地方出身、実家は農家。そんな私がアナウンサーになって就活生を応援して気づいたこと。
はじめまして!「あさイチ」でリポーターをしています、アナウンサーの石井隆広と申します。
18歳で熊本の人口5000人の農村から進学で上京して、当初、新宿の高いビル群や、当時イケイケに見えた関東出身の学生たち(※個人の感想です)にたじろぎながらも、それなりに楽しく学生生活を送っていました。
そんな私が、就活をして、NHKのアナウンサーになって、いま、就活生の応援をしています。
そんな中で気づいたことを、こちらでご紹介しようと思います。しばし、お付き合いください。
自己流だった私の就活
まず、いまの就活の話をする前に、私自身の就活を振り返ります。いま30歳の私。就活をしていたのは9年前です。
冒頭にも書いたように、18歳で熊本の人口5000人の農村から進学で上京してきた私も、大学3年生になると就活を意識しだします。そのころは3年生の夏以降に就活が始まっていました。
残暑厳しい日もリクルートスーツを着て、日々駆け回り、エントリーシートをひたすら書いていました。が、就職活動は自己流でやっていました。
親に聞こうにも、農家でしたので就職活動は未経験。もちろん悩みを聞いてくれることはありましたが、具体的なアドバイスは無理だろうと思っていたんです。
就活を指南する本などを見ながら、
いまでもすぐに当時の愚痴が…。
そんな中、先に就活を経験していた兄や大学の先輩、友人たちに聞きながら、やっていました。
ESを出したら、さぁ選考、となるわけですが、そんなにうまくいきません。いわゆる「お祈りメール」も頂きました。
そんなメールをもらったら、もう、一瞬で流し読みです。チラッで終わりです。フンって感じです。
そんなときには友人とご飯を食べて気分転換などしていました。本当にありがたかったですね。
のちに、NHKの内定をもらうわけですが、就活自体は不安が大きかった思い出です。
30歳のいま、就活に向き合ってみて
という経験をした私が、30歳になって再び就職活動と向き合うことになりました。
取材して驚いたのですが、私のころとはずいぶん変わっています。9年前とは全く違う状況に、今の就活生の皆さんは置かれているんです。
まず、エントリーシート。
私の頃は「手書き」で「郵送」も結構ありましたが、今は、ほとんどWEB上で提出です。それどころか、「1分で自己PRをして」というように、自己PR動画を撮って提出してください、という企業もあります。
スマホで動画を撮影するのって、もはや当たり前、って思うかもしれませんけど、自己PRで動画って、あらためて言われると、困りますよね…。自分だと何を話そうって、うーん、と、考え込んでしまいます。
そして、学生のインターンシップへの参加率は、今はおよそ8割に上るそうです。
インターンシップの多くは大学3年や修士1年などの夏に始まりますが、その前に、インターンシップに参加するための選考があります。そして、就活本格化と言われるのは、いまは大学3年や修士1年が終わる春ということですから、もうほぼ通年で就活のことを考えないといけない、ということになりますね。
本当にお疲れ様です。
そして、このコロナ禍。去年は「オンライン面接」が急速に広まりました。去年の就活生は、誰も取り組んだことがなかった新しい就活の形に向き合わなければいけなかったですし、私のときのように、サークルのみんなで気分転換に食事に出かけよう、ということもなかなかできなくなってしまったのです。
アナウンサーのスキルを、就活に、ぜひ
いま、NHKでは、就活生の皆さんに公共メディアとして何ができるのだろうか、ということを考えて、「就活生応援キャンペーン」を行っています。
メディアとして、正しい情報、参考になる情報を、就活生にきちんと届けようと、NHKのWEBサイト「大学生とつくる就活応援ニュースゼミ」で発信しています。
こちら↓
そして、これまでのアナウンサーの経験をふり返ると、あれ?アナウンサーのスキルって、就活にいかせるんじゃない?と思えることが、結構あるんです。
就活は学生と企業のマッチングだ、とよく言われます。
一方で、専門家に取材をしていると、就活で一番残念なことは「学生も企業もお互いのことがよくわかってないのにマッチングをしなければいけないこと」と聞くのです。
理想は、自分(学生)のことも相手(企業)のこともよくわかった上で、マッチングできる、ということですよね。でも、就活という場では、時間も限られますし、プレッシャーがかかることもあります。そのため、学生が自分のことをわかってもらうのって、なかなかハードルが高いんです。
せめて、自分のことはきちんと相手に伝えられる、ちゃんとわかってもらえるようになるお手伝いが、アナウンサーのスキルを通してできないだろうか、と考えたんです。
というのも、アナウンサーの仕事というと、テレビやラジオに出る、ニュースを読む、ナレーションをする、などいろいろありますが、一言で言うと、「情報をきちんと伝える」ということに尽きると思うんです。
まだまだ若輩者の私が語るのは恐縮なんですが、「きちんと伝える」には、しゃべり方、伝える内容、相手に与える印象などなど、様々な要素が大切になってきます。
伝える内容だったら、聞いてもわからない難しい言葉がないか、書き言葉をそのまま話そうとしてないか。
しゃべり方なら、早口になっていないか。
最近増えている自己PR動画は、まさにアナウンサーの仕事そのものとも言えるものです。どこでどう撮影するのか、モノを出す時はどうしたらいいのか…などなど、伝える仕事をしているアナウンサーだからこそ役立ててもらえることってあるんじゃないかな、と考えています。
そして、学生の皆さんのお話を聞いていて気づいたのは、就活についての不安や悩みは、私が就活をしていたときとあまり変わらない、ということでした。
こうした悩み、アナウンサーが普段仕事で抱いている悩みと同じなんです。
…などは、普段「あさイチ」でリポーターをしている私もいつも感じていることです。
こんな悩みに、アナウンサーがどう向き合っているか、ということも、就活生に役立つ情報になるのでは?ということで、2月に就活生の皆さんにそのスキルをご紹介するオンラインのイベントも行いました。
それが、こちら!
