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死んだのか、殺されたのか。

Hallo, Guten Tag!

物騒なタイトルですが、この違いは重大です。

特に、犯行現場において。

家事の合間に、オーディオブックで犯罪小説を聞くことも大好きな私は推理や犯罪小説ジャンルはおそらく年間150本くらい聞いてると思うのですが、タイトルのように「死んだのか。はたまた殺されたのか。」で迷ったことはありません。
言葉がわからなくても、文脈が理解を助けている場面も多いからではないでしょうか。
そこで、今回はそんな文脈の助けを除いて、言葉自体の意味に少しフォーカスしたいと思います。

とはいえ私もドイツ語初級の頃は、読後に
「死んだのか。はたまた殺されたのか。」
どころか、
「犯人は誰だったのか、いや、そもそも事件は起きたのか?」

というレベル。↓

さて、わざわざ日本語にしない場合は気にならないことも、今回は日本語へ翻訳する機会があり、ちょっと思ったことがあったのでそれについて書こうと思います。

今回も私の、どうでもいいニッチなドイツ語にお付き合いください。


「亡くなった」り「殺害された」り


まず例文から。
- Der Augenzeuge berichtete, dass der Mann am Tatort getötet worden ist.
『目撃者は、男は現場で殺された、と告げた。』
- Drei Menschen sind bei dem schweren Unfall auf der Autobahn getötet worden.
『アウトバーンでの大事故で3人が亡くなった。』

どちらの文も、getötet worden seinという受動の現在完了形が使われていますが、『亡くなった』と訳す場合と『殺された』とする場合があります。

なんで?

「殺す」はtötenか

tötenという動詞は「殺す」という意味だと多くの人は学習していると思いますが、もしそうなら、getötet werdenの受動態で「殺された」という意味になります。

『目撃者は、男が現場で殺されたと告げた。』
- Der Augenzeuge berichtete, dass der Mann am Tatort getötet worden ist.
受動態で「殺された」と訳出に反映されています。

しかし、
『アウトバーンでの大事故で3人が亡くなった。』
- Drei Menschen sind bei dem schweren Unfall auf der Autobahn getötet worden.
は、訳出に「殺された」とは反映されません。

tötenには誰かの死を招く、引き起こす、という意味がありますので、そこから「殺す」となるのですが、死の原因となることを含意する言葉であることが、単に「亡くなった」を意味するgestorben seinとの大きな違いです。

日本語では、死の原因が外部の力によるものであることを含意している場合も、原因を言及しない場合でも「亡くなった」と言え、原因に言及する場合は「〜によって、〜で」を添えることによって、同じ動詞で表現することが可能です。

ところが、ドイツ語ではtötenの受動態で「高速道路の事故で亡くなった」と訳出できるからと言って、同じ様にtötenの受動態で「目撃者は、その男が現場で亡くなっと伝えた」とは訳せない、ということです。
それは、前述のようにドイツ語のtöten自体に、死を引き起こした外部の要因が含意されているからです。

もし単に、「目撃者は、その男が現場で亡くなった、と伝えた。」としたいなら、
Der Augenzeuge berichtete, dass der Mann am Tatort gestorben ist.
とする必要があり、tötenは使えません。

つまり、

何者かの命が失われたある出来事に対して、誰かがtötenという言葉でその出来事を表わしていたら、その人はその死の要因が外部から働いた力であることを表現したいわけです。

・・ということは。
もし上記の例文の目撃者自身が犯人だった場合、
Der Augenzeuge berichtete, dass der Mann am Tatort gestorben ist.
「目撃者は、その男が現場で亡くなった、と伝えた。」
Der Augenzeuge berichtete, dass der Mann getötet worden ist.
「目撃者は、男が現場で殺されたと告げた。」

どちらを言う可能性が高いでしょうか(笑)。
私なら、事件性がないように装って上の文の言い方をするかな。。

これを書いていたら、ドイツの警察署でカツ丼を出してくれそうな刑事さんと、強面の2人の刑事にめっちゃ詰められたことを思い出しました。。

その話はいずれどこかで。

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。


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