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連還する記憶 ④ 

連還する記憶 ④

連還する記憶 ③では、存在記憶について、考察しました。

つまり、

存在記憶
新たな生命は、お母さんのおなかの中にいる間に、胎盤を通して生命記憶を受け取る一方、生まれたときから、存在記憶の記録が始まります。

存在記憶は、血肉に宿る数億年の生命記憶を生きるために活用し、展開し、開発し、進化します。存在の記憶は、進化の記憶なのです。

ところで、生命記憶をベースに蓄積された進化記憶は、元の生命記憶にフィードバックされるのでしょうか?

生命記憶と存在記憶は、切っても切れない関係にあります。生命記憶は、生体内に張り巡らされた感覚網によって、存在記憶と繋がっています。

紅茶の香りをかいだ途端に、むかしの出来事を思い出す、といったことは、よくあることです。存在の記憶が、生命の記憶とリンクする瞬間です。そして、このリンクを可能にするのが感覚です。

ひと類はみな、この感覚を介して、生命記憶と存在記憶に繋がっています。嗅覚という生命記憶がなければ、紅茶にまつわる存在記憶を再生できないし、紅茶を味わったという存在記憶がなければ、匂いを嗅いだという生命記憶にもつながりません。

このように、生命と存在の記憶は、切っても切れない仲なのです。

ところが、最初から、生命記憶とリンクしない、存在記憶があるのです。それは、どういう記憶なのでしょうか。

ずばり、生命記憶とのプロトコールである感覚にアクセス権をもたない記憶が、それです。

この種の記憶は、存在記憶のひとつですが、感覚へのアクセス権がないので、生体の五感、六感、7感…にリンクをはることができません。なので、油断すると、紐の切れたタコのように、どこかへ飛んで行って、なくなってしまいます。

他人の存在記憶を自分のものにしようとしても、できません。自分の生命記憶と繋がっていないからです。

他人の考えを自分のものにしようとしても、できません。自分の生命記憶にアクセス権をもたず、リンクをはれない記憶ですから、自分が進化しても、その進化に同期できません。

ひと類は、常に進化しています。その進化に同期できない記憶は、ひと類と同じ時間を共有していません。

生命体は、常に進化しています。その進化に同期できない記憶は、生命体と同じ空間を共有していません。

生命体と同じ時間と空間を共有しない記憶とは、どういう記憶でしょうか?

もう、おわかりですね、それは観念の記憶、すなわち観念記憶です。

さて、ここまで三つの記憶について紹介しました。すなわち、
生命記憶、存在記憶、そして観念記憶の三つです。

次回は、三つ目の、観念記憶について、みていきましょう。


本棚:連載‗新連載
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・赤の連還:https://estar.jp/novels/26066319
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