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ポエムな文章

抵抗がある。詩的な表現をすることに。他人のオナニーポエムとしか感じられないような文章を見て、それで不快になった経験が何度もあるからだ。本当のところ、本人の内側にある経験には結びついているのかもしれないが、アウトプットされた内容としてはあまりにも抽象的か表層的すぎて、受け取る側としては全く現実感のないフィクショナルな想いを受容するしかない立場に置かれた気分になる。悩むふりをしたい/悩むふりをすることが気持ちいい人に見える。

しかし、数年前の自分の発言やメモ書きが容易に見つけられるのは、電子化社会の良いところであり、悪いところでもある。例え公開情報として発言している場合であっても、今から考えればありえないほど恥ずかしいことを恥ずかしい言い方で言っている。それを見て死にたくなる。SNSではなく、個人的なメモ書きの場合はもっとその度合いが強い。

逆説的に、ポエムっぽい言い方とか書き方とかは、人間の自然な言語活動の一環なのではないかと思ってもみる。推敲することも出来るが、そうでなく、自然な状態でもその風合いがある。むしろ詩として推敲するということは、その自然状態にいかに違和感なく近づけられるかという問題なのかもしれない。それをそうと分からせないような合皮や化学調味料のような。いや、それも多分違うか。推敲された詩は結局それなりの人間に共感されるように加工されている表現であって、今私が言っているポエムっぽい文章は単に気分の上がり下がりを申し訳程度の理屈の断片でデコレーションしたものにすぎない。

手癖がつまりポエムっぽい文章なのかもしれない。それなら、この文章も私にとっては十分ポエムっぽい文章だ。論理の飛躍を自分の経験で補っている。実際は補っていない、知らん振りをしているだけかもしれない。

文章に写し取るというのは、まあ写し取るわけではないが、とにかく表現してみることは一定の癒しを与えてくれる。しかしそれは精神的な疲労や傷を全て治癒するような力はなくて、ある種の自傷行為である。代替行為である。それで上手くいったと思っている人は、そのアクションに応じて様々な別のイベントが起こり、その別の要素によって恒常的な癒しを得ているはずだ。

私たちと言うと他者を巻き込むので、強いて私と言うけど、私は人のポエムに共感できないのに、自分の今この瞬間のポエムにだけは共感できる、器の小さい、あるいは自身の感性に慎重な人間ということになる。

ポエムを書き上げてしまうことと、非攻撃性の感情吐露は似ている。どちらも相手に正確にその機序を伝える気も伝える技術も持たない、説得力に欠ける行動だからだ。いや、説得力がないように感じるのは私の個人的な欠如から来るものなのかもしれないが。もっと言えば、理屈などは関係なく、本当のところ、自分に都合が良ければ都合よく解釈し、自分に都合が悪ければ批判的な態度をとって検討するというだけで、後者の割合がかなり高い場合がほとんどということかもしれない。

今みたいな言い方は、他者には十全には伝わらないということを、私は知っている。やや過度に抽象化した言葉を使って言いたいことの一般性を主張したり濁したりしているからだ。これが私のポエム。

何が書きたいのかわからない。

吐露するならば、非攻撃性の感情吐露とは、例えば愛の告白である。私には恋と愛の違いを明確に説明する手を持ち合わせていないから、この意味で「愛の告白」には全く純粋な性欲とかも含まれてしまう可能性がある。愛はやり方のひとつであって、基礎概念にはどうしても思えない。これは相手には絶対に理解されない。理解されていると思うとき、それは相手にとってその状況が都合が良いだけで、相互理解などという共通思考対象があるかのような幻想は捨て去るべきだ。相互利用の関係でしかない。

こういうのを含めて、非自己とのふれあいの仕方、そのノウハウを私は知らない。知らないのでポエムにして虚空に投げかけ、応じてくれる存在しない非自己を夢想する。ポエムに語りかけてくるのはいつも自己しかいない。

そもそも言葉にすることは、なまものの感覚と思考の加工過程であって、認識の歪みの強化である。正しいと思われる議論をしたところで、それは歪みをさらに歪みによって正確な像へ偶然近づけられた可能性を感じているだけに過ぎない。言葉にすればするほど本当のところとはかけ離れていくのであって、言葉など捨ててしまった方が良いと思ったりもする。

書いている途中でもう既に十数分前の自分の書き出しに違和感を覚え始めているし、中学生の裏アカウントのような味わいがあって、非常に吐き気を催すが、そういうのが今現に示したかったものの気がするので、このままにしておく。

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