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【書評】株式投資のための財務分析入門

書籍情報

署名 株式投資のための財務分析入門
著者 高田 裕
出版社 リチェンジ
出版年 2020年

概要

本書は会計に明るくない個人投資家向けに書かれた財務分析の教科書。
想定読者を明確に意識されているため、学術的な関心を持って財務分析を学ぶ場合には適当ではないかもしれないが、非常に良い本でこれから個別銘柄への投資を考えている人に読んで欲しい。

私がこの本を勧めるポイントは以下の3つ
①    ビジネスモデルを意識した分析手法の説明がなされていること
②    どこを簡略化しているか明示的に示してあること
③    実践上で手抜きができるポイントが明示されていること

詳細

①    ビジネスモデルを意識した分析手法の説明がなされていること
この点については、具体的な企業の事例をもって説明されている。
一見すると同じように見えるドラッグストアやアパレル企業でも実は違うビジネスモデルであること、違うビジネスモデルを採用している企業ではどのように財務指標が違ってくるのか?一様に同じ基準値を当てはめて良し悪しを判断することがいかに間違った判断につながるのかが理解できると思う。
財務諸表分析の本ではあるが、財務指標をいきなり見るのではなく、そもそもどんなビジネスをやっている企業なのかを理解することが必要であることが理解できる。

②    どこを簡略化しているか明示的に示してあること
本書冒頭にも明確に簡略化をしていることは明示しているし、文中の注記としても簡略化していることが示されていることは著者の真摯な姿勢がうかがえる。

③    実践上で手抜きができるポイントが明示されていること
重視すべき指標と補完的指標、正確な定義上は事業利益を使うべきだが実務上はこういう風に簡便法を使っても良いということも示されており、知識として持っているだけではなく使うことを意識した内容となっている。

総評

投資本の多くは、財務指標を使うことがあってもごく簡単に触れるだけのことが多いように思う。財務分析を中心に置いた本ではなく、財務分析は書くまでもなく行うべきものとして取り扱われていないという場合もあるが、そもそも財務分析をほとんどしていない、取り扱ったとしても企業ごとにどの指標を重視するべきかまで考えられておらず単に表面的に数字を追っているだけというケースが多いように思う。

そんな中で、分析対象となる企業がどのようなビジネスを行っているのか?そのビジネスを評価するためにはどのような点に注意を払うべきか?という観点で詳しい説明がされている本書は非常に丁寧な教科書で基礎固めとして優れている。

また、学んだ手法を実践するうえで手を抜けるポイントが明示されていることも重要で、学んだものの手間がかかりすぎて実践できないという事態を防いでくれるように思う。

教科書なので、読んでいてわくわくするような内容が書いてあるものではないかもしれないが、著者の個人的エピソードなども面白くぜひとも広く読んで欲しい1冊。

併せて読むと面白い本

今回取り上げた本でも推薦されているが、私も複数の版読んでいて、間違いなく勉強になる本。

株式投資のための本ではないが、この2冊をちゃんと勉強すれば会計で不自由することはないはず。

私が簿記の勉強をしたのはずいぶん前なので、この本自体は読んだことがない。
推薦する趣旨は簿記2級レベルの勉強をしておくと、各勘定科目をどういうときに使うのか具体的に理解できるのでお勧めという意図。


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