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米大統領選挙が気候変動対策に及ぼす影響

1.   現時点での大統領選挙の状況について
2024年の米大統領選挙が昨今注目を集めていますが、先日トランプ氏が共和党の大統領候補の指名を正式に受諾し、共和党大会では副大統領を指名しいよいよ体制が整い、加えて先日の暗殺未遂事件を受けてトランプ氏が優勢な状況が続いています。

トランプ氏の優勢

Trump Widens Lead After Biden’s Debate Debacle, Times/Siena Poll Finds - The New York Times (nytimes.com)

2.   バイデン大統領の失態、カマラ・ハリスの不人気の背景
バイデン大統領においては任期中、インフレの進行やアフガニスタン撤退の混乱などが批判を招いていましたが、は米大統領選討論会にてかねてから指摘されていた老齢の問題が露呈し国民に広く問題視され批判ならびに撤退論が過熱しました。バイデン氏は当初はこういった批判がありながらも大統領選挙に参戦する意を示していたものの、7月21日に民主党内からの圧力を受けて撤退することを決定し、後任として副大統領であったカマラ・ハリスが指名されました(特にバイデン派という訳ではありませんが半世紀もかけて政治家として勤めた最後がこれとは少しかわいそうです・・・)。では、後任として指名されたハリス氏がどうなのかというと、政策運営やコミュニケーションにおいて一部の有権者から厳しい評価を受けており、決して盤石とはいえず、なんならトランプ氏からも “より勝ちやすい人に代わった”と余裕綽々なコメントを残しており、実際にメデイア各所もトランプ氏の優勢を報じています。


ハリス候補でもトランプ氏優勢


Does Kamala Harris poll better against Donald Trump? | The Spectator

3.   トランプが打ち出す気候変動対策絡みの政策
トランプ氏がどうかという点は様々な観点があるため、日本人である私の意見は割愛しますが気候変動対策絡みでどういった影響があり得るのかについて少し視点を向けたいと思います。こと気候変動対策においては民主党・共和党は真向から対立しており(日本の政治家の政策の濃淡の違いさえも分かりにくいのよりもよっぽど分かりやすくて助かります)、ことバイデン大統領は4年前の就任当初から気候変動対策に積極的に取り組む姿勢を示し、2030年までに温室効果ガス排出を50-52%削減する目標や、2050年までにカーボンニュートラルを達成する計画、また再生可能エネルギーへの投資を拡大し、インフラのグリーン化を推進するために2兆ドル規模の予算を計上しこの大胆な政策は、国内外で高い評価を受けています。ではトランプ大統領候補はどうなのかというと遡ること、2015年に締結された気候変動対策の新しい枠組みであるパリ協定には2017年に脱退したことが象徴するように気候変動対策よりもアメリカの経済成長を掲げ、今回の大統領選挙においても候補として電気自動車への関税撤廃、アメリカ国内の石油や天然ガス資源の再開発を推進し、途上国の再生可能エネルギー転換の財源になり得る国際機関への拠出金削減を提案しており、国際的な気候変動対策への影響を懸念させています。

4.   国際機関への拠出金
特にこの国際機関への拠出金が気掛かりで、現在、途上国が必要とする気候変動対策のファイナンスは膨大であり、IEAやIMFなどが各機関が各国がネットゼロに転換するために必要な金額を試算しておりますが、これら金額は各国の国家予算を大幅に超えるような金額となっており、実行にあたっては外部からの資金供与が必要不可欠な状況となっております。とりわけ国際機関は重要な役割を果たしており、2010年代より途上国に流入する資金は民間が金額としてはこれら国際機関を超えるようになってきたものの、依然としてこれらの資金が途上国のプロジェクトを実行する上でのファーストペンギンとなっており、国際機関の資金が足がかりとなりプロジェクトの実行可能性を証明して、ある程度リスク予測が立つようになり初めて民間企業途上国が流入するような仕組みとなっており、気候変動対策を実施するための重要な触媒となっています。トランプ氏の政策により、これらの国際機関への拠出金が減少すれば、途上国の気候変動対策が大きな影響を受けることが予想されます。

5.   まとめ
インフレなどの影響で、多くの国々で国民が苦しんでおり、この状況下、まずは国内のことに集中し、余裕ができたら外に目を向けるという考え方も理解できます。しかし、日々の生活で感じる猛暑や異常気象が示すように、気候変動の危機は迫っており、もし現状のまま進めば、2050年には人類が取り返しのつかない事態に直面する可能性があり、今の30代以下の世代は、これらの問題に正面から立ち向かう日々が訪れるでしょう。その時、問題のツケを極力小さくするためにも、世界のリーダーであるアメリカの大統領には長期的な視点で国際社会の成長を見つめリーダーシップを発揮してほしいと願っています。

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