it's story of the Mr. 神島 蓮
「じゃあな」って快の言葉が
いつもより暗いトーンで聞こえた。
「お友達ですか?」
「ああ、
うん。
高校時代からのね」
彼女が快を知らない事に違和感を覚えた。
知るはずも無い。
彼女は汐音じゃないんだから。
「浴衣、とっても似合ってますね」
「いや、それは心羽ちゃんでしょ。
向こうから歩いて来た時、
花が近づいて来たっ
page 19 夏の歯車
it's story of the Mr. 神島 蓮
快「マジ…かよ」
行き交う人の波に、
赤い花の浴衣はとてもよく目についた。
彼女の髪に刺してる白い花が近づく度
陽炎みたいに眩しくぼんやり反射して
ただそれを呆然と見ていた。
噴水のパウダー状の霧が
露天の街灯に、ちりぢりに舞う
粉々に散っては消えていく
繰り返し
繰り返し
生まれては消える
ザー・・・
page 18 涼夏
it's story of the 神島 蓮
快「お前さ、
悲惨な結末になったらどうする?」
噴水広場の水しぶきを浴びながら
快は呟いた。
まぁ、顔も見た事もない人との
待ち合わせのシチュエーションだから
そんな風に思って当然だ。
ははっ
蓮「悲惨って」
快「例えば全体的に…こう、
デラックスとか」
はははは
蓮「デラックス 笑」
快「じゃな
page 17 兄のセレナーデ
it's story of the Mr. 梛木 亜門
「いいよ お兄ちゃん」
「後ろに乗っけてくからコレ被って」
久々に見た白地に赤い花の浴衣
心羽がこれを最後に着たのは
何年前だっただろう…
「電車で行くからいいってば」
亜門「誰かと一緒ならまだしも
浴衣姿で混雑した電車に乗せられ
るかよ」
心羽「だからって
浴衣でバイクの後ろって困るよ。
髪も浴衣も崩れちゃう」
亜門「んなもん、着いた
it's story of the Mr. 八木 快
・
快「浴衣とか、反則だろ」
蓮「いや、
浴衣持ってるって言ったら
目印にもなるし
着てきてって言われたから」
・
いつもの公園は露店が並び
いつもと全く違う世界を作っている
夕暮れは薄紫のグラデーションで
夜へ向かう階段を作り
祭りで賑わう人波を
徐々に暗い青に染めてい
it's story of the Mr. 神島 蓮
初めて聞いた声があまりに綺麗で
こういう時ってまず、
名前を聞いたりするのが普通なのに
話の筋書きもブッ飛んじゃうような
まるで舞い上がった行動の俺、
あーんど
凄く頑張って冷静を装う俺に
自分で苦笑してしまう。
「日本人の奥ゆかしい感性は
直接的な“愛してる”を言わないで
一緒に月を眺める事が
it's story of the Miss 梛木 心羽
・
「もしもし
「ぁ、もしもし」
・
「えっと、こんばんは
改めて…神島蓮といいます」
胸が痛い程ドキドキと音を立てて
携帯を握る手に力が入ってしまう
「夜分の時間帯にかけちゃってるけど
今って時間大丈夫?」
低い声が優しく耳をくすぐる。
一瞬ふっと笑った声に胸の奥がキュッと
it's story of the Miss 梛木 心羽
夏の夜の風には
少し切なさが混ざっている
窓から入る風が髪を揺らして
息をするとスッと入って来る
そんなblueな想いをそっと受け止める
部屋の照明は暗いのが好き
理由は月の明かりが優しいから
今夜も
パソコンのページに画像を載せる
カタッ
ブログにメッセージを下さる方が居て
その人の言葉に独特の優しさを感じて
いつも
it's story of the Mr. 神島 蓮
仕事が終わってシャワーを浴びて
コンタクトから眼鏡に変える
冷蔵庫からビールを出して
パソコンを立ち上げると大体この時間
このルーティンに1つプラスされたのは
“織姫”のブログをチェックする事
今日は空の画像…
だいたいこのくらいの時間に
彼女からのメッセージが届く
“お元気ですか?”
it's story of the Mr. 八木 快
「マジで言ってんの
それ!」
iPhone片手にビールに口をつけてたら
蓮のあまりに驚きの内容に衝撃を受けて
吹き出しそうになった。
「デカいんだよ声が」
「ちょっと待て!
早まるな!
お願いだから一回考えよう」
「蓮、いいか、
ブログで繋がった相手と実際に会うなんて
そんな
it's the story of Mr. 八木快
・
コウは蓮の事をずっと好きだった
・
高校時代いつも3人で居たから
言葉にしなくてもお互いの思いは手に取るように分かってしまっていた。
クラスの中でも飛び抜けた人気の蓮が
他校の1つ先輩の汐音さんと付き合う
ようになってから
コウは心から笑わなくなった
いつも視線の端っこで蓮を見てた事
3人のバランス