがよく引き合いにだされ、これを何時も「最近の」若人は、と当時若者だった大人も口にする。
 そして現在の若者は「そうなのかな?」と思い当たる節を探してしまう。
 上記のような採用選考プロセスや、会社選びをしていれば長く続かないケースがあるのは当然だ。
 むしろ、70%が続いていることに日本人の責任感や、石の上にも3年的な精神的文化が感じられる。

 余談だが、2024年現在、退職代行という仕事が増えている。
 自分で決めた就職先に、自分で伝えることが出来ない、という方は自分の適性を見誤っているかもしれない。
 一人で行えるような仕事が向いているのかもしれない、など見方を変えてみるのも大事だ。

実例①ミスマッチ

 新卒で情報学部出身を採用した。
 情報処理の資格などをもっていない一部のメンバーは、生産技術など経験を積むことが重要な業務についた。
 「なぜシステム開発をさせてもらえないのでしょうか」
 わかる人にはわかるのだが、資格を取得せずにその道に進む人は少ない職種だ。きっと同級生の情報処理部門に進んだ人の多くは保有している。
 

 人手不足といわれる職種だが、努力をする時期である学生に、会社が時間とお金をかけて育成するような余裕はない。
 学校で学んできてほしいのだ。
 採用する時点で、採用側もわかっているのだが、採用辞退など考えると余裕をもった数がほしい。
 このケースでは、ベンチウォーマーとして採用している。
 しかし、試合が始まれば会社に似つかわしくない優秀な人間は他社に引き抜かれ、病気やケガもある。今まで研がなかった牙を研ぐのだ。

実例②希望ポジション

 2024年4月1日入社し、翌日に退職した元・学生がニュースになった。
 退職理由が自分の入りかった部門ではなかったことだ。
 また元・学生は、これを会社に確認したところポジションがそもそも空いてなかったという回答だったという。

 
 この事例には前提がある。
 また善悪や、こうするべきだという事は言わない。
 将来当事者たちが決めることだからだ。

 1:会社側がよく言う「総合職」というのは、「曖昧=会社側に都合がいい」採用であろうこと。ポテンシャル採用は会社が向き不向きを決める、という理解もできる。

 2:元・学生は何故やりたい仕事ができると思っていたのか。
 会社員の業務は会社が決める。これは揺るがない事実だ。

 今は情報がでまわり、会社も学生も真偽を取捨選択して採用している。
 人手不足といっても、「優秀な」人手不足しているだけで、人口が足りていないわけではない。
 自分より、10、20歳以上年齢差のある上司たちに質問してみよう。
 何時の時代も同じだったのがわかる。

 ただし、中途採用になると、業務内容、職種が優先されるので、スキル、キャリアがある人間は選ぶ権利を得られる。
 一時期、「リベンジ就職」という言葉が流行った。

 以上のことは誰も教えない、いや教えられる人がいないのかもしれない。
 
 例えば、学生は就職課、担任の先生に相談することがある。
 その方たちは幾つの企業で働いたことがあるのだろうか。
 面接は何社受けて、何社受かったのだろうか。
 そもそも経験を頼りに就職課へ配属など学校はしているのだろうか。
 
 また、今では一般的になった人材会社が運営するWebサイト。
 学生、中途ともに入り口は違うことが多いが登録して活用するケースが多くなっている。
 中途であればアドバイザーは何回転職しているのか?
 気を付けないと、その人材会社に新卒で入社したアドバイザーにあたる。
 転職の意味や意識や不安や期待を理解できるのだろうか。

 ※人材サービス会社(派遣、人材紹介など)の採用側と求職者側の活用方法はまた別の機会に記載する。
  
 ありがちな大企業の採用担当者のお話。
 まず役割を勘違いしてる方もいるので整理する。
 
 大手企業の採用担当者は、採用決定権をもっていないことが一般的だ。
 各事業部に決定権をもっている人物がおり、とりまとめや自社の方針にそった応募母集団の形成を図るのが重要な仕事だ。
 そのため、採用担当者は自社で欲しい人材や、自社のことには精通している。ぜひ入りたい企業の担当者には話を聞くべきだ。
 ただし、興味がない企業の場合は、情報の比較対象の1つとして客観的に接してもらうのがお勧めだ。

