のねずみ

純粋文学培養のねずみ。即、実益につながる事ばかりが求められている世の中で、「純粋な芸術…

のねずみ

純粋文学培養のねずみ。即、実益につながる事ばかりが求められている世の中で、「純粋な芸術性」を追究して日々、文をつくる無名のねずみ。糞真面目から御巫山戯まで。ここは様々に着想を試す、実験場です。

マガジン

  • 詩や詞や私的な物置場

    題の通りに。 詩人ではない自分の、シテキな試みを留める。

  • 小品集「ねずみ色のややくらい方」

    心血を注いだ一連の短編作品集。人間の精神世界の発現を、ややくらい印象を伴う生物たちに託して。

  • 小品集「やさしいねずみ色」

    親子で読める、ほのぼの、ゆったりした短編物語集。

最近の記事

【詩】早春

甕に白梅の蕾の充ちる 彼女の踊れば踊る程―― まるで一幅の画の様な 景色を月が映し出す 無観客の舞台 冴え冴えと あおく しろく 染められた 静寂の庭で彼女は踊る とうに壊れたオルゴール 枯れた手脚は疲れを知らず 音なき調べをなぞるだけ ざらざら乾き 汚れ切り 砂に地面に紛れた甕は 空に虚ろに ぽっかりと  口を開いたまま じっと 打ち捨てられて 誰からも 忘れ去られた庭の隅 未だ固い蕾は咲かずして落ちる 未練も無念も執着もなく 惜しまず惜

    • 【散文詩】ときさびた噴水塔

      満月が荘厳な 孤独の表情で差し覗く噴水塔 いくつもの時間に荒び果てた 石と 水と 月光だけが白く 静止の境を生きている ・・・どこからか演説の声。 ” Edel sei der Mensch! ” 人類よ孤高たれ!と、 鮮烈に時代を導いた、彼等はとうに此処から去った。 ――1冊100円の名著を持って、私は許されない壇上に進む―― 遥かを見渡せば月光に目が眩む あの月面[うえ]では家畜共が、今も黙々と輝く糸を紡ぎ出していて この地上[した]へまでそれを、

      • 【新釈・グリム童話】星銀貨 -Die Sterntaler-

        原作グリム童話:Kinder und Hausmärchen; Die Sterntaler ドイツ語を自分の言葉に直すとともに、 物語の余白を想像し、独自の付け足しと改変を加えています ~~~~~~~~~~ 「むかし、むかしのものがたり。」 ☆☆☆ 夜道を子どもが歩いている。 この子どもはまだ幼いというのに、2親を相次いで病で亡くし、他に親戚も、引き取り手の当ても無かった事から、貴族の寄付金で運営されるまちの慈善養護施設へ入れられたのだが、 何しろ家が元々た

        • 【創作短編】bbBEELZEBUBBUZZESss(後)

          人は学習する。 羽根を持つものからは飛び方を学ぶ。鰭や水掻きを持つものからは泳ぎを学ぶ。子どもは大人から生活と言語を学ぶ。基礎から応用へ。 大人もまた、他より情報を仕入れて学ぶ。より効率よく、より利便性を追求して、取捨選択をしながらも――実際は、遭遇するすべてのものから、大なり小なり学んでいる。 口の悪いものからは悪口を。胡麻擂り野郎からはその方法を学び取る。悪魔からは―――― そして、人は、ただ学習するだけ、ではない。 ただの模倣に留まらず、自己の能力として定着さ

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        【詩】早春

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        • 詩や詞や私的な物置場
          9本
        • 小品集「ねずみ色のややくらい方」
          10本
        • 小品集「やさしいねずみ色」
          2本

        記事

          【創作短編】bbBEELZEBUBBUZZESss(中)

          実際、蠅の声はその小っぽけな虫の躯ひとつから発せられているとは信じられないほど、地声からして既に大きく、美しい声等とは到底言えないけれども、一言一句、発音も明瞭だった。 どんな周波数を持っているのだか知れないが、まさに、耳を塞いでも入ってくる、否応なく届かす声、だった。 悪魔は耳から犯すという・・・・・・ これも、何処かで読み拾った知識である。 おれは当然ながら、いくら声がデカかろうが、こんな卑しい蠅ごときに口頭でやりこめられるような心配はしていなかったが、それにして

          【創作短編】bbBEELZEBUBBUZZESss(中)

          【創作短編】bbBEELZEBUBBUZZESss(前)

          さっきっから、 珈琲茶碗[コーヒーカップ]の縁の所に、1匹の黒い蠅が留まって、せわしなく手を摺り、脚を摺り、していたのだが、 そいつがおもむろに人間の声と言葉でもって喋りだしたには、平生より冷静沈着を自負しているさすがのおれも、危うく魂が消えかけた。 「御機嫌よう、旦那、へへ、素敵な御庭で。ちょいとお邪魔を致しております」 「・・・どうぞそんなに、睨まないでおくんなせえ。羽根を持ち、空を飛ぶという、この憐れな宿命を背負った弱小生物に、ほんの一刻ばかり、休息の場をお貸し

