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【読書感想文】一生お金に困らない山投資の始め方

書籍情報

署名 一生お金に困らない山投資の始め方
著者 永野彰一
出版社 クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
出版年 2022年

概要

本書の内容のうち投資に関する部分は大きく2つのパートで構成されている。
①タイトルの通り山への投資に関するパート
②2つ目は賃貸不動産への投資に関するパート

どちらも普通の人が投資したいと思わないような田舎の何もないような山や買い手がつかないようなボロアパートを対象にしたもので発想は面白い。
この投資の利益モデルをまとめると以下の3つによって構成されている。
①低いビジネス倫理
②トラブルの受容
③ 強烈な行動力

平たく言うと、金を払ってでも処分したい山や賃貸不動産を実質的な処分料を受け取って取得する。山なら固定資産税を含めたランニングコストを0にして、数百円でも収入があればプラス。賃貸不動産なら、ランニングコストを抑えることに加えて普通は部屋を借りられない人にも貸し出して賃料を得るというもの。

こう書くと確かに考え方としておかしなところはないようにも思える。
ただ、山崩れなどが万が一発生した場合の補償への考え方や正規の家賃を払えない借り手にぼろ物件を1円で売ってかわりに賃料を下げるなど、私の感覚では倫理的に問題があるように感じられるエピソードが複数あり、受け入れられないなと思った。

後者を少し補足説明すると、そもそも買い手もつかないようなボロアパートすら借りるお金のない人に1円で物件を売るということは、どのみち処分が必要になる物件を押し付け、とても転居ができない人から継続的に賃料を受け取り続けるということだし、同じ物件の話でないとしても低気圧で壁が崩壊してしまうような物件のエピソードも紹介されていて、異常に立場の弱い人の足元を見るような取引だと思う。たとえ本人が納得していたとしてもそれは本人にほかの選択肢がなかったというだけではなかろうか。

率直に言って、投資として儲かるか儲からないか以前の部分に引っかかってしまった。
加えて、倫理観に目を瞑ったとしても、次のような理由もあり、あまり気乗りしない投資法である。

この投資手法は、要するに厄介ごとを引き受けることに対して手数料を取っているようなものなので、経済的に成功したとしてもあまり気持ちの良い生活ではないのではないだろうか。例えば著者は裁判が特別なことではないという感覚をお持ちの様で、裁判が必要になるような物件への投資をわざわざしたいという人はあまりいないだろう。

最後に、そのような悪条件とは言え、お金を払ってでも不動産を手放したいというような相手を探すのには相応の行動力が必要である。

さて、ここまでで投資本としてはあまり良い評価をしていないことはお判りいただけたと思う。
ただ、エッセイとしてはとても面白かった。
上記のような投資手法を実践している人のものの考え方というのはかなりユニークだし、そんな世界もあるのかと思わせてくれる本である。
役に立つ本というよりは異世界を見る本という感じがする。

同種の面白さがあった本を紹介すると下記の2冊があげられる。
本書を読んで笑える人は下記の本もお楽しみいただけると思う。

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