 中小企業の採用担当者は、決定権を持つものがいる。
 役員が行っていたり、社長が行っている企業もある。
 その為、採用担当者との相性が重要だ。  

実例③認知度による採用の違い

 私が所属したことのある企業は、認知度が国内で非常に高く、多くの情報媒体などを通じ、日本国民のほとんどが何かしらサービスを見聞き、使用してくれている。
 グループが何十社もあるが、ある日、その1つでエンジニアの中途募集を私は手伝っていた。
 私が採用決定権をもち、転職フェア出展と説明もしていた。
 エンジニアは理系出身者が多く、IT系は兎も角として機械や電気電子は圧倒的に男性が多い。
 ブースには男性が増えるのだが、女性も座って下さる。
 自社や求人内容を説明する、質問があればと促すと、
「旅行とか出版の求人はありませんか」
 人気業界にある有名企業はコマーシャルせずとも応募が来る。

 そして、残念なことにOEM製品の企業や、世界一のシェアや技術をもつ中小企業は応募者集めに認知度を上げる必要がある。
 知ってもらわないと良さを伝える場面がないからだ。
 この点を考えて企業はTVCMを掲載したりするのだが、残念だが知名度が売上や採用に良い影響を及ぼすことを理解していない経営者は多い。
 また、営業や販売部門出身者で理解していないことは、ほぼないはずだ。

第2章 新卒採用の裏側(企業サイド)

 企業の採用には、一般的に新卒と中途採用がある。また、時期的採用もあるが期間限定が混じるのでここでは記載しない。
 新卒採用の裏側からお見せしよう。
 
 ここでは大卒を例にとって説明する。
 高卒の採用はまったく法律から異なるからである。
 え!?と思った方がいると思うが、高校生を大卒や専門学校などと同様の手順で採用してはならない。違法にならないように気をつけましょう。

 採用するツールや選択肢は、学校に直接、就職を扱っているWebサイト、人材紹介会社、あとはコネクションとなることが多い。
 大学からの推薦ではバーター、つまり優秀な学生と苦戦するのがわかっている学生を抱き合わせも相談がでることがある。
 さて、面白いのは新卒を紹介会社から採用するパターンで昨今のトレンドの1つだ。
 今日現在(2024年7月)で使用していない企業担当者は利用を検討するのをお勧めする。
 他社が使用していること等、全く知らない担当者はまだ多い。
 ※向いていない職種もあるので、後述する
 
 メリットはわかるであろうか?
 1:説明会開催頻度の低減(特に地方採用)
 2:書類選考のスピードアップ、簡略化
 3:募集広告費の無駄うち削減
 4:上記にかかる人件費、工数の削減

 ちなみに、簡単なデメリット。
 1:他社に紹介料が負けると紹介が減ってくる
 2:広告を出さないので、認知度、知名度があがらない
 3:採用数が少ない、採用難易度の低い職種であると割高になる
 4:採用ハードルが高いと紹介される人が減ってくる

 上記以外にも各社の事情で異なったりするので、簡単な条件を以下に記すので金額をだし、比較してみては如何だろうか。
 1:採用したい人の初年度年収を決める
 2:紹介会社に紹介利率の確認、交渉
 3:Webサイトで自社が出す掲載料金
 4:採用担当者の出張金額
 5:就職フェアの出展料
 
 余談だが、ハローワークで採用しようとするのは勿論コスト面で必要だが、大学生は一般的にWebサイトの登録を就職課などから案内をされているのが普通なので、ボタンで一括三桁の会社に応募できるような状態だ。
 また苦しいのが、受付担当者の好みや意向があり、運が悪いと受取ってもらえない等も発生する。

