紬-Tsumugi-

生き続けていく中で 悩み、喜び、悲しみ、笑い いろんな感情がカラフルに重なって 貴方な…

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生き続けていく中で 悩み、喜び、悲しみ、笑い いろんな感情がカラフルに重なって 貴方なりのイロで輝いていく そんなオリジナリティーな幸せを 感じられる3つの間のお話 Human 人間 Time 時間 Space 空間

最近の記事

押し付けの押し入れ

ほらね、綺麗になった。 そんなことを心の中で思いながら手を叩く。 あとは掃除機をかけて終わりだ。 人が来るというイベントがない限り、部屋が掃除できない。 何度綺麗にしたって同じ部屋で生活する同居人の手によってすぐ汚される。 もう何をしたって無駄だ。どれほど綺麗な部屋にしたくたって、自分が汚してしまったのと、人が汚したのでは、掃除のやりがいにも差が出るというものだ。 何度行っても服は箪笥に入らずにタワーのように積まれる。明日も着るからと脱ぎ散らしの服はその辺りに放棄される。

    • ふとした声に、

      朝7時。 昨日の夜にセットした目覚ましが流れる。 初期設定のままのメロディーであるそれは、カスタマイズされた主人のアラームとは少し違うものだった。自分専用となったそのメロディーを反射的に右手で止めると、カーテンの隙間から漏れた光の前に目を細めた。 “眉間寄せてたら皺になるよ“ ふと、姉の声が聞こえる。 危ない危ない。私は人差し指で眉間を軽く擦り、鏡で皺になっていないかを確認した。30歳を迎える今年。もうとっくの前にお肌年齢は折り返し地点。何を食べてもニキビが出ない時代はとう

      • 愛はごみ箱の中に

        “まもなく、大阪、大阪、大阪です“ 車掌が駅名を3回コールする。時刻表通りに目的地に到着するのは、海外から日本に来た外国人からすれば素晴らしい光景だという。私の知人がドイツに留学していた時に一番衝撃を受けたと言っていたのも、この電車の時間のことについてだった。電車が時間通りに来ることなど滅多になく1時間遅れ、2時間遅れはよくあることらしい。決められたことを精密に行うことができるのは、日本のいいところだ。だがこれからAIが発達していく中で、おそらくその精密さは“人間“がするこ

        • 不便なコンビニ

          3月の山道、夜の散歩。 いかにも不審者にあって攫われてしまいそうなキーワードだが、酔っ払いのわたしたち以外に誰も外を歩いている人はいなかった。 夜の山道ということで、普段のストレスを発散するように速度制限フル無視で飛ばしてくる車と何台かすれ違うたびに “わぁお、はやぁあああい!“ と酔っ払いの声がする。 どうやら夜の散歩もお酒の力を使うと楽しくなるようだ。 山荘から歩き始めて10分。 15分ほどで着くと言っていたコンビニはまだ見えてこない。 行きに見たコンビニは、とても

        押し付けの押し入れ

          名ばかりの研修会

          "あー、アイス食べたい〜" 喉の奥でアルコールが逆流しかけるのを何とか水で抑え込んだ後、何だか急に甘いものが食べたくなった。3月28日と29日の狭間で肌寒さを感じたのか、目の前でアルバイトの葵衣は毛布を羽織った。 '今日から一泊二日で研修会だ!' 'よっしゃー飲み明かすぞー!' そんな名ばかりの研修会はたったの開始30分くらいで終わり、その後はバーベキューやらジャグジーやら、一気飲みやら。どんちゃん騒ぎ、祭り状態だった。毎年2回ある恒例行事に6回目の参加となる私は、その

          名ばかりの研修会

          風化しないモノ

          車を走らせて40分。 赤信号の途中サングラスを外して目の前に広がる湖を見つめる。 世間でいうゴールデンウィークの最終日。天気予報は見事に外れ、雲一つない青空が続いていた。 "あつ、、、" まだ5月に入ったばかりだというのに、ラジオでは夏日というワードが飛び交っていた。車内温度をみてげんなりし、窓を全開にして車を再び走らせた。 湖岸沿いには健康のためのランニングマンと、部活動の一環で走らされている大学生とが入り乱れていた。運動をするときくらいはマスクを外させるべきだという

          風化しないモノ

          ミムラスの花言葉

          朝9時。 雲一つない青空の下、ある喫茶店に着く。 綺麗に拭かれた窓ガラスに反射した自分が写ったかと思うと自動で扉が開く。 "おはようございます" 声の主の姿の前に明るい挨拶が聞こえた。 そのあと遅れて姿が見えたかと思うと、声の主人は人差し指を立てて "1名様でしょうか?"と笑顔。 恥ずかしがることもなく返事をすると、手を広げフロアの方を差す。どうぞというその動きに私は足を進めた。 カウンターの端に腰掛け、目の前に並んだマグカップを眺める。この喫茶店、話によるとバリス

          ミムラスの花言葉