          【創作短編】bbBEELZEBUBBUZZESss(前)

          【らくがき】重い腰

          【らくがき】重い腰

          【らくがき】TWINS×2

          【らくがき】TWINS×2

          +2

          【スケッチ】酒器に関する案 // いつでも // たのしく // おいしく //

          【スケッチ】酒器に関する案 // いつでも // たのしく // おいしく //

          +2

          【創作短編】ゆるり夢語り(漆)

          (壱)(弐)(参)(肆)(伍)(陸) ー漆ー ところが、まさに美人の正面顔へ、ズーム・インしようという瞬間、またも前触れなく場面は転換する。 其処は仄暗く、冷たく湿った・・・洞窟のような場所だった。 狭いようで、且つ、だだっ広いような、奥行きの測れない茫洋の地に、僕は立っている。そうしてその場所の空気は、今迄美人から匂っていたのと同じ、甘く華やかで動物的な――麝香のような香気に隈なく満たされていた。 今度は「そこはかとなく」なんてものじゃない、むせかえるほどの香りは

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          【創作短編】ゆるり夢語り(漆)

          【創作短編】ゆるり夢語り(陸)

          ー陸ー 箱の中から、1人の女が立ち上がる。 水モ滴ル好イヲンナ、と言うが、本当にたったいま湯から上がった所かのように濡れているんだ。ちゃんと着物――町人風の和装をしているのだが、それごと、全身ぬらりと濡れていて、しかも水に溺れたような冷たい悲愴感はなく、薄っすら湯気さえ立って見える。 文字通りの、「絵に描いたような」美人だった。 箱と同じく時代がかった――平安美人と言うのかね、師宣の見返り美人画のような瓜実顔で、立ち姿も丁度それに似ている。 艶々と、やたら神々しく輝

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          【創作短編】ゆるり夢語り(陸)

          【創作短編】ゆるり夢語り(伍)

          ー伍ー 辺り一面に散乱しているのは、蓋の閉まった木箱や紙箱、口の閉じた袋や巾着、それから紙や布で包まれた何か・・・・・・素材から、色、形、大きさ、厚みも様々な容れ物と包みばかりだった。 それにしても、ようやく中身が出て来たというのに、やっぱり何が入っているのか判らないとは。まるで「おばあちゃんの旅支度」だ。 え?――つまりね、1つ大きな鞄があるだろ。その中に、またひとつずつ小箱や巾着で仕分けされた、いくつもの物が詰め込まれている。 万一の用心も怠らないから、こっちには

          【創作短編】ゆるり夢語り(伍)

          【創作短編】ゆるり夢語り(肆)

          ー肆ー 方法さえ知っていれば、「時間の調緒[トキノシラベ]」を見つけるのは至って簡単だ。 身の周りを注意深く観察して、今現在の自分と過去との繋ぎ目を探せば良い。コツは視覚に頼らない事。指先の感覚に集中しながら、あちこちを撫でたり、摘んだり、していると、 1箇所、ささくれというか、ちょっとしたとっかかり的な部分が見つかるだろう。魚肉ソーセージのあの赤いシールみたいに異質な箇所がね。 ぴったり貼り付いているかもしれないから慎重に剥して、そこからは少し力が必要だ。ぐーーっと

          【創作短編】ゆるり夢語り(肆)

          他を排除し・拒絶する事に依ってではなく、 一切の事柄を受容し・熟慮した上で 猶「それしかない」という、 不惑の精神がようやく到達可能と為す とぎすまされた純粋性をこそ追い求む。

          他を排除し・拒絶する事に依ってではなく、 一切の事柄を受容し・熟慮した上で 猶「それしかない」という、 不惑の精神がようやく到達可能と為す とぎすまされた純粋性をこそ追い求む。

          【創作短編】ゆるり夢語り(参)

          ー参ー さて、では、そうもリアリスティック且つアン・リアリスティックに鼠が引っ張っている物の正体は一体何だったか?と言うと、それは「時間の調緒」なんだね。 「時間の調緒[トキノシラベ]」が何かって?まあ待ちたまえ、今、説明するとも。それにしても厄介だな・・・・・・ ・・・いや、この時、夢の僕にはごく当たり前のものとして了解されていた、或るひとつの仕組みがあって、それを説明しない事には始まらないんだが・・・・・・これが、改めてこの現実世界の言葉に直そうと思うと、非常に難し

          【創作短編】ゆるり夢語り(参)

          【創作短編】ゆるり夢語り(弐)

          ー弐ー 鼠は何とも一生懸命に、何か・・・綱のような物の一端を握り、引っ張っている。 腰を落として両脚を踏ん張り、両手いや両前脚でもって、うんとこしょ、どっこいしょ、と、思わず声を当てたくなるほどの――丁度、地引網とか、綱引きとかをやっているような感じで――うん?そう、鼠がだとも。 これが、その人間じみた動作といい表情といい、丸きり漫画ちっく。 あまりにコミカルなその印象は、「トムとジェリー」とか、「おおきなかぶ」とか、そういった古典的・お伽噺的イメージに近いのだけれど

          【創作短編】ゆるり夢語り(弐)