飼いたいワー 〜子犬とペンギンと、時々、カメ〜
子どもの頃、ペットを飼うことに憧れた。
とは言っても、実のところカメは飼っていた。しかし私がずっと飼いたがっていたのは犬とか猫とかだったので、ここでは便宜上ペットを飼わせてもらえなかった幼少期ということで話を進める。すまない、デカとチビ(カメの名前)。
飼いたい飼いたいと何度かゴネてみたが、そのたび両親に言われたのは、
「大人になって一人暮らしをしたら飼いなさい。」
そう言われるたび、自分が大人になって一人で暮らすなどという子どもの想像のキャパシティを超えた果てなき未来に思いを馳せつつ、諦めてきた。
当たり前のように、犬を飼っている子は犬が好きだし、猫を飼っている子は猫が好きだし、ハムスターを飼っている子はハムスターが好きだった。持っているシールを交換し合う遊びが流行っていたが、犬を飼っている子は犬のキャラクターのシールばかり持っていたし、猫を飼っていれば猫、ハムスターを飼っていればハムスターばかりといった具合である。
一番身近にいる動物を一番好きになるというのは至極真っ当なことだが、
私にとってはその感覚が不思議だった。カメのシールを欲しいと思ったことがなかった。すまない、デカとチビ。
ペットを飼っていない私が一番好きになった動物は、ペンギンだった。生き物として面白いし、見た目も妙な可愛さがある。犬猫ハムスターなどの主要人気動物とは一線を画した立ち位置も気に入っていた。ペンギンは立ち位置とか知らんだろうけど。
当然の流れで「ペンギンを飼いたい」という願望も芽生えたが、ペンギンを飼っている人なんて聞いたことがなかったので、ペットとして飼うのが困難な動物なのだろうということを子どもながらに感じて納得していた。
ある年のクリスマスが近づいてきた頃、私はサンタクロースに手紙を書いた。
「サンタさん、子犬が欲しいです。」
紙に書いたものを窓の外側に向けてセロハンテープで貼った。
サンタさんはそれを見ていたのだろう。クリスマスの朝、私の枕元にはプレゼントの包みと手紙が置いてあった。サンタさんからのお返事である。心して読むと、
「長瀬ちゃん、子犬は大人になってから飼おうね。」
やたらとヨボヨボした筆跡だった。
プレゼントはどうやら子犬ではないらしい。となると何だろう。包みを開けて中から現れたもの。
それは、ピングーのシュレッダー(手動式)だった。
今になってみると、子どもへのクリスマスプレゼントとして不適格過ぎて突っ込まざるを得ない、なんならサンタクロースとかいう2人組に若干怒りを覚えるレベルだが、当時の私はクリスマスプレゼントをもらったというイベントとしての喜びの方が上回ったようで特にショックを受けることはなかった。さっそくシュレッダーを取り出し、ハンドルを回して折り紙を粉々に裁断して遊んだ。
しかし、当然ながらそんな遊びは一週間もすれば飽きてしまい、子犬の代わりにもらったシュレッダーは棚に放置されるようになった。どうやら母が葉書や請求書を処理する際には重宝していたようだ。ちゃっかり者のサンタクロースである。
そんなわけでサンタも子犬は与えてくれず、その後もペットは一人暮らしをしたら飼えばいいと言われ続けた。
時は流れ、大学卒業後、就職で一人暮らしをはじめることになった時、私は思った。
「飼うからな!本当に飼うからな!」
そうして私は今、関根と一緒に暮らしている。
シュレッダーをくるくる回しているあの頃の私へ。うちには今、子犬でもなく、ペンギンでもなく、前髪のあるうさぎがいます。
関根を飼い始めたときの話はこちら↓
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