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【茅葺き民家改修記 vol.2】2002年8月

29歳の僕が田舎暮らしをすべく
ある村の茅葺き民家に出会い、自分で直し、住むまでの話。

雨漏りは不幸の始まり

ってことで茅が落ちて大きな穴が空いている屋根にシートをかけました。
人が住まなくなった家というのは驚くほどのスピードで朽ちていきます。まずは水を断つことが課題でした。
大きなブルーシート(結構高い)をロープで引っ張って留めました。

余談ですが

茅葺きの家は囲炉裏やかまどで火を焚くことにより、その煙で乾燥・防腐・耐久性を確保してきました。
燻された茅葺きの屋根は10年以上もつとのこと。
薪から灯油・ガスへ、生活様式の変化とともに維持補修にお金や手間がかかる茅葺き屋根がなくなったのは宿命なのかもしれません。

ご近所さんの屋根の葺き替えを手伝いました

茅(カヤ=ススキやヨシ)を毎年刈り集めなければならなかったり
煙で屋根を燻さなければならなかったり
結局、維持することが困難で鉄板で屋根を囲ったり、解体したりして
茅葺き民家は本当に貴重なものとなりました。
しかしながら
茅葺き民家の自然に溶け込んだその美しい佇まい。
屋根に含まれた水分が蒸発するときに奪われた気化熱で家の中はクーラーがなくても涼しい。
屋根の葺き替えではお互いが手伝い合ってコミュニティが生まれる。
決してノスタルジーの一言だけではない何かがありました。
葺き替えで出た古い茅はすべて良質な肥料として土に還る。
むむむ、現代社会の課題に一石を投じているという皮肉。
そんな茅葺き民家に心奪われてしまったのです、僕は。

まずはすべて出す

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腐った床も全部解体

さて作業に戻ります。
大学時代からの友達に手伝ってもらい、廃材やゴミを外に出しました。
目に見えて作業の達成感があるのは充実感を生みます。
家の中の家財道具、小物、など懐かしい道具や、左官の鏝などの大工道具が多く残っており、この家の主人が自分で家に手を入れて住んでいたことを偲ばせます。
炊飯器のふたを開けるのは少し怖かったけど(笑)
廃材を出し終えた家には気持ち良い風が通り、家全体が湿気を吐き出し乾き始めました。
腐りゆく廃屋が改修を待つ家に変わりました。

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奥には解体現場でもらった便器が・・・

今思えば

家を手に入れてからたったこれだけのことに2か月もかかっていました。
途方に暮れてぼーっとしてる時間が多かったしね。。。
それでもなんか、一歩ずつ進んでた。
若いっていいね。
先は長いぞよ。

つづく

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