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エッセイ『口説き文句は決めている』を読んで

食と恋にまつわるエッセイ。

こんなシチュエーションでこんな食事をした話や、したいという妄想の話。

心当たりのある恋心やあったらいいなの妄想が、いつか思い描いたことのある理想の恋を思い出させてくれて、絵本の挿絵を見ているようなあたたかい気持ちにさせてくれる、ちょっとくすぐったいエッセイが詰まった一冊。


夜勤シフトの日。休憩中、仮眠室で横になってスマホをチェックすると一件のメッセージが入っていた。

同じ職場のちょっと気になる同僚から写真付きで送られてきたメッセージには"次は一緒に行こう"の文字。日勤終わりのメンバーたちで飲みに行っていたらしい。

"次は絶対誘ってね"

"絶対誘うよ!夜勤がんばってね"

"ありがとう"

"おやすみ"

たったこれだけのやりとりで夜勤の疲れなんて忘れてしまう。

「この前みんなで行ったお店がおいしかったから、今日仕事終わったら一緒に行かない?」

数日後、日勤のシフトが重なった日の退勤前に声をかけられて、うれしくてにやけそうになるのをグッとこらえ、平常心を装い答える。

「いいね。行こう」

メンバーは誰かは確認しないけど、ちょっと期待しながら更衣室を出る。

休憩室で待っていたのは1人だけ。

「じゃあ、行こうか」

行ったお店はいたって普通の居酒屋で、別に特別な何かがあるわけじゃないけど、そうやって行った場所や食べたものが特別になっていく。

そんな恋、なんだかいいですよね。


……という感じの、フィクションにほんの少しの実話を混ぜたエッセイがたくさん詰まった本。

この話の数倍おもしろくてキュンとするエピソードが満載なので、キュンが足りないなと感じたらぜひ手に取ってみてほしい。

読んでると思わず笑顔がこぼれるような、ほのぼのとした時間を過ごせて、ちょっと恋した気分に浸れるはずなので。

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