実例④紹介予定派遣

 世界的大手自動車部品メーカーでは、紹介予定派遣を導入した。
 人事が技術部門へ導入する経緯を説明するのだが、アドバイザーとして取引先でもあるに関わらず私も同席した。
 人事も現場もある課題をもち、解決策の模索をしていた。
 その課題とは、、、
 「経営陣が新卒社員を好みで採用してしまう」問題だ。
 ??と感じるかと思うが自動車業界は男性が圧倒的に多い。
 女性が車への関心が男性ほど高くないことと、今でこそ電子部品や樹脂部品が増えているが以前は鉄や鋼やゴムなど大きく、重く、しかも工場は暑かったり匂いがある。
 この会社は上層部がお嫁さん候補の採用になっていて、人事がフィルターをかけた優秀な女性社員は入社できないことがあるという。
 そのため、紹介予定派遣を利用して部署判断で社員雇用をしたいという「質」向上の為に人事が考えた妙案だ。
 私もその企業に何度も行ったが、立派な建物に受付があり、その受付には茶髪、金髪の女性がネイルのついた爪をいじりながら、来客があっても座ったままで挨拶もしなかった。声をかけるまで、顔を向けようともしない。
 しかも3人座っていて、3人全員がだ。
 この会社大丈夫かな?というのが私のイメージだったが、この人事の手法は実は大成功して、大手企業に相応しい対応に代わっていた。
 補足だが、ポイントは来客時のマナーであって、髪の色やネイルは皆さんにイメージしてもらいたく事実を記載したが不快感を感じるか否かは人による。私は職種によるが清潔にしていれば問題とは感じない。

第3章 新卒採用の裏側(求職者サイド)

 Webサイトから一括応募ができ、アプリ、Webサイトで質問に回答すると履歴書、職業紹介がつくれるなど、没個性を促進する時代だ。
  求職者も人材紹介会社へエントリーして、企業紹介を受けることがある。
 これについては注意点がある。
 1:紹介会社から面接や書類のアドバイスをもらう
 2:自分が応募したい企業へのエントリーで紹介会社を利用
 3:彼ら彼女らは入社してもらうことで売上があがる

 2,3について説明しよう。
 某大手人材紹介会社では、残念だが企業側にスクリーニングせずに紹介を行っており、採用側企業には、募集要件を満ちていない人材が大量に送られている。
 2のように、もし自分の希望する重要な企業に他の学生と一緒の一括送信をされている可能性がある。
 → ちなみに、採用側からフィルターについて紹介会社に問い合わせた回答が、「本人が希望したから」だ。
 こういう会社はけっこうあるので、注意をしたほうが良い。

 もう1つ、3だが、紹介会社から「この会社を応募しませんか?」と推薦されることがある。
 推薦をAIにやってもらって一斉メールがキーワードで選択された人に届くパターンがあるので、真に受けてもダメだ。
 新しい自分を知る機会や、目を向けていなかった業界・職種に気付くのも良いことだ。
 しかし、ビジネスであることを忘れてはならない。

実例⑤甘い誘惑

 大量採用する企業は、ひょっとしたら離職率が高い企業かもしれない。
 間違いなく、紹介会社の上顧客だ。

 また、文系から始めるエンジニア、年収●●万、嘘ではないと思いたいが1人でもいれば嘘でなくなるのも事実。
 ある急成長中の企業が、大手企業の子会社を買収した。
 翌年、その企業の先輩の出身大学に一流が並ぶことになった。
 買収した企業に元々いた社員の学歴を記載できるようになったのだ。
 先輩社員がいることで、出身学校へのアプローチも非常にしやすくなる。
 ここの経営陣たちは気付いていなかったようだが、本当の採用戦略とはこういうことを言う。

 ついでだが、アプリやテンプレの文章は、知識のある採用担当者は気付いていると考えたほうが良い。
 私も自分で試し、どのような回答がでるかパターンを知っている。

実例⑥オンライン面接

 求職者で今回これを読んでいる人はLuckyと思うかもしれない。 
 ある大手化粧品メーカーでは、1次面接をオンラインで行う。
 その際、立って全身を見せてほしいとリクエストがある。
 自分の人生を決める大事な面接だ。
 いかなる相手にも失礼のないように気を配ってほしい。


第4章 中途採用の裏側(企業側)

 個人的には採用の腕や面白さ、妙が出ると思うのがこれだ。

 1:年齢
 2:スキル
 3:キャリア
 4:条件

 採用する要素が一気に新卒より増える。
 そのため、上手でない企業は本当にうまくいかない。
 しかも採用手法はこの書面のように、公開されてないので他社が何をしているのか、表に出にくい。

