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DUDEN 2020③ 『Genug gegendert!』

ジェンダーはもうたくさん!

さて、表題はある本のタイトルからですが、「ジェンダーはもうたくさん!」みたいな意味です。こんな本も出版されるほどですから、ドイツ国内でもジェンダーニュートラルに対する批判的な意見はよく聞きます。

前回からだいぶ間が開きましたが、今日はジェンダーニュートラルについて、懐疑的な立場などご紹介しようと思います。

下の表は、ドイツの世論調査会社INSAが2019−2020年に行ったドイツ語におけるジェンダーニュートラルに関する世論調査の結果です。

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ドイツ語において、性別を意識した表現(いわゆるジェンダーニュートラル表現)の使用はどの程度重要と考えますか、という問いに対して、どちらかというと重要ではない、全く重要ではないと考える人が62%に達しています。

ジェンダーニュートラルな表現を本当に一人一人が求めているなら、近い将来、多くの人たちがプライベートでも当たり前のように使用するようになっていると思いますが、その道は険しそうです。

大真面目にニュートラルジェンダー変換したら

前回、英語を例に、代名詞をthey、もしくはs/heに置き換えることでジェンダーニュートラルにする方法をご紹介しましたが、今まで存在しなかったような代名詞を使う動きもあるようです。例えば・・・

ae, 

e, 

ey, 

fan, 

per, 

ze, 

zie 

ジェンダー ニュートラルな3人称単数主格のみ。

これだけあって、しかも好きなものを選べて、僕は、私はこの代名詞で呼ばれたいと言えるわけです。自分の友人、知人がそれぞれに違う人称代名詞で呼んでと言ってきたら・・?あれ?あの人はどの人称代名詞だったかしら?この人は・・?

もう、名前でいいや!

三人称でしょ、本人その場にいないんでしょ、わからないんじゃない😏?

意識低いです、かなり高い確率でかなり早い段階で新しい代名詞を放棄している自分が見えます😭

Aさんがこの前、Bさんにプレゼントした本が、なんだかCさんを思い起こさせたみたいで、結果Dさんの誕生日がすごい盛り上がったの。Eさんもよく笑ってたね。」

と誰かに言いたい場合、A-Eの5人がそれぞれ異なる人称で呼ばれたいとして、しかも上の文のように、〜が、〜に、〜の、〜をと主格、所有格、目的格なんて出てきたときの文章の行末を。。。

想像するだにホラー😱

そもそもジェンダーニュートラルだった

ところで、ドイツ語には文法上、男性・女性・中性と存在しますが、そもそも、男性形が具体的な物事を示す言葉として最も始まりにあり、そこから後に抽象的概念を表すような言葉として中性、また女性名詞が生まれてきたという背景があります。

der Händler 商人(男性)das Handel 商い(中性)die Handlung 行動(女性)

ここに生物学的な性はもちろん無関係ですし、der Händlerと言えば、「商いをする人」というだけのシンプルな意味で、der Handwerkerと言えば、これも「手仕事をする人」で、女性も男性も含んでいるというか、むしろそこに男とか女とかの概念をそもそも含まない、まさにジェンダーニュートラルな表現なのです。前回書きましたが、日本語で「同僚のみなさん」という時に、特に対象に男や女といったことを意識しないという、あの感覚です。女性形は、特別に何か考慮する事情があったり、別途に扱わなくてはならない事情があるときに使うというわけです。だからもともとドイツ語はジェンダーニュートラルだった。という考え方があります。ところが、70年代以降のフェミニズムの盛り上がりから、一部でこの文法上の性を間違えた解釈をした、むしろイデオロギー的に間違った解釈をしたという意見もあります。

具体例

では、もともとドイツ語がジェンダーニュートラルであったという考え方で具体的に次の文を例に見てみましょう。

Liebe Bürgerinnen und Bürger,(市民の皆さん)

よく政治家が有権者や市民に呼びかけるときに使う、聞き慣れた言葉です。Bürgerは男性名詞ではありますが、ただ市民という意味ですから、

Liebe Bürger, のみでいいと。

「女性市民」と特に記述、もしくは言い表わさなけれなければならない理由や状況があって初めて女性形のBürgerin/-nenを使用するのであって、その場合でも補助的に加えるのであるから順番も、

Liebe Bürger und Bürgerinnen, が本来正しいというのです。

Liebe Bürgerinnen und Bürger,

がそもそ今使ってるのも間違ってんるんですって。。

そう考えると、ジェンダーミュートラルな表現を実現させるべく、語中に大文字の“I”を突っ込んだり、*(gendersternchen)をつけたりすることが突飛もなく思えたり、正書法に反するといっても、いずれこれに慣れてくる未来も大いにアリだと思えます。

朗報

で、ドイツ語学習者のみなさんには朗報が。

「ジェンダーニュートラル、使う頃には本家のほうで淘汰されている。」

かどうかはわかりませんが💦

ドイツにはこんな試みもあるんだな〜くらいに覚えておくと、学校で習わないジェンダーニュートラル表現をニュースで聴くときの違和感が無くなると思います。

そもそも、言葉より社会を変えることの方が実体を伴う意味のある変革だという指摘は、もっともだと思います。

今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。





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