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読書感想文✤ 「骨を彩る」彩瀬まる

メンバーシップ【cafe de 読書】3月の課題図書。
他にも何冊か読んだことのある、好きな作家さんです。

彩瀬まるさんの本は、読んでいる途中で気づいたら、肩の辺りがぞわぞわしていたりする。
わたしにとって、そんな本。
怖いとかじゃなくて、身体がなにかに反応してしるみたいな感じです。


この「骨を彩る」は5つの短編になっていますが、同じ登場人物が別の話で、異なる立ち位置で出てきます。
優等生に見える人も、それぞれ荷物を抱えていたりするのです。

ここでは特別なことは起こらないけれど、
日常をこなしていく中で、主人公たちは、それぞれの次の一歩を踏み出していきます。

上手く生きられていなくても、否定されない。むしろ、ここでは受け入れられているような感じがして。

読んでいると自分自身のことも、少しだけ、肯定していけるような気になるのかもしれません。



 5つめの話「やわらかい骨」から、印象に残る場面をひとつ、書いてみることにします。

中学生の小春は、小さい頃に母親を亡くし、父親と2人暮らし。母無し子として扱われるのが嫌いでしたが…
 『あたりまえ』が異なる友達と過ごしていく中で、小春は自分の感情と向き合っていきます。

私と似た女の人が、かつてこの家で暮らしていた。背にシャワーを浴びたまま、お母さん、といない人を呼んだ。もっと、話してみたかった。忘れたくなかった。おにぎりを食べたかった。ずっと、そう思ったらみじめだと思っていた。
彩瀬まる「やわらかい骨」より

主人公と同じ境遇でもないのに、同じ類の感情を、知っているような。

そして、もっとしっかり『自分』でいようと思った、
そんな本。

読み終えてから表紙の絵を見ると、イチョウの葉にも応援されているように感じます。

 

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