実例⑦採用単価


 人材派遣業界で製造派遣、1人当たりの採用にかかる広告単価を例に。   
 ・ある大手外資系企業:15万、月約20人程度の応募者。
 ・同業の国内のトップ企業:70万、月約1000人程度の応募者。
 人材紹介・派遣会社の採用=会社力そのものだ。提案できる豊富な資産。
 また、冒頭でも書いたが、「採用は総合力」だ。
 これだけ同業で差があるにも関わらず、お互いに実力差を知らない。
 自動車は国内販売台数がニュースになるが、人材はならないからだ。
 私は上記の2社を詳しく知っているが、外資系企業側はこの差を認めたがらず、理解させるのに約2年かかった。
 こうして外資系企業は2010年くらいに日本に進出して以来、2024年現在国内シェアを下げ続けている、つまり負け続けている。
 トップの企業は右肩上がりの業績を続け、同様に2010年頃は業界で知名度も話にでないようなところから、2024年は業績が10倍以上になっている。
   ちなみに両方の企業ともに同期間に社長は交代していない。

 本文に戻る。
 1は、人口ピラミッド構築の失敗、教育能力不足、他社に引き抜かれた、といったネガティブ要素が中心になることが多い。
 バブル崩壊、リーマンショックなどの度に採用を控えたため、すっぽり抜けている。これは経営者の方針と覚悟の問題だ。
 抜けている世代が本来なら教育担当をしてほしいのだが、ご存知のように「失われた10年(人によって20年)=ロスジェネ」がいないのだから、若者を採用しても「OJT」という実務で教育と謳う。
 また今さら国会で議論されるようになっているが、賃金を上げてこなかったツケが他社への引き抜きを止められない原因になっている。
 「自社の優秀な社員が他社でも魅力的に映る」という市場原理を意識してないからだ。
 日本企業は窮地に立っていたからしょうがない、金利を上げると連鎖倒産してしまうから上げられない、2024年でようやく経済に関心のない方の耳にもメディアを通じて聞かれるようになったと思う。
 しかし、内部留保(企業の貯金)を見れば資金を貯めたが効率的に使っていないことがハッキリわかる。
 2020年コロナ禍があったが、2021年は前年度比6.6%増の516兆!
 2022年も過去最高を更新。
 ちなみにバブル崩壊する1990年代140兆円ほどだったのに、約3倍!!
 売上が3倍になった大企業は幾つあるのだろうか。
 経済がテーマではないので細かいことは省略するが、リーマンショックでもコロナ禍でも、雇用を守る為、政府は助成金を支給している。
 助成金をもらいながら、従業員を解雇したり、有期雇用者を雇止めして貯金している大企業を幾つも知っている。また国内では批判や需給できないので海外の工場で数千人から数万人の雇用を失くしている企業もある。

 こうして客観的なデータをみると、本当に悔しく、残念に感じる。

 2は欠員補充、増強が主な募集要件だ。
 また、良い事例として「新規事業」がある。
 新しいプロジェクトを立ち上げ、加速させるために外部から人材を求める。攻めの採用だ。
 この募集は普通にWebサイトに求人をだしても集まりにくい。
 優秀な人材はその企業で必要とされているので、転職活動を積極的に行う必要がないからだ。
 つまり、基本は「ヘッドハンティング」だ。
 ヘッドハンティングは人材紹介会社が言う「スカウト」とは違う。
 紹介会社のスカウトは、名ばかりで、ただのDM配信なことが多い。
 (これは求職者も理解しておこう。目立った成果を出してないのにスカウトが来てもDMだから実際の転職にはあまりつながらない。数をこなすのが必要になってくる)
 ヘッドハンティングは、得意にしている会社がある。
 一般の転職者市場と違って、案件に限りがあるので大手のように名が通っていないことがある。
 付け加えると、一般の大手紹介会社では集めるのに苦戦する。
 扱う年収が300~600程度が多く、サイト自体のイメージがターゲットと会わないからだ。
 この市場には大手人材紹介会社も2021年を超えたあたりから、ハイクラス転職といったエグゼクティブや優秀層を狙うプロジェクトを始めている。
 私が以前所属していた大手人材紹介会社では2017年にはパイロット版を立上げていた。
 2024年現在は、TVCMで毎日有名俳優が出ているまで成長している。
 補足で、もう1社大手人材紹介会社もこの分野に進出して、TVCMも毎日有名俳優にでてもらっている。
 両方とも所属していた事がある会社なのだが、後ろの企業は担当者たちが経験が浅く、エグゼクティブやハイスキルと会話するには正直力不足だ。
 他にも大手、中小企業は進出が続いているのだが、先に始めた企業と担当者の教育や知見・経験に差があり、会話すると学びがなくて退屈な感覚を覚える。
 これはファストファッションを扱う販売員が、デパートで接客するのと同じことだと考えるとわかりやすい。
 顧客の層が違う為、説明する内容も時間も質も違うからだ。
 もちろん、何年かすると経験を積んでいる担当者たちが立派に活躍していることと思うが、それぞれの担当者の「今」なのかを見極めてほしい。
 
