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ボーイフレンド 2

次女は2歳の誕生日目前から保育園生活をスタートさせた。希望の園には入れず、決まった先は未満児クラスの受け皿となっている園だった。
第一希望の園に空きができると転園を決める家庭は多く、園児の出入りが激しかった。

0-1歳クラスで仲がよかったお友だちとの別れ。なんと9割近くが翌春にはその園を去ってしまった。
2歳児クラスが始まって数ヶ月、見るからに彼女はさみしさに満ちていた。
そのさみしさは、共に遊び成長し、話せるようになりはじめた時期に言葉を交わし、お友だちと過ごした日々の豊かさの証だった。

暑さがピークを迎える頃、新しいお友だちとも徐々に遊び始め、新しい先生にも甘えられるようになってきつつあった。
ここに行き着くまでに、彼女は多くのひとり遊びの時間の中で、どれだけの葛藤とさみしさを飲み込み、心を開く準備をしていったのか。
「慣れ」なんて言葉では到底片付けられない。
受け入れがたい現実に対峙する彼女の努力を見守り、話を聞いて寄り添うことしかできなかった。私は、胸を撫で下ろすとともに、(もちろん園の先生がたも積極的に関わってくださったが)自力で乗り越えた彼女に心から拍手を送った。


先日のこと。偶然春に転園したお友だちのひとりと、出先で再会を果たした。
季節はあと少しで一巡する。会わない間にお互い顔つきもしっかりして、はたして気が付くだろうかと一瞬ふとよぎったものの心配は無用だった。終始仲がよかった誕生日が近い三人。
女の子二人と男の子一人、互いの連絡帳に毎日名を連ね、どの写真でも一緒に遊んで並んで過ごしていた。
彼のお母さんと話している間にも、二人はなんだかくすぐったそうな様子で初々しくもじもじしている。別れ際にようやく名前を呼びあい、タッチして別れた。

「〇〇くん、久しぶりだったね。少しだけだったけど会えてよかったね」

次女に話しかける。
さぞかし喜んでいるかと思いきや、さっきのもじもじした様子とは打って変わって、さらっとした顔つきで彼女はこう言った。

「なんかさぁ…〇〇くん、背、のびたよね」

通過していった昔の彼にふれるような口調。
いつものふざけた彼女と全く違う佇まい。

どきりとした。
いったいいつどこで身につけるの。
もしかして最初から備わっていて、たまたま花開く瞬間を目の当たりにしただけなのだろうか。

次女、3歳。
ずっと母にべったりだった、いや、今もべったりなのだけれど、その上で自分の人生に降りかかるすべてをしかと受け止め、独自の価値観を培い出しているのを改めて実感した。
わかりやすい身長や顔の丸みの変化以上に、こどもの心の成長は早いのかもしれない。
本人が発信する思いも、物の見方も、言葉や気持ちの受け取り方も、あっという間に親の知る範疇から外れていく。
でもそれでいい。それがいいのだ。

ボーイフレンドたち、ありがとう。
おかげで娘の現在地をアップグレードできたよ。

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