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福岡から新たなビジネスモデルの構築へ 九州を代表するクラブを目指す福岡J・アンクラス

昨年からアマチュアスポーツメディア事業を行う株式会社グリーンカードとパートナーシップ契約を結び、「ばりキャリ隊」や「なでしこリーグ1部昇格プロジェクト」と題したクラウドファンディングなど様々な取り組みを見せる福岡J・アンクラス。

クラウドファンディングでは女子サッカークラブ史上最高の626万円という実績を残すなど応援の輪は広がりつつある。株式会社福岡アンクラス経営企画室室長 伊藤隆太朗氏に話を聞いた。


©︎anclas



-福岡J・アンクラスについて教えてください。

福岡女学院中学校・高等学校のサッカー部をルーツとし、1986年に誕生しました。

チーム名の「J」は「女学院」に由来するもので、なでしこリーグ発足を機にクラブ化し現在に至ります。

ちなみに、河島美絵監督も福岡女学院出身です。

選手は今期新加入の12名を含む合計29名で、福岡県全域を拠点として活動しています。

なでしこリーグ2部に所属し、2023シーズンは4位という戦績でした。

なでしこリーグ1部昇格、そしてWEリーグ参入という目標に向けチームの体制強化を頑張っています。

昨シーズンは得点力不足を課題としていたので、オフシーズンは河島監督自ら全国を回ってスカウティングを行うなどし積極的な補強ができたと考えています。



-チーム運営に関して課題はありますか?

運営経費に関するところで言うと遠征費が最も大きな問題です。交通費、宿泊費などで昨シーズンは9試合で600万円を超えましたが、アウェー戦は収入がなく手出しのみです。

また、試合会場も大きな問題の一つです。

試合会場はホームチームが手配をするのですが、Jリーグ、高校サッカー・中学サッカーなどと会場の取り合いになってしまい、サッカーが人気で競技人口の多い福岡では現状なでしこリーグの優先度が低くなっています。

福岡県全域がホームタウンであるため可能であれば福岡県内で開催したいのですが、スケジュール上福岡県全域、福岡県外も含めた広範囲のエリアからキャパシティやファシリティの条件を満たしたスタジアムを探しているのが実情です。

女子サッカーの最高峰であるWEリーグに上がるためには優先的に使えるスタジアムが必要なので、中長期的に安定的に利用できるスタジアムの確保を目指しています。


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-収益という面でいうと先日まで実施されたクラウドファンディングでは目標金額を大きく超える6,246,000円という大成功を収めました。これをどう見ていますか?

決して簡単な目標ではありませんでしたが、多くの方々にご支援いただき達成することができました。

女子サッカーチームのクラウドファンディングでは、おそらく過去最高額となる支援金をいただきました。

なでしこ2部のチームとしてこれを達成できたというのは非常に大きな出来事です。

ポイントは3つあったと考えます。


1つは先ほどお話しした今オフの積極的な補強です。

クラウドファンディング実施期間(2023年12月25日12:00~2024年2月22日)選手の移籍が立て続けに発表されました。

アンクラスサポーターの方からの後押しだけでなく、移籍してくれる選手個人のサポーターの方からもアンクラスに注目してもらえました。


2つ目は草の根による営業・広報活動です。

福岡J・アンクラスは、選手5人とコーチ1人がスポンサー営業や広報業務に従事していています。

クラファン実施期間は、クラファンの営業・広報に専念、注力することで草の根で認知を広げ協力を仰ぐことができました。

この期間はサッカースクールのコーチも時間の合間に飛び込み営業を行うなど泥臭く一丸となって営業努力を行いました。


そしてSNSでの拡散も大きかったです。

ほぼ毎日選手やスタッフがなんらかの報告を行いました。

練習等で忙しく投稿が滞ってしまった時期は支援が止まるなど目に見える反応がありましたね。

また、リターンとして福岡在住のイラストレーター宮内大樹さんが特別に各選手のイラストレーション入りアクリルキーホルダーを制作してくださったのですが、宮内さんは日本サッカー協会のイラストも手掛けるなどサッカー界で特に著名な方なので、SNSを通じて拡散されこのクラファンにたどり着いてくれた方もいたと思います。



-「ばりキャリ隊」もアンクラスの活動の大きな特徴の一つだと思います。

「ばりキャリ隊」は昨年の株式会社グリーンカードとのパートナーシップ契約後に始まった活動です。

選手自身がスポンサー営業や広報活動を通して、クラブを自分の手で運営するという成功体験、事例を作ることができればと始まりました。

現在は営業・広報といった一部の業務だけを行っていますが、将来的には選手自らすべてを運営できるモデルが実現できたらと考えています。

営業活動としてはリスト作成からテレアポ、訪問、提案まで選手自らで行います。

初年度である昨シーズンは計68社の新規スポンサーを獲得するなどの成果を上げることができました。


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-アスリートとしての活動と並行しての業務、また初年度としてはすばらしい実績ですね!

昨シーズンの結果を踏まえ、今シーズンは「倍以上の契約数」という目標を掲げており一層努力が必要です笑

アポイントを獲得でき訪問すると「選手が自ら来てくれた!」と良い反応をいただくことが多いです。

仮にアポイントがとれなくても、福岡J・アンクラスの名前はまだまだ福岡で知られていないのが実情ですので、選手自らが電話やメールをすることで、相手に存在を知ってもらえた時点で活動としては成功と考えています。

営業として訪問する際、熱量を持ってチームや自分のことを語ることができるので、プレゼンの説得力も高まっているのではと感じます。



-課題があるとすればどのような点でしょうか?

価格や商品のカスタマイズなどレギュラーな質問への対応に苦慮する選手も見られます。

2名1組で訪問することによるOJTや提携企業であるグリーンカード社員が同行するなどして改善を図っています。

また、「広告価値」や「費用対効果」という評価軸で判断されると現時点では難しいです。

これからなでしこ1部、WEリーグを目指す成長を見ていただく、企業の成長の象徴としてアンクラスを使っていただくことを熱量を持って提案する必要があります。

先ほど目標の話をしましたが、選手個人に営業ノルマなどを課すことはありません。

現在の最優先の目標はファンを増やすことだからです。

認知してもらう、興味を持ってもらう、見に来てもらう、そのためのばりキャリ隊での営業活動という位置づけです。



-ばりキャリ隊以外の選手はどのような活動を行っているのでしょうか。

一部のスポンサー企業様に選手を雇用していただいています。

「雇用スポンサー」という形式で選手を受け入れていただき、練習や試合のスケジュールを考慮した勤務体系を許容していただいている大変ありがたい存在です。

そうしたスポンサー様を探すのも私たちフロントの大きな役目の一つです。

その他、アンクラスサッカースクールのコーチとして勤務している選手もいます。



-今後の展望を教えてください。

福岡J・アンクラスと株式会社グリーンカードがパートナーシップ契約を結んで一年が経ち、「ばりキャリ隊」含め試行錯誤の結果を総括しているところです。

既存スポンサー様へのシーズン中の対応やチームの認知拡大や集客といった短期的な課題、今後WEリーグを目指すにあたってのスタジアム確保や選手との契約などの中長期的な課題と多くの越えるべき壁があります。

それでも、新しくスポンサーになっていただいた企業様からは「アンクラスの話題で社内コミュニケーションがより増えた」などの嬉しいお声もいただくようになり、少しずつ手ごたえをつかんでいるところです。

まさにこれからのチームなので地域の方々、応援してくれる方々へチームの成長を見せ、共に成長する糧となる存在になることができればと思っています。

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