 一番厄介なテーマが3だ。
 
 「自社にいない」優秀な人材を確保しようと思ったら、自社の給与水準では採用できないこと理解する必要がある。
 しかし、歴史ある企業ほど「給与ピラミッド」という古き良き時代の習慣が残っている。いわゆる、年功序列、社歴だ。
 ここで企業の言い訳は「うちの会社で貢献していない」だ。
 そして、「バランスがある」だ、
 自社の出来ないことを、出来る人物と比較する事自体が理解に苦しむが、この「恒常性(ホメオスタシス)」が働く。
 断言する。
 「明日より大事な昨日はない」。
 
 欲しい人材は業界が一緒であれば、似ている事が多い。
 例えば製造業における研究者でカーボンナノチューブ、Qカーボン、等に知識・経験だ。
 この分野の研究開発は「喉から手が出るほど欲しい」企業が多いだろう。
 同時に、このような人材は所属先で活躍し、「辞める」ことも頭に浮かびもしないことが多い。
 つまり、「辞めてまで、ウチに来たい」と思ってもらう必要がある。
  
 重要なので、丁寧に説明する。
 ・一般の転職サイトは、現職の企業、人間関係、給与(条件)に不満を
  感じている人が改善もしくは、向上するために利用することが多い。
 ・エグゼクティブはサイトを利用することが自体がほぼない。
  豊富な人脈でお誘いがあるからだ。
 ・ヘッドハンティングに該当する人は、充実した設備で働きたいことや、
  不明瞭な人事異動にあってしまった人(意外に多い)、ある程度の成果  
  を出して惰性になっている人、などがターゲットとなる。
 
  たまに一般の転職サイトに、300~1000万も可能!という求人をみる。
  主ターゲット層からみると「怪しい」と感じられる事が多いだろう。
  反対にヘッドハンティングの求人で、400~700万、というものもある。
  700万の人材はその会社にいるだろうから、退職者の穴埋めであり、戦略や重要なプロジェクトではないと目に映る。

  大事なのは、人材は顧客だということだ。
  自社を盛り上げ、活性化させ、利益を与えてくれるのは従業員だ。

  

実例⑧週末講師は勝ち組

 某大手電機メーカー社員が週末に、隣の国へ行き技術指導をしていた、と いう事があった。有名な話の1つだ。
 その企業は報酬が安すぎると宣伝されているようなもので、きっと悲しかっただろう。
 この話の延長戦で、大きな社会的な話題になったのが、その講師たちの引き抜きだ。
 「金に目のくらんだ技術者が、海外企業に行って、技術を取られたらポイ捨てされる」というニュースが良く出ていた。
 大きな間違いである、これは絶対に信じてはいけない。
 この話を出す人たちはヘッドハンティングをされていない人たちだ。
 実際はこうだ。
 だいたい、1.5倍を下限として条件提示を受け、欲しい人は年収5,000万、本当に必要な人は年収1億円というのが私が知っている事実だ。
 なぜ知っているか?
 海外へ行った技術者を採用したことがあり、また、ヘッドハンティングしたい企業からのオファーも実際に相談があったからだ。
 ちなみに、私が知る海外へ某企業からヘッドハンティングされた技術者は4~5年位で日本へ戻ってきた(先述のポイ捨てと言われるものだ)。
 しかし、元から優秀なので声がかかる人材である。
 当時50歳の彼は、機構設計の求人に年齢オーバーだが応募し、私は経歴をみて直ぐに採用した。
 彼の力量とあわない給与だが、募集条件で応募していたので給与に不満は出なかった。 
 なんて幸運なんだと私は思ったし、また、しぶしぶOKを出してもらった現場も後から喜ぶことになる。
 彼は製品の質を理解すると、あっという間に頭角を現して後輩メンバーの指導をしながら実務にあたってくれた。
 少しでも給与条件を上げやすくし、残ってもらえるように工夫を私たちは行った。
 そして、2年程度経った頃、他社の優良条件を受けて去っていった。
 こういった例は、50後半のシステムエンジニアを採用したり、嘘みたいな本当の話だが、マサチューセッツ工科大学の元研究員をやはり50過ぎで採用したことがある。
 どなたも優秀で、特に最後の元・研究員は私と一緒に働く技術者たちにも「本物」を教えてくれた。
 幸いなことに、私は運が良いだけだと思っていたが、何れの方からも退職後にお礼が伝えられた。
 日本ではヘッドハンティングと転職の区別がついていない企業や採用担当者、紹介会社も理解していないことがあるのが良くわかる。

