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【創作短編】bbBEELZEBUBBUZZESss(後)


人は学習する。


羽根を持つものからは飛び方を学ぶ。鰭や水掻きを持つものからは泳ぎを学ぶ。子どもは大人から生活と言語を学ぶ。基礎から応用へ。

大人もまた、他より情報を仕入れて学ぶ。より効率よく、より利便性を追求して、取捨選択をしながらも――実際は、遭遇するすべてのものから、大なり小なり学んでいる。

口の悪いものからは悪口を。胡麻擂り野郎からはその方法を学び取る。悪魔からは――――



そして、人は、ただ学習するだけ、ではない。

ただの模倣に留まらず、自己の能力として定着させ発展させ、原典を凌駕してこそ。それでこそ「地上の支配者」だ。



「――そうして、その先にはもう、人に意思なぞ必要ないんです。拡散、また拡散。伝染に次ぐ伝染。そこに存在するのは意思なんてものじゃなく――ただの、『システム』というやつですよ。

ひとたび大きな流れに乗ってしまえば、あとは自動で進んでくれる。あとからあとから、蜜は無限に湧き出てくる。何とも、美味い話じゃありませんか。

何、旦那のやる事はこれといって、今までと変わりありません。言ったでしょう、私と楽しく、お喋りしてさえくれれば良いと」


蠅の口調は心なしか、次第にくだけて、馴れ馴れしさが増すようだった。甘く熟し切ってやがて腐敗した、果実の腐汁が耳から脳に、垂れ込んでくるかのように、どろどろとした悪心の感触がおれを浸す。


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