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夜に耳をうずめて

夜ふかしが好きなこどもだった。
時間帯の雰囲気もさながら、
小学生の頃から深夜ラジオがたまらなく好きで
毎日夜が来るのが待ち遠しかった。
あらゆるジャンルの音楽との出会いがあり
私のルーツの一つとなった。

当時CD、MD、ラジオの設定がある
ラジカセを自分のものとして手に入れた時には、
天にも昇る思いだった。
クラシック好きな母とピアノの調律師だった父。
音楽がとても身近な日常の一方で、
親の意にそぐわない嗜好の音楽については
頭ごなしに否定されることもしばしばあった。
自分の興味を解放するには
静まり返った夜はもってこいな場であり、
両親への小さな反抗心も満たされた。

そんな日々の中でも、
キリンジの音楽に初めて触れた時の
とてつもない衝撃は忘れられない。
エイリアンズのイントロが流れた瞬間、
布団の中でゾクゾクしながら身悶えたものだ。

当時まだ兄弟デュオであったキリンジ。
どちらの作詞作曲もそれぞれに素晴らしく、
それぞれに味わい深い歌声。
ひとりの深夜時間と親和性が高かったのは
兄の高樹さんの楽曲で、
Drifter
雨を見くびるな
愛のcoda
耳をうずめて など
当時の自分にはかなり大人びた内容であったが、
冷たさと美しさと独特の表現を
自分だけの宝物として抱きしめていた。

自分の子どもたちが将来
ひとり部屋を持つ時期がきた時、
夜におやすみの声はかけても
あとは本人の過ごし方を尊重したい。
あの頃の私にとって、
深夜は自分のサードプレイスだったのだから。

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