第5章 中途採用の裏側(求職者)

 中途採用はチャンスであり、悲劇だ。
 容赦なく、自分と向き合わないといけない。
 履歴書・職務経歴書というカタログスペックを創り出したは人生だ。
 
 最初の就職活動は恋愛だ。
 わからないながら手探りでも一生懸命、楽しさ、難しさ、ワクワク等を知っていく。
 就職してから、お付き合いが始まる。
 趣味は会うか(経営方針、注力するところ)、デート代はどうか(金銭感覚*給与、投資)、清潔感・服装(職場環境、時間や服装の自由度)、人間性(人事の内情、離職率)。
 そして、転職は新たな恋を探す行為に似ている。
 
 ここで、アドバイスをしたい。
 「再現性の可能性がある理由で転職はしてはいけない」
 
 以下は代表例だ。
 1:上司部下の人間関係
   転職した時に良くても、異動や出世で変化する可能性がある。
   →防御スキルを身に着けてから検討するのをお勧めする。
 2:給与が上がらない
   業界自体が上がっているのか、自分以外は上がっているのか、という  
   点を確認してから考えよう。
   →そもそも給与が上がらない職種で働いている可能性もある
 3:迷っている
   →受かった会社があってから比較しよう。
   そして、再現性など紙に書き出してみることをお勧めする。
   可能な限り、客観的、正直だ。

 そもそも、気持ちで決めるなら、本書に時間とお金をかけなくて良い。

  人材紹介会社にも注意が必要だ。
  彼ら彼女らは、あなたが転職&入社すると報酬を受ける。
  つまり、決まりやすい企業、決まりやすい職種、大量採用が「美味しい」案件3大要素だ。
  基本は、離職率が高い  or  ガンガン成長している企業が求人が多く、しかも入社要件が低い傾向がある。
  選び過ぎると採用が進まないからである。

  気付いた方もいると思うが、もう一歩踏み込むと、人気企業 or 条件の良い企業では、従業員が「仕事が嫌でも離職率が低い」。
  某大阪の自動車メーカーはきっと地元では入社したら「勝ち組&大企業」だろう。
  その肩書と報酬の「蜜」が、違法行為を何十年も続け、外部にも漏れず、延々と続いた理由と推察できる。
  というのも、私が知っている約5,000億売上の自動車部品メーカー役員から、法律を搔い潜る試験を行っている事実と、その役員が改めるよう意見をしていたと聞いていた。
  残念ながら、それは2015年位の話で、世間にニュースとして流れた2023年末まで、8年は続いている。
  しかも私が知るより悪い内容だった。
  加えて、私が知らないだけかもしれないが、その自動車メーカー従業員が大量に離職したような話は聞いていない。
  下請けは仕事が止められた上に在庫を保管させられ、期間従業員や派遣社員は期間満了になっているというのに。
  条件が良い、というのは人によって大きく意味がかわるが、求人が少ない企業と多い企業のイメージは何となくできただろうか?

