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すべての闇が虚空であったとき

すべてが闇で虚空であった時、全知の神はおられた。嗚呼、唯一なるエルよ、そなたにこの命たちを授けよう。この命たちはそなたにより放たれるだろう。お前が信頼するにたるエルフに、そなたは新たなる名を与えられよう。




 エルよ、いやイルーヴァタール。その”不滅の炎”で聖なる者たちアイエヌを灯すがよい。この子らはやがて神々となり世界を治めることだろう。




 


ᛋᛏᚨᚱ




「風の王マンウェ、それから星の女王ヴァルダ。私はこの虚空に時なき館を造った。私はあなたたちを信じている」




 イルーヴァタールの胸に宿る炎は、悲しみに揺れていた。ヴァルダはそれを見ていたので、神妙な面持ちで語りかけた。風の王マンウェは穏やかにそれを見ていた。




「イルヴァタール様、どうか悲しみに暮れるのをおやめください」


「.......ヴァルダ。どうしてお父様虚空の創造主は私に世界を託したのだろう」


「.......恐れ多い限り、私は言えません。考えることすら、私には怖いのです。お許しください」


「ヴァルダ、星の子たちに言ってほしいのだ。”どうか守ってくれ”と」




 ヴァルダは頷いてから「はい」とだけ言った。彼女の答えは必ず一貫性を保っていた。だからこそイルヴァタールは安心できた。




「マンウェ、歌を歌ってほしい。そなたの歌は心を軽くしてくれるから」


「ええ、もちろん」





 ᚷᚩᛞ ᛋᚪᚢᛖ ᛗᛖ


ᛈᛚᛖᚪᛋᛖ ᛋᚪᚢᛖ ᛏᚻᚩᛋᛖ ᚳᚻᛁᛚᛞᚱᛖᚾ, ᚾᚩᛏ ᛗᛖ.


ᚠᚩᚱ ᛏᚻᚩᛋᛖ ᚩᚠ ᚣᚩᚢ ᚹᚻᚩ ᚢᚾᛞᛖᚱᛋᛏᚪᚾᛞ ᛏᚻᛖ ᛈᚪᛁᚾ ᚩᚠ ᛚᛁᚢᛁᚾᚷ




ᚻᚩᛚᚣ ᛏᚻᛁᚾᚷ


ᚠᚩᚩᛚᛁᛋᚻ ᛈᛖᚩᛈᛚᛖ


ᛒᛖᚳᚩᛗᛖ ᚩᚾᛖ


ᛋᛁᚾᚷᛁᚾᚷ ᛗᚩᛖ





ᛏᚻᛁᛋ ᚹᚩᚱᛚᛞ ᛗᚪᛞᛖ ᚩᚠ ᛋᚩᚾᚷᛋ




ᚢᚾᛏᛁᛚ ᛏᚻᛖ ᛖᚾᛞ ᚩᚠ ᛚᛁᚠᛖ





(神よお救い給うことなら


私などではなく、あの子たちをお救いください


この生きる辛さを、おわかりになる貴方様に




聖なるものよ


愚かなる民よ


ひとつになって


歌いたまえ





歌でできたこの世界は




命尽きるまで)

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