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タワマンの最上階で炊くお米は固いのか【息が詰まるようなこの場所で】

外山薫先生の「息が詰まるようなこの場所で」を一気に読みました。率直に、ホラー小説でした。おもしろい作品です。

twitter文学なるものをときどき読んでおり、ショートやSFなどの素晴らしい作品も数々ありますが、この作品はタワマン文学です。

最初から最後まで、タイトルのとおりに、読んでいて息苦しかったです。見栄、嫉妬、羨望、不安、失望、といったネガティブな感情が次々とあらわれて、タワーマンションに住みながら、満たされずに悶々とするさまに、やるせないものを感じました。

他人のことはよく見えるものですし、自分の方が優位に立っていると思うことで得られる安心感もあります。しかし、人と比較することが虚無なことで、なにも意味がなく、無闇に苦悩しているだけなのでしょう。あるいは、他人の敷いた線路からはずれて生きてきたつもりが、実はしっかりと線路の上を歩いていたりするのかもしれません。

閉塞感のある社会において、目に見える形で自分の行動が評価されることを求める気持ちはわかります。それさえも滑稽なこととして、成功者たちの不幸な姿を見ることができます。そこでカタルシスを得られる読者もあるのでしょうけど、私には、ホラー小説に見えました。現実は、残酷なものです。

私は、おいしいお米が食べたいので、低層階でかまいません。誰か、一部屋恵んでください。

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