 ここに、もう1つの選択肢「ヘッドハンティング」とは混同しないようお願いしたい。
 ヘッドハンティングか一般求人なのか判断しかねる、個人事業主のような1~数人程度の人材紹介会社が無限に近く存在する。
 特に1人で行っている会社は、きっと正確なデータが世の中にない可能性がある。
 人材紹介は免許取得こそ国の許可を取らねばならないが、派遣や請負などと異なり、業務負荷は非常に低く、ノウハウもあるに越したことはないが、まったく無くても取引先があれば出来てしまう為、人材ビジネスとしては参入障壁が限りなく低い。
 取引先を見つけるのは大変では?
 普通に考えると営業スキルが必要だが、自分が所属していた会社に契約をしてもらえれば、本当に誰でも出来てしまう。
 例えば、定年などで会社を辞めた方が、定年で辞めた会社で求人を知っていて、友達の息子が仕事を探していると聞いて世話をしてあげた。
 免許と契約書が揃えば、もう完璧だ。
 店舗を開いたり、弁護士や会計事務所のような法的免許の取得難易度を考えると、何時でも簡単に個人が始められ、しかも規模を大きくする必要がなければイージーだ。
 所属していた会社なら、仕事の内容や文化を知っているので説明できる。
 給与なども肌で感じている。
 求人広告は依頼すれば、サイト側がAIを使って文章を作ってくれる。
 大事なのは免許と、必要な契約書。
 しかも、契約書は人材ビジネスは法律である程度決められた文言を入れる必要が決められている為、フォーマットは無料で手に入れることができる。
 こういった会社は、所属していた会社にはエグゼクティブ採用から、一般職までの案件をもらっていることが多い。
 ただし、営業力はないので他の企業案件に乏しく、提案もできない。
 こだわりの業界がある場合は、有効なことがあるが、あなたのパートナーには相応しくはならないのが本音だ。

実例⑨未経験で目指す

 自分の入りたい企業、職種に社会人になってから気付いたり、魅力を感じるようなことは勿論ある。 
 この時、年齢・資格・経験がネックになることが多い。
 「未経験はどうすればよいのでしょうか」
 よく出る質問だ。
 資格は調べて取得を検討してほしいが、経験はお金では買いにくい。
 経験を重視した求人が多いのは当然なので、少しでも箔をつけるため、人材派遣で未経験案件を利用するのは有効だ。
 世間で思われているより、このパターンで希望を叶える人は多くいる。
 注意点としては、年齢と経験値は基本比例する。年齢が上がれば、相応のポジションの求人が増え、経験値や実績も増えてなければ成功しにくい。
 また、未経験案件の人材紹介は余り考えないようにするのをお勧めする。
 (業界が未経験で、職種についての経験者は検討できる)
 未経験中途を募集する理由に不安を感じる。
 新規出店、新規事業などはわかるが、新卒やアルバイト・パート、もしくは派遣で仕事に来ていただくことも可能な時代に、未経験で採用しようとするのは、2024年の若者風にいうと「タイパ(タイムパフォーマンス)」が悪い。
 教育→成果を出す時間が減るからである。
 筆者の経験では、何らかの理由で離職率が高い企業が多い。
 新卒まで待てない、アルバイト・パートで来てもらえない、ノウハウの問題で社員にやってほしい、など理由も考えられるが、、、。
 余談だが、アルバイト・パートも職歴上実務経験である。
 知っている人もいるのだが、大手の食品メーカーや飲食チェーンなどではパートの方がリーダーや店長をしているという事がある。
 雇用形態と能力はあまり関係がない。
 しかし、企業の採用担当者や経営陣には、自分が転職経験がない、アルバイト経験が少ない、といった時に誤解をしていることが多い。
 アルバイトやパートも責任がある仕事であれば、しっかり職歴に!
  

第6章 募集と応募者

 ここで記載する内容は、経営層にこそ知ってほしい。
 「採用は、会社の総合力だ」
 →「モテる」とイコールだ。
 
 人気アイドルをプロデュースするように、イメージ戦略と選択と集中を図る必要がある。
 人数は1人か、3人か、5人かそれ以上か。
 ビジュアル勝負か、ダンスさせるか、歌は上手いか。
 トークは上手いか、堅実か、失礼がないか、マナーを身に着けているか。
 努力は出来るか、遅刻はしないか。
 衣装はクールか、キュートか。
 メイクやヘアスタイルは、モダンか、スタイリッシュか。
 宣伝は、動画、音声、SNS、TV、雑誌か。
 タイアップは可能か、可能なら食品か、美容関係か、家電か。
 
 企業に言い換えるとこうなる。
 採用は何人だ、従業員を何人にする。
 営業か、技術者か、生産管理か、情報処理か。
 誠実か、言動が信用できるか、清潔感はあるか。
 インフラは整っているか、自動化は進んでいるか、在宅は可能か。
 危険はないか、匂いはないか、清潔か。
 認知度はあるか、知名度はあるか。
 納品先は、B to B、B to C? 
 
