ドイツにシエスタを
Hallo, Guten Tag!
9月に入っても暑い日々が続いていたかと思っていたけれど、それでも朝晩は確実に夏のそれとは違う気配を感じるようになりました。
ドイツの夏は昼の時間も長く、気温も日本の東北くらい。梅雨もなくカラッとしていて実に過ごしやすい・・・のも、もはや過去のこと。
そんな中、国や地方の機関で従事する公務医らの「夏のドイツにシエスタ導入を」の提言が、この夏のドイツを多少沸かせていた(?)ので、今回はドイツのシエスタ導入について書こうと思います。
南欧に学べ
この提言、その目的は夏の労働時間の効率性と生産性向上を図るためです。
イタリア、スペイン、ギリシャに生産性向上を学ぶドイツ(笑)・・・失礼( ̄▽ ̄;)。
近年、温暖化に悩まされているのはドイツも例外ではありません。
ここは一つ南欧を見習って、暑苦しい夜に十分な睡眠を取れていない分、シエスタを取り入れようではないか、ということで
いざ、夏のドイツにシエスタを🍹
夏のオフィスでは扇風機をつけること、軽装であること、こまめな吸水、少量で数回に分けての食事摂取、在宅ワークなら足湯ならぬ足水を・・などと熱中症対策がアナウンスされ始めたのも、ドイツではここ最近のこと。
実はドイツのオフィスにクーラーがあったかどうか、考えたこともなかったので全く思い出せません💦
もともと寒がりで、ドイツで暖を求めたことはあっても、涼を求めた記憶がありません。
30℃以上で、オフィスや在宅ワークにおけるシエスタを導入することを連邦公務医師連盟の代表が勧めているのをニュースで見たのですが、そもそも導入されるわけがないと鼻から真面目に取り扱っていない様子のアナウンサーに、
「今後、ドイツではビキニや海パン、サンダルで会社に出勤しもいいということに?」
「シエスタが導入されたらどのようなイメージなのでしょうか?同僚・上司や部下と一緒に薄暗くした部屋に隣同士に寝っ転がる?」と極論を吹っかけられていたところを見ると、ドイツでシエスタが南欧のように根付く可能性は低そうです(笑)。
シエスタやめます
真面目か冗談かはさておき、ドイツでシエスタの導入が議論される一方、スペインでは1/5以下の国民しか午睡を取っていない、というアンケート結果が出ています。
そもそもシエスタって、日の出から一定の時間を過ぎた時間帯(お昼過ぎ)のことを言うらしく、それがのちに今の、その間に特に寝なくてはならないということもない長い昼休みの意味になった、というものです。
シエスタには何百年もの伝統がありますが、当然その間に都市化も進んで働き方も変化してきました。郊外から都心のオフィスに通う人々が、昼にわざわざ帰宅してまでもはや午睡をとらない、というのは当然な気がします。
スペインやイタリアのオフィスが冷房完備されているにも関わらず、14時から16時、多くの場合はそれ以上に長い時間をシエスタのためオフィスから閉め出されてしまう人々は、この2時間も3時間ある長い昼休みを冷房の効いている喫茶店やレストランに行き、寝ることもなく自腹切って時間を潰している・・というのが実態なのだとか。
しかもこの、もはや多くの人々にとって(少なくとも都心のオフィスワーカーにとって)無意味となっているシエスタ、帰宅時間をその分遅らせるだけで、家族との時間も少なく、果ては寝不足の原因にもなっている、という有様です。
そこで。
スペインでもイタリアでもシエスタは廃止の傾向にある、というのです。
あれ(・ω・)?
シエスタ in Germany?
シエスタ廃止の動きのあるスペインやイタリアに逆行する議論を繰り広げている感のあるドイツですが、実際に導入されたらどんな声が聞こえてきそうか考えてみました(インタビューしないんか)。
・ただでさえ、17時に定時で帰宅してるのに、終業時間が20時なんて、家族・友人との時間がなくなる。
・ただでさえ人手不足で入れる保育園がないのに、そんな遅くまで子供預かってくれる保育園も学童もないよ?
