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「汗」で疲れを見える化する グレースイメージングが提案する新たなスポーツのあり方~前編~

【この記事に登場する人】

中島大輔(なかしま・だいすけ)。2008年慶應義塾大学医学部卒業。2019年慶應義塾大学医学研究科修了。大学院在籍時に汗中乳酸をリアルタイムに計測可能な技術に出会い、2018年同技術の展開を行う株式会社グレースイメージングを創業。



「疲れを定量的に可視化する」というアスリートにとって夢のような技術を持つのが株式会社グレースイメージングだ。自転車、マラソン、水泳など様々なスポーツと積極的に共同プロジェクトを行い、データを集めプロダクトを洗練させてきた。同社代表取締役で整形外科医でもある中島大輔氏へスポーツ産業との取り組み、今後の展望をうかがった。


-株式会社グレースイメージング創業のきっかけを教えてください。

私は元々整形外科医として臨床業務に従事していました。出身大学である慶應義塾大学に戻ってきてからは研究や論文執筆も行っているのですが、その研究過程の中で汗の乳酸を計測する技術を持つ企業と出会いました。顕著な結果を出せていたのですが、それを社会に生かしたいと考えたことがきっかけです。


弊社はいわゆる「大学発スタートアップ」で、大学研究の社会実装を目的として2018年に創業しました。汗に含まれる乳酸を計測できるウェアラブルデバイスを開発し、運動による疲労度を可視化することで、医療やスポーツに活用していただくことを目指しています。

-大学研究の社会実装にはどのような難しさがありますか?

医学系の研究には、病気やケガの治療につながる「治療もの」と、からだの状態を把握する「診断もの」に区分されます。私は後者の研究が好きでいくつも研究を行ってきたのですが、ビジネスにつなげるのが比較的難しい分野です。


前者はシンプルに症状が改善されるので結果が明らかですが、後者は「この数値がわかったとしてどう活用するの?」という質問に明確な回答を出す必要があります。


弊社は、数値を測る機会だけでなく、付加価値を提供していきます。アスリートであれば、疲労度の変遷を分析することで、適切なトレーニングの強度や内容まで分かるところまでサービスを作り上げていきたいです。


-実際に社会実装に成功した例はありますか?

最近ではさいたまマラソン2024の参加者に向けて「汗乳酸測定によるマラソンカウンセリング」を実施しました。

昨年度スポーツ庁の事業「SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD」を一般社団法人さいたまスポーツコミッションと取り組んでおり、2023年12月23日(土)・12月24日(日)、2024年3月16日(土)・17日(日)に実証実験を行いました。


この実証実験では、運動中の汗に含まれる乳酸を測定し、有酸素運動から無酸素運動に切り替わるタイミングを可視化し、フルマラソン完走に向け、適正速度・ペースや、目標タイムに届く可能性について測定するものです。


3月の開催時は、比較的強気の価格設定を行いましたが、定員の約5倍の応募が届き、実施後のアンケートではサービス内容や価格に関する満足度の高い回答が多く、手ごたえを感じています。

-強気の価格設定での高いトラクションはとても心強いですね。このマラソンカウンセリングについてはどのようなニーズをつかむことができたと考えてますか?

「フルマラソンで3時間切りたい」「完走したい」などそれぞれの目標達成に向けた計画的なトレーニングを求めるマラソンランナーの方が多かったです。


「自分でなんとなく基準を決めてトレーニングをしている」傾向が強く、正しい方法で取り組めているのか不安を抱えている方が目立ちました。

自分の体の中で何が起こっているのかを定量的に把握して、適切なトレーニングメニューを提供してもらえるという点に価値を感じていただいたのだと思います。


また汗乳酸測定は、指導者やトレーナーの方にとっても有益なサービスだと考えています。これまで指導に利用できる手軽なツールが存在せず、フィーリングや独自の理論に頼らざるを得ない状況でした。


本サービスを用いることで「あなたの代謝がこれくらいで、このペースが良いですよ」と客観的なデータを基に指導ができるので、より効果的で説得力のある指導ができます。

実際にマラソンカウンセリングを受講いただいた方は大会で良い結果を出される傾向にありました。



<取材・文>

佐藤大輔(Spoship編集部)

【関連リンク】

株式会社グレースイメージング 公式HP

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