そのイベントでは、私、石井が司会を担当。アドバイスをするのは、NHKの新人アナウンサー研修の講師も務めた吉田浩アナ(「おはよう日本」リポーター)、アナウンサーの採用面接も担当した杉浦友紀アナ(「逆転人生」MC)です。
どんなアドバイスになったのか、ここで具体的な内容をちょこっとご紹介。
最近の就活では、「自分のことを動画で30秒でアピールして提出して」という企業もあります。
ということで、「就活応援ニュースゼミ」に参加している学生に「自己PR動画」を撮ってもらい、アナウンサーの視点からアドバイスをしました。
「見られ方」、大事!
まずは、大学3年生(当時)の石川さんのケース。
上のサムネイルを見て頂くとわかるんですけど、BeforeとAfterで表情が違いますよね?
これ光の当たり方が違うんです。パッと見た印象も全然違うと思います。
テレビのスタジオだと、照明がばっちりあって、顔に影が出ないようになっていますが、自宅ではそうもいかないですよね。
石川さんの最初の動画は、顔に影が出て暗く見えてしまっていたので、
とお伝えしました。さらに、早口気味だったので、しゃべるスピードや分量についてもアドバイスをしました。その結果が、この「After」なんです。
自意識過剰、って言われるかもしれませんが、実は、アナウンサーも「見られ方」は意識しています。
スタジオでニュースを読んでいる人の顔に影が入っていたら、気になりませんか?
寝ぐせがついた髪とか、あれ?この人どうした!?って、思うこともありますよね?
そんなときって、アナウンサーが話している内容って、残らなかったりしますよね。なんだか見た目が気になるな、と思われている間にどんどん話は進んでしまう、視聴者の人が取り残されてしまう可能性があるんです。そうならないためにも、ちゃんとした姿で映ることは大事なんだ、と先輩に言われました。
就活のときは、初対面で話をすることが多いですよね?そういうときって、見た目の印象だけが残ってしまうことも起こり得ます。見られ方を気にすることも、しっかり内容を伝えるための大事なスキルだと思うんです。
自己PRで大事な「モノの見せ方」と「言葉の選び方」
続いて、大学2年生(当時)の小野口さんのケースです。
こちらも、BeforeとAfterで違いがありまして…モノをいかに見せるかっていう視点です。
小野口さんは、気になった言葉を長年書き留めてきたノートを紹介してくれました。
画面で小さく見えているだけだともったいない、もっと見たい!とアドバイス。
どこにどう出すのか、ノートの中味も見せるかどうか、という「演出」の要素ですが、かゆい所に手が届く、ではないですけど、相手が興味を持ちそうなところこそちゃんと見せて伝えるっていうことは、アナウンサーが中継リポートをするときに上司や先輩からよく言われる基本のスキルなんです。
あと、言葉の使い方、選び方も、アナウンサーの専門です。
学生のお二人には、アドバイスを受けて「After」の動画を撮影してもらいましたが、「全然違う!自分では全く気付かない点が改善できた」という感想をもらいました。
その言葉を聞いて、あぁ、アナウンサーのスキルって自分が思っていた以上に役に立つんだ、8年間やってきてよかったなぁ、としみじみ。嬉しくなりました。
ぜひ参考になるものがあれば、幸いです。
これからもできることで、就活生を応援させていただきます
再び、就活に向き合ってみると、きちんと自分のことを考えて、将来を描いていく、というところは、私のころと全く変わっていませんでした。
ある就活の専門家が言っていました。
ハッとさせられました。ほんと、そうですよね。どこかネガティブなことを考えがちですけど、そういう心構えって大事だなぁ、と思います。
ネガティブになってしまう原因は、就活そのものの制度やシステムに問題があるのかもしれないし、就活生を受け入れる企業や、世の中の風潮、メディアの伝え方にも課題があるのかもしれない、と取材をする中で感じています。
大きなものをいきなり、ババッと変えていくのは難しいのかもしれませんが、私たちメディアが、もっと学生のみなさんの話を聞いて、企業、専門家にも取材して情報を発信していくことが何よりも欠かせないことだと思います。
そして、就活の課題と言われるものがちょっとずつ明らかになって、いろんな世代の方に共有されていく、そして、少しでも良い方向にむかっていく、そんなことを考えながら、就活生の応援を続けていきたいと考えています。
緊張する時や頭がパニックになった時、役立つかも!?アナウンサーのスキル
就活応援ニュースゼミでは、
などなど、就活にまつわる様々な記事や動画を紹介しています。
毎日新しい記事をUPしていますので、ぜひぜひ参考にしていただければ幸いです。(手前みそですが、社会人として働く私としても、読むの、面白いです)
その他、動画色々ありまして。
まずは、生放送など失敗できないという場面でアナウンサーがどう緊張を乗り越えようとしているのかについて。(私、石井も参考になりました…)
さらに、こちらは、「頭が混乱してしまったとき」。どう立て直しているのか、について。
さらにさらに、就活で遭遇する「想定外の質問」や「無茶ぶりともいえる質問」。アナウンサーならではの視点で考えてみました。
これでもか!ってぐらい、紹介させていただきました。多くて、すいません。でも、この中に、ひとつでも就活生の皆さんに合うものがあると嬉しいです。
これからも、私たちにできることで、就活生を応援していきます。よければ、引き続きNHKの就活情報にお付き合いください。
ぜひ就活生の皆さんに、よい出会いがありますように。
お読みいただき、ありがとうございました。
石井隆広(「あさイチ」リポーター)