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若木神(わかきかみ)の真 24(小説)(エッセイ)

エッセイ(とんぼ)

気温22度の小春日。
赤色の葉のカーテンを揺らしながら降り注ぐ光は
冬に傾きかけた体の表面を程よく溶かし温めてくれます。

光をいっぱいに含んだ葉は透き通り、葉脈が浮かび上がっています。
しばらく眺めた後で目を閉じると
暖かい脈の中に吸い込まれていくようです。

春、夏と光合成を繰り返し
葉の中で作り出された栄養は、あの葉脈を通り木へ送られていたはず
です。
この葉はもう直ぐ落葉し
土に還る葉。しばらくは屋根の上で一休みする葉。
風に吹かれどこかの川を旅しながら流れて行く葉。
至る所を色彩豊かな時間で埋め尽くしてくれるのです。

今はカサカサと美しく音を鳴らして
サヨウナラまた来年と歌ってくれているのでしょうか。
緑でも、黄色でも、赤でも、茶色でも。
私たちも葉に心を寄せています。

しばらくお別れですが
春になる頃、若葉となって生まれてくる皆様に
お会いできるのを楽しみに待っています。

紀元前300年の日本では
若木神の詔が大木となり
逞しい生命の香りは皆々の心をとらえた。
真の言葉を目の当たりにし
今、秋津洲民の心は一つに。

🌿秋津先生の著書で、難しい漢字や言葉、興味を持った事などは
 辞書やネットなどで調べながらゆっくり読んでみて下さい。
 きっと新しい気づきがあり、より面白く読み進められると思います。

若木神の真 23
原作 秋津 廣行
  「 倭人王 」より

「これが、若木神(わかきかみ)の真(まこと)であるか。」

 阿津耳(あつみみ)は、若木神(わかきかみ)の霊力は
金拆神(かねさくのかみ)と素乃木姫神(そのきのひめかみ)にしか伝わらないものだと、勝手に思い込んでいた。
だが、今、はっきりと、自分の目の前に現れた若木神(わかきかみ)の姿を、目にし、耳にし、香りをかぐことが出来た。

 かしこねの姫神も豊玉之男君(とよたまのおのきみ)も
大地を揺らし、天に昇る神木に触れ、さすがに驚きて天を仰ぎ
高天原の若神を受け容れて寄り添った。

 佐久花姫神(さくはなひめかみ)は、とっさに、磐座(いわくら)に
捧げた八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を手に取ると
改めて、あめつち八百万(やおよろず)の神々に深々と頭を垂れて祈った。

 「これぞ、まさしく、秋津洲(あきつしま)の御柱(みはしら)なり。
われら、あめつち八百万(やおよろず)の神々を侮あなどらず
畏(おそれ)る心を忘れてはならじ。
高天原(たかまがはら)の若木神(わかきかみ)
ここに現れ、秋津洲八部族(あきつしまはちぶぞく)の魂とひとつにならん。」

 と申されて、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を根元の枝に
懸けられた。

                           つづく 25

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