見出し画像

なぜ人は合理的な意思決定ができないのか

今日は行動経済学のアプローチから「人は必ずしも完全に合理的な意思決定をできない(しない)」という話をします。

まず行動経済学を簡単に説明すると、いわゆる経済学が「人は誰しも合理的な意思決定をすることを前提とした学問」であるのに対して、行動経済学は「人が必ずしも合理的な意思決定をするわけではないこと前提とした学問」です。

経済学と聞くとなにか小難しく思えてしまいますが、実際に私達が生活する中で一度は経験していることが行動経済学で説明できてしまうのでとても面白いです。

行動経済学における代表的な理論には「サンクコスト」、「アンカリング効果」、「プロスペクト理論」などがあります。
その中で今回は「プロスペクト理論」にフォーカスして説明してみたいと思います。

プロスペクト理論とは

プロスペクト理論(プロスペクトりろん、英: Prospect theory)は、不確実性下における意思決定モデルの一つ。選択の結果得られる利益もしくは被る損害および、それら確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデルである。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%AF%E3%83%88%E7%90%86%E8%AB%96

人は生きていく中で様々な意思決定を迫られます。
その中で「不確実性(ある確率でAという結果に、ある確率でBという結果になる)」が絡む場面では一見合理的でない意思決定をすることがあります。
それを説明するのが「プロスペクト理論」です。

以下の例を見てみましょう。プロスペクト理論を展開したダニエル・カーマンとエイモス・トベルスキーが行った実験をわかりやすくアレンジしたものです。
あなたならどっちを選びますか?

質問1: 次のようなくじがあった場合、どちらを選びますか?
選択肢A: 100万円が無条件で手に入る。
選択肢B: コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。

期待値で考えるとどちらも同じ100万円なので、どちらを選んでも同じように感じます。ただし実験の結果では確実に得られる選択肢Aが圧倒的に多かったようです。
次に以下の質問を見てみましょう。

質問2: 次のようなくじがあった場合、どちらを選びますか?
選択肢A: 無条件で100万円失う。
選択肢B: コインを投げ、表が出たら何も起こらないが、裏が出たら200万円失う。

こちらも期待値でもどちらも-100万円なのでどちらを選んでも同じように感じます。先程の質問1で選択肢Aを選んだ堅実派の人はリスクを避けて選択肢Aを選ぶように感じます。
しかし質問1で選択肢Aを選んだ人はほとんど、よりギャンブル性の高い選択肢Bの方を選択肢したそうです。

合理的に考えるとどちらも期待値は同じなので半々くらいの結果になりそうですが、どうして選択が偏るのでしょうか。

なぜ合理的な判断ができないのか

それは人は金額が同じ場合、利得よりも損失のほうが価値づけが大きいからです。プロスペクト理論においては「価値関数」という数式で表されます。

そのため意思決定においてできるだけ損失を回避したいというバイアスがかかってしまいます。これを「損失回避バイアス」や「損失回避性」といいます。

先程の質問を言い換えると質問1は以下のような質問と捉えることができます。

質問1: 次のようなくじがあった場合、どちらを選びますか?
選択肢A: 100万円が無条件で手に入る。
→必ず100万円が得られるので損失の可能性は0%
選択肢B: コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。
→50%の確率で200万円が得られないという損失

このとき、損失の可能性がない選択肢Aを選ぶのは納得できると思います。
次に質問2はどうでしょう。

質問2: 次のようなくじがあった場合、どちらを選びますか?
選択肢A: 無条件で100万円失う。
→100%の確率で100万円を失うという損失
選択肢B: コインを投げ、表が出たら何も起こらないが、裏が出たら200万円失う。
→50%の確率で200万円を失うという損失があるが、50%の確率で損失がない

こう見てみると必ず損失が生まれる選択肢Aではなく、50%の確率で損失がない選択肢Bを選ぶということも納得できると思います。

まとめ

このように行動経済学では合理的に判断できない理由をモデル化して説明しようとします。これは皆さんの業務にも実際に活かせると思っています。
例えばマーケティングにおいてはそのプロダクト/サービスを利用することによる「利得」を訴えるのではなく、利用しないことによる「損失」を訴えたほうが顧客には響いたりします。

行動経済学に興味を持った方は、以下の本がとても読みやすかったので是非読んでみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?