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【禅 ZEN】人の話を聴くときの十六の心得

 心から心へ伝わる仏法の極意

 心から心へと伝えられるという意味の「以心伝心(いしんでんしん)」
と同じ禅語に「拙華微笑(ねんげみしよう)」があります。
これも先述の「不立文字」と同じく、『無門関』にあることばです。
 お釈迦さまの十大弟子の一人に
摩迦葉尊者(まかかしようそんじゃ)がいました。
優れた頭脳の持ち主であったことから、
「頭陀第一(ずだだいいち)・迦葉尊者」と呼ばれています。
 あるとき、お釈迎さまが霊驚山(りようじゆせん)
(霊山(りようぜん)ともいう)というところで説法されたとき、
「金波羅華(こんばちげ)」という一本の花を示して聴衆に微笑みました。
 けれども、それが何の意味か、誰にもわかりません。
そのなかで、たった一人、迦葉尊者だけがにっこりと微笑みました。
 これを仏典はこう伝えております。

世尊、昔、霊山会上に在って、
華を描じて紫に示す。
しゅ
是の時、衆皆黙然たり。
惟迦葉尊者のみ破顔微笑す。
世尊云く、
「吾に正法眼蔵、涅槃妙心、
実相無相、微妙の法門有り。
不立文字、教外別伝、摩詞迦葉に不嘱す」

自信をもって生きていきましょう。
世難、昔、霊山会上に在って、を拙じて製に示す。

 後半、難しいことばが続いていますが、
これはみな「仏法の極意」ということ
なのです。
それをすべて迦葉尊者に授ける、
とお釈迦さまはおっしゃったのです。
 ことばを抜きにして仏法が伝えられるという、
その原点がここにあります。
 心から心に伝える、ということについては、
「不立文字」「以心伝心」のところ
でも触れました。
ことばで熱弁をふるうよりも、
一輪の花を差し出して黙って微笑むことで、
大切なことを伝えているのです。
 霊鷲山の山上は、
実際に行ってみるとそれほど広いところではありません。
経典には八万四千人、一万二千人、千二百人、
などと聴衆の数が示されていますが、
これは「多かった」ことを強調したのでしょう。
 沈む夕日を背にされてお釈迦さまは説法されたといいます。
お釈迦さまから聴衆の顔はよく見え、
聴衆からお釈迦さまのお顔はよく見えなかったはずです。
おそらくまばたきもしないで、
説法に聴き入ったことでしょう。
 お話のあとには、今でいう質疑応答がありました。
さまざまな問いが出され、
それについてお釈迦さまはていねいに答えられています。

 説法を聴くときの心得

 説法を聴いたり質問したりするときには、
「心得」がありました。



『優婆塞戒経(うばそくかいきよう)』の
「教えを聴く者の心得・十六事(じゆうろくじ)」には、
次のようにあります。


 他(ひと)に従(したが)いて聴く時には
十六事(じゆうろくじ)を具せよ。

一には時を以(も)って聴け
(聴くべきときにしっかり聴きなさい)。

二には聴かんことを楽(ねが)え
(聴けることを悦(よころ)びとしなさい)。

三には至心(しいしん)に聴け
(心を込めて聴きなさい)。

四には恭敬(うやま)いて聴け
(戴(いただ)く心で聴きなさい)。

五には過(とが)を求めずして聴け
(悪い意味に受け取らないこと)。

六には論議のために聴かざれ
(論議に役立てようとしないこと)。

七には勝(まさ)らんがために聴かざれ
(いつかやりこめようと思って聴いてはならない)。

八には聴く時に説く者を軽(かろ)んぜざれ
(あの程度かと思わないこと)。

九には聴く時に法を軽んぜざれ
(つまらない話だと思わないこと)。

十には聴く時に終に自らを軽んぜざれ
(自分には難しいなどと思わないこと)。

十一には聴く時に五蓋(ごがい)を遠離(とお)ざけよ
(心を覆ってしまう五種の煩悩、貪り、怒り、眠り、ざわめき、疑い、を寄せ付けないこと)。

十二には聴く時に受持読誦(たもちよむ)ことのためにせよ
(忘れないように暗誦(あんしょう)すること)。

十三には聴く時に五欲(ごよく)を除かんためにせよ
(眼(げん)・見る、耳(に)・聞く、鼻(び)・嗅ぐ、舌(ぜつ)・味わう、身(しん)・触れる、などの欲望を除くこと)。

十四には聴く時に信心を具せんがためにせよ
(信じて疑わない心を持つこと)。

十五には聴く時に衆生(しゅじょう)を調(ととの)えんがためにせよ
(みんなが心を一つにして聴けるように念ずること)。

十六には聴く時に闇(やみ)の根(ね)を断(た)たんがためにせよ
(尽きない煩悩の根を断ち切ること)。

 霊鷲山の夕日の美しさは格別です。何十種類という小鳥がさえずり、
別天地を思わせます。
教えを求める人でいっぱいで、
ざわついていました。
 その聴衆の前に示された一輪の花。その意味をにっこりと微笑んで理解したのは迦葉尊者だけでした。
 この「十六事」を見ると、
当時の霊鷲山でのお釈迦さまの説法が、
素直に受け入れられなかったことを表しています。
おそらく、後世に付け加えられて十六事になったのでしょう。


こちらの内容は、

『気持ちがホッとする禅のことば』

発行所 株式会社静山社
著者 酒井大岳
2010年1月5日 第1刷発行

を引用させて頂いています。



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