いま、世界の分断を止める時 ~ウクライナ情勢によせて〜
毎日流れてくるウクライナのニュースに、本当に心が痛みます。
何よりもいま、すべての武力攻撃が停止され、人びとの命が優先されなくてはなりません。しかし、そうはならない現実が、私たちの目の前にあります。いったい、どう考えたらよいのか。何ができるのか。ニュースやSNSを見ながら思い悩む、私もそんなひとりです。
ロシアによる軍事侵攻は、決して許されるものではなく、どんな正当化もできません。即刻、攻撃をやめて撤退すべきです。
しかし同時に感じるのは、私たちが目にする報道や、欧米中心の「国際社会」の主張として伝えられるものが、あまりにも一面的ではないか、ということです。すべてはロシアが悪く、ウクライナを支援する欧米や日本は善いことをしている・・このような善悪の二元論が語られるのを、私たちは今まで多くの場所で見てきました。中東で、アフガニスタンで、朝鮮半島で。善悪論は、「悪」とされる側の脅威を人びとの心に植え付け、敵意をエスカレートさせ、そして、その「悪」を叩くための戦争を正当化してきました。
NATOの東方拡大に対して、これを止めるように求めたロシアの安全保障上の要求が軽視されてきた面は否めないと思います。2014年以降、ウクライナへはアメリカが軍事支援を行い、今年の1月にはNATO諸国が携帯型ミサイルなどを支援しました。今回の侵攻にいたる緊張関係をすべてロシアが作り出した訳ではなく、NATO側がロシアを追い込んでできた側面もあるのです。
いま私は、世界が分断され、再び冷戦の時代に戻っていくように感じています。
戦いを止めるための努力よりも、ロシア制裁の大合唱やウクライナへの軍事支援が重視される事態になっています。ウクライナに対するドイツのミサイル支援や、紛争当事国には軍事支援をしない前例を破る形でのスウェーデンやフィンランドの武器供与には驚きを隠せません。
日本は、ウクライナへの防弾チョッキなど防衛装備品の支援を実施しました。交戦中の国に送るという異例の決定を、「防衛装備移転三原則」の運用指針を変えてまで実施したのです。
ウクライナ危機に乗じて、ロシアを中国に、ウクライナを台湾に見立てて、日本も有事に備えて防衛力を高めるべきだ、さらにはアメリカの核を日本が共有すべきだ、と声高に主張する人たちもいます。実際に、沖縄・南西諸島ではミサイル配備が進められ、「敵基地攻撃論」のもと自衛隊にはより攻撃的な装備がなされています。
軍事力による圧力の掛け合いがエスカレートした結果、ウクライナでは最悪の事態が起こりました。ここから、私たちは何を学ぶべきでしょうか。
「敵国」の脅威をあおり、軍事力を強めていくほど、戦争に巻き込まれる危険は高まるのではないでしょうか。ひとたび戦争が起きれば、犠牲になるのは何の罪もない人びとであり、私たち自身です。
この問題は、ウクライナの人びとの問題であるばかりでなく、私たち自身の問題です。
ウクライナの人びとは支援を必要としています。しかし、「ウクライナ支援」の名を借りて軍事支援をしたり世界の分断を進めていく動きは、私たち自身の未来を危うくします。
日本をはじめ「西側」とされる各国は、軍事ブロックによって相手との壁をつくるのではなく、壁を取り払い、本気で戦争を止める努力をすべきです。リーダーたちは、中国に声をかけて、国連総会の特別会合で棄権票を投じた国々(「ロシア寄り」とみなされるが、どの国も戦争は望んでいない)にも声をかけて、ロシアに停戦を求めるべきです。私たちは市民として、ロシア国内で反戦の声を挙げる人たちを含め世界と連帯して、戦争に反対する声を上げていきたいと思います。
武力での争いは、憎しみを生み出すばかりです。
2022年3月14日
JVC代表理事 今井高樹
3月15日、Facebook Liveでも思いを語っております。ぜひご覧ください。
現地での支援活動に関して
JVCとしては、ウクライナ周辺には活動の拠点を持たずこれまでのつながりも少ないため支援活動は実施しておりませんが、JVCと関わりの深い団体で、現地での支援を実施している「日本チェルノブイリ連帯基金」をご紹介させていただきます。チェルノブイリ原発事故以来、その周辺での医療支援を行っている団体で、現在、ウクライナの避難民の方々への緊急支援を開始されています。
日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)
https://jcf.ne.jp/wp/archives/6538
また、JVCは、国際協力NGOセンター(JANIC)を中心として作成された以下の声明に賛同しています。
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世界にあなたの声を #voiceforpeace
ウクライナ・ロシア戦争に際して同じ時代、同じ世界をともに生きる市民としての表明
https://voiceforpeace.world/
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