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人生の夏休み


今年の夏は特別に暑い。豪雨災害と酷暑で日本中が悲鳴を上げている。加えてコロナ感染も第七波で自由は奪われたまま。そんな異常事態をニュースの向こう側で聞きながらコーヒーなんか飲んでいる。私は今人生の夏休み・・・


定年とは社会経済活動の一端を担うという役割からシステマチックに降ろされること。可否を論じる必要もないただの人生の通過点。誰もが惜しまれながら・・・という体できれいに形が整う間違いのない仕組みなのだ。受け止め方はそれぞれ、不安で焦る人もいれば楽しみに待つ人もいる。いずれにしてもひとつの区切りであり、そのフラッグを超えた先の人生がもう一度問われる。




<35歳で人生の方向性を決める>


二人の子供が小学3年生、6年生になった年だった。再就職をと考えたとき、パートやアルバイトにするか、正社員として働くのかは悩ましいところだが、社会の中で一定の役割と責任を持った仕事がしたいと思っていた。やりがいのある仕事、生きがいのある人生というのに憧れていたのだ。
どんな仕事に就きたいのかも決められない中での漠然とした職探し、資格もスキルもない、子育て中という条件で途方に暮れた。何か資格を取りたいと考え、情報を集めやってみようと思えたのが福祉の資格だった。ホームヘルパーの養成講座の類のものが新聞広告や求人雑誌などで目につくようになっていた。ひとのお世話、介護など今までの自分にはまったく縁のない、選択肢にもない業界だったが、子育てを経験し、父親の終末期を看取る経験をしたためか今なら出来るという感覚がどこかにあった。
資格取得のために、最短、最安、何となく信用できそう・・・という理由から県立職業訓練校の福祉課に半年通った。筆記試験と面接があり、試験は簡単だったが倍率が高くて、どうやって選ぶんかい?と不思議だったのと、時代はここ?と改めて流れが来ていることが衝撃だったのを覚えている。新鮮な学生生活を満喫し、ホームヘルパー1級の資格をとり卒業と同時に就職した。大きな期待を持って人生は舵を切った。


<社会的背景>


後で知ったことだが、その頃、病院の付添家政婦制度が廃止され、看護は医療が、介護は福祉がと専門職による住みわけが制度化したころだった。この年(平成9年12月)に介護保険法が制定され平成12年より施行されました。
福祉大学や福祉専門学校は乱立し、福祉セミナーなど急激に増えて若い世代の人たちからも職業として選ばれる時代を肌で感じた。
 福祉も措置から契約、自由選択に変わった瞬間、大混乱の中でまさに手探りで介護保険制度はスタートした。その瞬間を目の当たりにできたことは貴重な経験だった。


<経済的に自立をすることで自分を見直す余裕を持つ>
働くことで経済的に自立できる。経済的に自立するということは自由が買える。時間が買える。冷静な判断が買える。家庭の平穏が買える。
毎月給料が入ることで気持ちにも余裕ができ家族への不満は半減した。夫婦喧嘩の半分は生活費にまつわる私の不満だったわけで、そこから解放されることで気持ちも穏やかになれる。子供たちの学費も自分の趣味も自分の判断で遣うことができ、それが仕事へのモチベーションとなり生きがいにもなった。
いま、音楽、インターネット、ランニングなど長く趣味として続けているが、自分がこんなにひとつのことに熱中できる性格だったとは、昔の自分では考えられない。それが出来たのは経済的背景が大きいことは間違いない。

<ひとつの区切り 子供が社会人になるまでは>
子供たちが学生のうちは、とにかく学費が最優先。ボーナスはほとんど右から左へ。
それでも二人とも卒業と同時に就職し、気が抜けるほどあっさりと自立していった。不思議なくらい長男は福祉関係に、次男はIT関係に、両親と同じ職種で生きている。大きな区切りがついたとつくづく実感したときは40代最後の年になっていた。

<老後ということば、貯蓄について>
趣味にも仕事にも気持ちに余裕が出てきた50歳を目前に、にわかにあと10年で退職、老後の貯蓄をしておかなければ、と焦りが出てきた。そう、定年退職が将来の射程圏内に見えてきたのだ。


生命保険や年金保険は更新しながら60歳までは続ける。子供たちにお金がかからなくなった分は積み立て貯蓄にすると決めた。銀行からの引き落としで果てしなく長い期間、契約内容にも無頓着に過ぎてゆき、60歳になった翌年の4月、自動的に個人年金は保険会社から振り込まれ、10年満期の貯蓄も満期を迎え、いろんなことが一旦終わっていく、社会はこのように仕組まれているのだと妙に納得した。生命保険は殆ど戻ってこないけれど、健康でいられた証、この先大きな保証はいらないと喜ばしい解約。


大事に抱えていたものをひとつずつ手放していく解放感。これからは自分で自分を守っていけばいい。


<61歳 定年~>

25年間の通勤電車。時間との闘い。職場での重責。苦悩、失敗、学び、信頼、喜び、裏切り。思い返せばいくらでも言葉が出てくる。本当にいろいろあったが最後まで駆け抜けた。寂しさも未練も一切ない、次への期待で胸がいっぱい。
福祉業界に残れば再雇用でも再就職でも困ることはない。関係事業者からもいろいろ声をかけてもらったがすべてお断りし、惜しまれながら((笑))最後の日を迎えた。セオリー通り。


 さて、これから人生第2クールの本番が始まる。荷物を下し身軽になったとこからどんな人生が待っているのか、求めていくのか、今からでも使える自分探しの旅にでかけよう。

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