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将来を考える際に目的と手段を区別できていますか? | NSU教育学部 Vol.1

今回からまた新たなシリーズが始まります。
タイトルは「NSU(Next Stage University)教育学部」にしてみました。

僕自身の最終学歴は高卒で、もちろん教員免許もありません。
ですが、教育というのは、いわゆる学校の先生と呼ばれる職業の人だけがやるものではないですよね。

この「音楽家のサバイバル術」では、音楽大学では教わらないと思われる自立のためのノウハウなど(人として、音楽家として最低限必要な事)を提案し続けています。これも教育と言えば教育だと思います。

初回にも書きましたが、先に生まれた人間が後進のために、(一つに決めた道ではなく)何らかの選択肢を提案するのが教育であり、先生という立場でなくても、大人の責任であり、義務に近い行動だと僕は考えています。

参考:『”ネクストステージ”へ羽ばたく若い音楽家の皆さんへ』

今まで書いてきた内容でも、ある意味僕なりの教育論のようなものは(そんな立派なものではありませんが)展開されているかもしれませんが、今回からしばらく、もう少し直に教育にスポットを当てて書いてみようと思います(なるべく音楽にも関連付けて書く予定です)。

義務教育という言葉の前に


まずはじめに、僕は「義務教育」という言葉が好きではありません。正直、好きだという人に会った事はないですけどね(笑)。

ほとんどみんな好きではないのに、なぜなくならないんでしょうか?(なぜ必要なんでしょうか?)

結局のところ、言葉のまんまですが、

義務だから、決まりだから、やらなきゃいけないから

と多くの人が考えているからですよね。

ちなみに僕は好きではないと書きましたが、否定をしているつもりはありません(義務という言葉はどうにかならないのか?と強く思いますが)。

日本国民のほとんど100%が税金で教育を受けられるのは、国が豊かである証拠です。海外には、子どもが満足に教育を受けられない国がたくさんあります。義務教育という制度が成り立つ事自体、素晴らしい国だと言えるのではないでしょうか。

せっかくこんな制度があるのに(タダで教育を受ける事が出来るのに)、多くの人が義務だから、決まりだから、やらなきゃいけないからと思って勉強をしているのは、なんだかとっても心が貧しい国だと感じてしまいます。

では、そもそも義務教育って何のためにあるんでしょうか?

僕が小中学生だったのは随分昔の話なので、すべて鮮明に覚えているわけではないのですが、この事をきちんと説明し、「ああ、だから勉強しないといけないんだな!」と思わせてくれた先生はいないんですよね……

ご多分に漏れず、「将来きっと役に立つ」と言われ、なんとなくその気になり、テストで良い点を取ると周りの大人が喜ぶ、ほめてもらえるとか、その程度で日々過ごしていたように思います。

「義務だから」の前に、「目的」を明確にするのが何よりも大切だと気付いたのは随分あとになってからですね。

音楽と出合い、どっぷりとハマり、練習、仕事、留学など、いろいろな経験をする中で「目的をもつ」大切さに気付き、今では自分の行動の基本となっていますが、日本の教育システムしか知らなかったら、はたまた音楽と出合っていなかったら、もっと受け身な人生を歩んでいたかもしれません。

日本は世界的に見ても、受け身な人が多い、自分の意見を人に伝えるのが苦手と言われていますよね。

これは、義務教育が悪いほうへ作用しているからだと思います。

教育の最大の目的とは?


昨年、このネクストステージ・プロジェクトを通じて、幼稚園の園長先生と、音楽科のある高校の元校長先生と対談をするという機会をいただきました。

このような経験は普通にミュージシャンをやっているとあり得ない事で、とても興味深かったです。

お二人の先生がおっしゃっていた共通のワードは「自立」でした。意外にシンプルなワードで、僕の中でもこれを聞いてスッキリしたのですが、こんなシンプルに腑に落ちる説明をしてくださった先生は、先ほども書いた通り、いなかったように思います。

もちろん、今こうして理解出来ているという事は、過去の義務教育がそれなりに機能していたからと言えるかもしれませんが。

ただ、こうして(音楽家を中心に)若い世代と関わっていると、いろいろなところで義務のみで働いている、勉強している人や、目的をもたずに「手段」で行動している人を見かけます。正直若い人だけではないです。

『”音大に行きたい”と”プロになりたい”は違う』

ここに書いた話もその一例です。

身近な例でも、「信号無視をしてはいけない」と子どもを叱っている母親が、その理由を「決まりだから」とか「おまわりさんに怒られるから」と説明しているのを聞いた事があります。間違いではないかもしれませんが、正しくもないですよね。

一番大切なのは(目的は)、「危ないから(命の危険があるから)」という理由を伝える事です。
それを学習していくのが教育であり、子どもにとっての自立の第一歩です。日本では、

「○○をやってはいけない」「決まりだから」「○○さんに怒られるから」

知らず知らずのうちにこれらのワードを多用していたり、そう感じて行動している人が多い気がしませんか。

僕の考えでは、これは義務教育という制度が悪いからではありません。使い方の問題だと思います(「目的」を教えないからです)。

包丁だって正しい目的を理解し、正しい手段で使えばとても便利な道具ですが、誤れば殺人の凶器にもなり得ます。
「包丁を使ってはいけない」ではなく、正しい使い方を教えるのが教育です。

野球の世界では甲子園(高校野球)、音楽では吹奏楽コンクールなど、優勝や金賞が目的となってしまい、手段を誤っている学校をたくさん見ています。かと言って、練習時間だけを問題視し、単純に規制をかけるというのもおかしい気がします。

「目的」と「手段」。
この二つを理解する事は、それ自体が自立への近道であり、本来の教育のあり方だと言えるのではないでしょうか。

著者 藤井裕樹(ふじいひろき)プロフィール

藤井写真

NPO法人ネクストステージ・プランニング音楽ディレクター
株式会社マウントフジミュージック代表取締役

Trombonist, Composer, Arranger, Teacher, Writer, Producer, Consultant

LIFE WITH MUSIC「音楽と共にある生活を」1979年大阪府生まれ。都立小平南高等学校在学中、第4回日本トロンボーンコンペティションにおいて第3位入賞。アメリカネバダ州立大学ラスベガス校特待生(2005年在籍)。 19歳でプロとしてのキャリアをスタート。国内外の多くのジャズアーティストとの共演の他、東京ディズニーリゾートでのパフォーマンスや、大塚愛、関ジャニ∞、矢沢永吉などのJポップ、ロックアーティストのツアー・ライブサポートや、CDレコーディング、CM音楽のレコーディングなどに参加。作編曲家としては、東京ディズニーリゾートや東京スカイツリーのイベントなどを手がけ、講師としては、2008年から2015年まで(財)ヤマハ音楽振興会認定講師を務める。2016年3月11日、自身では初のリーダーアルバム「Lullaby of Angels」をリリース(東日本大震災チャリティーCDとして)。 2017年1月、NPO法人ネクストステージ・プランニングの音楽ディレクター(プロデューサー)に就任。若い音楽家が自立するためのノウハウを書いたブログ「音楽家のサバイバル術」の執筆も行うほか、これまでの経験を生かし、楽器可物件の不動産会社や音楽事務所、ライブハウス、個人の音楽家などのコンサルティングも行っている。

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