 モテる企業であるならば、
 業界内でのランキング、人材育成力、優位的条件、ライセンス、
 国内・海外展開、キャッシュ、ストックオプション、どれも大事だ。

 新卒は、RPGゲームのように武器とレベルを上げる。
   恋愛でも、戦国でもシミュレーションゲームでも良い。
 ファッション、マナー、専門知識、お金、人徳、話術など武器と経験値を増やす。
 資格という名の「勇者の剣」でも良い。
 また、学歴で面談部屋の入口が異なる事に不満を言ってはいけない。
 入口を選べる武器や経験値を既に積んでいるものたちと、スタートで差がついているなら追いつくように努力しよう。
 また、選ぶのは自分ではない、他人のルールに加わるのが企業だ。
 変革をもたらすのは、入社後だ。
 
 中途採用は、これらに実績や成果というアクセサリーをつけよう。
 このアクセサリーは身長のように自由にできない。
 しかし、信用情報のように、本人が気づいていない宝も掘り返そう。
 (信用情報のような真の最重要事項を一般社会は教えてくれない。知らないのは、私もそうだったが、自分の甘さを噛みしめてほしい)
 
 魔法を身に着ける為の努力は、「忍耐強い」というスパイスに代わる。
 恋愛であれば、「センスの良いアクセサリー」だ。
 個性的であると人気者にはなりにくい、万人受けするものが良い。
 例えば、「皆勤賞」だ。
 体調と勤怠は本人の管理事項で会社は影響を及ぼすことが出来ない。

 実例⑩採用の熱量

 この執筆中に、たまたま有名大手企業2社から採用部門でオファーをいただいた。
 1社はIT関連企業で人材紹介会社を介しており、そこで働くエージェントの中身や従業員を私は知っているので、依頼した会社は正解だと感じた。
 従業員向けと、ハイクラス・エグゼクティブ層と接するエージェントが部署で分けられているので、理解や事情を察するのが早く、説明が楽だ。
 もう1社は金融系で、自力でハイクラス・エグゼクティブ層を採用する力を強化するために、まだヘッドハンティングなど経験がない担当者が直接コンタクトをとって来てくれた。
 慣れていないのだからしょうがないのだが、通常の従業員採用と異なり、年収や権限、などオファーした会社がシビアに品定めされる立場という理解がないようだった。理解がないので募集をするのだろうが、これが生みの苦しみだ。
 有名大手企業になると求職者が振り向いてくれやすくなる為、採用担当の腕が特別良くなくても一般職は比較的楽に入社する。
 ブランド構築する投資がハッキリと効果をだしている。
 反対に自分たちが品定めされる立場になれていない。
 少し前だが、DXを打ち出しており、TVCMを行っている企業からも新規事業立上のオファーがあった。
 メールで担当者とやり取りをしたが、お会いする前にお断りをした。
 当初、部長とやり取りしたのだが、課長と会ってほしいと依頼があった。
 申し訳ないのだが、どこの企業からもオファーは役員が休日や、夜間であっても新幹線など乗ってでも会いに来てくれていた。
 企業規模もこの会社が1番小さかったのだが、他の企業は同規模やそれ以上であってもだ。
 これも不慣れなのか、熱量の問題なのか
事情はわからないが人が会社を作ることに対して無頓着な可能性が高いと判断した。
 この経験から、私が採用したい人材に関しては、その時の最大出力をだすように調整している。

第7章 採用の恋愛学

 採用と求職者、恋愛と似た要素が構成しているのを理解できただろうか。
 企業は「法人」と記載される事があるよう、「人」だと考えると素直だ。
 
 企業も求職者も「人」である以上、不確定要素は必ずある。
 重要なのは、「魅力的」である事だ。

 個人で仕事をするにしても、情報、サービス、製品など何かしらを商材として創り出すことになる。
 「魅力的」というのは煌びやかでなくてもよい。
 誠実であったり、勤勉であったり、フットワークかもしれない。
 地味だとおもっている企業も、創立年数が長いのは堅実な証明だ。
 
 覚えておきたいのは、「伝える」工夫だ。

 認知度を上げなければ、お互いに気付くこともない。
 であるにも関わらず、取り組めば必ずできる。               



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