![マガジンのカバー画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/130669724/e50becce72a53c18485754fcabaedf7b.jpeg?width=800)
- 運営しているクリエイター
記事一覧
story setting for "a (k)night story" 物語と設定の覚書とあとがき
今回は a (k)night story ~騎士と夜の物語~の物語に登場する人物や場所などの設定を載せていこうと思います。
この覚書はUltimaOnline内で行われた同窓会イベントの際にブリタニアで物語を執筆している有志が自作の本を持ち寄り、イベント参加者に販売するという楽しい企画に参加させてもらった時、a (k)night storyの2巻セットにおまけで付けた設定の内容になります。
な
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑰
デュベルが立ち並ぶ訓練所の一画にある、さほど広くない私邸の門をくぐり中に入ると、訓練の支度をしている何人かの小姓たちと剣を腰に帯びたサイラスの姿が見える。
「やあ、デュベル。来たね」
サイラスは前よりもたくましくなっているが、にっこりと笑う笑顔は変わらないままだ。
「こんにちは、サイラス。
そのために鍛えてきたのよ。あなたももちろん出るんでしょう?」
「ああ。
一番弟子の私が出ないわけには
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑯
うずくまる彼女たちの耳に鋭い叫び声が聞こえ、沈黙が訪れた。
目を開けると、明け方の薄明かりの中、黒いサキュバスは茫然と立ちすくみ、その黒い裸の胸を背後から刺し貫いた剣が鈍く光っているのが見えた。
「ああ・・・ユージーン。
私はあなたを殺すべきだった。
だけど、私は・・・。ユージーン」
シリンは小さく呟くと、剣から薄絹がするりと落ちるように床に崩れ落ちた。
サー・ユージーンは、左手に持っ
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑮
デュベルとサイラスが屋敷の奥に着くと、一体のサキュバスが追い詰められ、周りを取り囲む戦士たちに必死の抵抗をしているところだった。
それは確かにあの夜の踊り子の一人だったが、今は裸の身体にいくつもの刀傷を受け、金の髪を振り乱して唸り声をあげながら荒い息を吐き、美しい顔を歪ませている。
さしもの魔物も負った傷で弱り、大勢の敵に取り囲まれては標的を絞ることができず魔法での反撃もままならなくなっている
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑭
「お前は・・・」
素肌の胸の小さな銀の鏡がちらりと光り、黒い影の笑い声はぞっとするような響きを帯びた。
「そうよ。
あの弓兵の一矢を受け、力の弱まった私はその場を逃れるしかなかった。
その時、私の眷属は全て滅ぼされた・・・。
それでも長い時間をかけて私は力を取り戻し、少しずつ私の新しい眷属をもうけたわ。
そして仇を討ち取るためこの街へとやってきたの。
見つけ出したあの弓兵は地位を手に入れ、
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑬
再び意識を取り戻したサー・ユージーンは、先程倒れた姿のままで床に横たわっていた。
どのくらいの時間が過ぎたのだろう。
少しではあったが、室内はここに入ってきた時よりも確かに薄明るくなってきているようだ。
ぐるぐると回る視界に顔をしかめ、身を起そうとした彼は、身体が泥のように脱力して重く、指先ひとつ動かせなくなっていて、影のようなものが彼の身体の上にいることに気付いた。
バルコニーからの薄明
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑫
サー・ユージーンは足音を忍ばせて、ウィルバー卿の私室の前へとやってきた。
私室とは反対側の奥の方で、兵たちが戦っている音が聞こえ、魔物が応戦しているのか、時折雷のような大きな物音も聞こえてくる。
「どれだけ兵がいるのか・・・倒すことができるのか・・・?」
そう考えながら、剣を構え私室の扉を音もなく開けると部屋へと入り込んだ。
広い私室の中は暗闇で、外へと通じるバルコニーの扉が開いているのかカ
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑪
二人は屋敷に入ると壁伝いに進み、台所と思われる部屋の扉を開け室内に入ると押し殺した悲鳴があがった。
「誰かいるの?」
「助けてください。どうか殺さないで」
「心配しないで、大丈夫。ここに灯りはない?」
デュベルが尋ねるとロウソクが点り、おびえてうずくまる召使たちが見えた。
安心して泣きだした召使たちは、召使仲間でおかしくなったものが屋敷の灯りを消して回っているうちに何者かが入り込み、それ
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑩
治療院を出た彼らがマリアたちが仕留めた魔物がいるという厩舎裏の森に到着すると小さな森の周りには野次馬が集まって人垣ができていた。
警備の衛兵にマリアのことを話し森の中に入ると、あの討伐の祝宴の夜に見た踊り子が細い手足を舞っているようにだらりと地面に伸ばして横たわっている姿が見えた。
薄絹も纏わない裸の身体の周りには、彼女の背中から生えているコウモリのような羽根と血に濡れた美しい銀髪が広げた衣装
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑨
季節が変わる頃、街で不気味な人死にの話が聞かれるようになった。
人の話によると、犠牲者は喉元を鋭く貫かれ、身体は老人のようにしなびていたということだった。
犠牲者が発見されるのはいつも朝だったので、何者かが夜、街をうろついて次の獲物を探しているのではないかと人々は噂しあい、日が落ちて薄暗くなってくると酒場まで店を開くのを控えてしまったので、トリンシックの街は文字通り灯が消えたような有様になって
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑧
***
目を開けているのにまるで月のない夜の闇の中のように暗い。
左目が良く見えない・・・額から顎にかけて温かいものがどくどくと噴き出して顔半分を浸し、首筋や後頭部までずっと流れているのがわかる。
なぜだろう、痛みを感じない・・・ただ、とても、寒い。
闇の中、目の前に斃れた戦士の姿が見える。
あれは・・・俺だ。
闇が足元から徐々に身体を這い上がってくる。
眠りに落ちていく時のよう
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑦
「・・・そういや、その頃お前の兄貴が生まれたんだったな。
イーノックの家に知らせが来て、あのじゃじゃ馬の姉貴が子供をもったことに心底驚いたおぼえがあるぜ。ははは」
「母様のことをそんな風に言いますけどね。叔父上は?」
「は?」
「叔父上はどうなんです?どなたか大切になさっている方などはいないんですか?」
「なっ・・・なに言ってんだ。そんな、お前、俺はそういうのは、い、良いんだよ」
「そう
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑥
ウィルバー卿が帰ったあと、デュベルは少し渋い顔をして座っているサー・ユージーンの空の杯にワインを注ぎながら話しかけた。
「叔父上、友人とのせっかくの再会だったのに愛想悪いですよ?」
「なんだ、お前はまた「叔父上」って、聞いてたのかよ。
・・・実はな、俺はあいつが嫌いなんだ」
「「嫌い」って子供じゃないんですから・・・。
まあそれは、どうしたって反りの合わない人はいますよ。でも、一緒に戦った戦
a (k)night story ~騎士と夜の物語~⑤
不本意な討伐の後、デュベルは再び戦士修行に取り掛かった。
サイラスや戦士仲間たちも同じように悔しさを抱え、次の戦場ではより良く戦いたいという決意を持っていた。
互いに目指しているものが同じことを知った彼らは一層訓練に精を出し、後日、別の場所に根城を張ったブリガンドたちの残党討伐の隊に加わると、望み通りの戦果を挙げ、今度こそ心置きなく祝杯を交わすことができたのだった。
デュベル自身も納得のいく