・ただでさえ時間通りに来ない電車に乗ってなんとか通勤してるのに、一日に2往復なんて、問題外の外。
・車でも一時帰宅、再出社にかかるガソリン代もバカにならないから、シエスタ補助金が必要。
・同僚・上司・部下と同じ部屋で昼寝出来るほどプライベートな仲ではない。
ますます、なさそうだなー。。
その上、シエスタ導入は、実は法改正が必要になる可能性もある広範囲に影響のある話でもあるのです。
つまり・・。
ルールが
日本も被雇用者の休憩時間が労働基準法によって定まっているのと同様に、ドイツにも労働時間法(ArbZG)による休憩時間や休息の定めがあります。
太字の一番上の第一項。
被雇用者は日常業務終了後、最低でも11時間の持続的な休息を取らなければならない。
つまり、
仕事が終わったサラリーマンは、(上司・部下・同僚やその他の、業務に関わる一切の人からの求めによって)中断されることのない、最低11時間の連続する休憩時間に入らなくてはいけませんよ(電話はもちろん、メールを送られても、メッセージを送られても答える必要はないんですよ)
みたいなことが書かれているわけです。()内は勝手に行間を読んでみました。
すなわち、もしもシエスタ導入によって就業時間が20時になった場合、11時間後の翌日7時までは休息時間です。仮に残業で22時まで仕事をしていた場合、翌日の9時までは会社からの拘束を受けません。始業時間が8時30分の場合、これでは始業時間に間に合わない、というようなことが出てくるわけです。
また圧倒的人手不足から、通常の保育・学童預かり時間帯の運営すらもままならない状況で、シエスタ導入による夜間営業サービスの提供なんて問題外の外、となりかねません。
生産現場の人、物流マン、建設現場で働く人、シフト制で働く人、公共交通機関の運転手さん、などなど職業によってもその導入の実態は様々なはず。
たかが昼寝と言う勿れ。
シエスタ vs 冷房?
日本では、熱中症対策に関してメディアや学校でアナウンスの徹底があり、クールビズも定着し、部活や外遊びの可否も紫外線指数で管理されています。その上、お店にはあらゆる冷却グッズが売られています。小中公立の普通教室における冷房設置率も90%を超えています。
実際私もこの夏、出張来日していたドイツ人が日本の暑さに耐え兼ねて購入した空調ベストを貸してもらって、スポットクーラーの効いた工場におりましたが、なかなかに快適でした(バッテリーが切れるまでは💦)。
日本のこのような工夫を凝らした暑さ対策のアプローチとはまた違う、大掛かりなシエスタ導入という発想が面白いなぁと思っているのですが、実はドイツの企業では冷房完備しているところが約半数しかありません。
それなら重要インフラにまで及ぶ社会構造を変える必要があるシエスタの導入を議論するより、
会社に冷房付けたら・・?
シエスタの代案として、
「早起きは三文の徳と言うし、シエスタ導入するより始業時間を早めて午前中の涼しい時間に仕事すれば?」
という意見もあります。
いや、だから
会社に冷房付ければ・・^_^?
そもそも、時差出勤や在宅など、働き方の多様性がある中、その辺はもう既に解決しているという、シエスタの導入に懐疑的な意見を持っている人が多いことも確かです。
強制力を持たない今回の提言。
実際の導入やその方法については、各企業に個別に任されている、というのが現状です。
今後ドイツは、どんな新しい働き方を模索していくのでしょうか(^^)。
因みに、昼食後に20分くらいの睡眠、パワーナップをとることの有効性が言われて久しいですが、起きる頃に効いてくるカフェインがいい仕事をしてくれるため、コーヒー1杯を午睡の直前に飲むといいらしいです。
ではここで、時々恒例の(せめて母国語ちゃんとして?( ̄▽ ̄;))、
今日のドイツ語
パワーナップ(積極的/短時間仮眠)
- Powernapping 英語から
- Nickerchen
- Mittagsschläfchen
早起きは三文の徳
- Der frühe Vogel hängt den Wurm.
- Morgenstund hat Gold im Mund.
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。
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