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page 18 涼夏

it's story of the 神島 蓮

       快「お前さ、
    悲惨な結末になったらどうする?」

   噴水広場の水しぶきを浴びながら
   快は呟いた。
   まぁ、顔も見た事もない人との
   待ち合わせのシチュエーションだから
   そんな風に思って当然だ。

    ははっ

       蓮「悲惨って」

  快「例えば全体的に…こう、
         デラックスとか」 

    はははは
      蓮「デラックス 笑」

  快「じゃなかったら、
    顔のデッサンが…こう、
          狂ってるとか」

    身振り手振りを交えながら
    真剣な表情で話す快に笑いつつも
    
    その展開も充分あり得ると
    何度も考えていた。

     蓮「や、大丈夫だよ」
     快「何がだよ」

     蓮「そういうんじゃないんだ」
     快「どういう事だよ」


  俺が直接会って聞きたいのは
  “あの詩”の事。
  
  写真しか載せていないブログに
  唯一詩を載せた理由はどうしてかと
  聞いてみたい。

  “あの詩”は、誰が作ったのか?

  あの詩の織りなす世界観に触れたい
  それが本来の目的なんだ。

  快「わかんねぇよ」
  蓮「飲み過ぎだろ、お前は笑
    ボディーガードの任務
    ちゃんと頼むよ」

         ・

         ・

         ・

    暗闇を彩る祭りの柔らかな照明
   
       行き交う人波
    
     待ち合わせのカップル

     肩車の親子とりんご飴

       学生達の笑い声

     ジョッキを運ぶアルバイト

      並んで手を繋ぐ親子

         ・

         ・

         ・

   噴水の水のカーテンを避けながら
    1人の女の子が歩いて来た。

  「白地に赤い花の浴衣を着ていきます」
      と、彼女は言った。

   「黄色いヒマワリを探しますね」
      と、優しい声で。

   
   小さかった赤い花の浴衣の女性は
   人波に紛れながら近づいて来る。

        近づく程、
       距離が縮まる程に
        雑踏が遠のく

     この空間に存在するのは
      俺と彼女の二人だけ

        近づく程、
       距離が縮まる程に
        目を疑う。


      そんな訳在る訳ない      

         ・

         ・

         ・

      「  汐音  」

         ・

         ・

         ・

        〈18〉

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